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2H35m 上

17:05
スマホの画面上部に表示される数字を見て、

いやいや、もう5分すぎてるんですけど。と落胆する。

遅れますの一言もないの?そんな人初めてなんだよ、私遅刻にはうるさいタイプだよ。


17:06

[どこいますー?]

[すわってる!]

[ついた][びーむすのまえ]


ふんふん、オーケー、あなたにとってこれは定刻通りね。
ビームスの前1人しかいない。あれなのか。顔を覚えてないんだ、確信が持てない。

「あ、こんちは。」

おっそゆかんじね。結構ラフな感じね。


まだ着重ねしている、桜が咲く前の頃。ある人を通じて知り合った。
その日は数時間一緒にいたけど、知らない空間と知らない人に囲まれた私は、いつになくだんまりになってしまう。そのせいもあって、彼とも一言ふたことしか会話は交えなかった。

数ヶ月後の今日。
桜は散る、どころか、大輪の紫陽花も形が崩れてきたこの時期に、彼と再び会うことになった。
なんだか掴みどころがないやりとりをインスタグラムのDMで幾度かした末にだ。

最初で最後に会ったのは、半年前のこと。正直彼のことはもう何も覚えてない。
でも彼の方は先週、電車の中で私を見た(認識した)らしい。
そして私も、彼を見た、らしい。

ううん。私は彼として彼は見ていなかった。
いつも座れるはずの電車、なぜか今日は満席で居場所を失い少しうろついた時に角に立つ男性が目に入る。
おしゃれでイケメンのお兄さんいるなあ。そんなことを思って、彼の向かい側の壁に寄りかかった。

そのおしゃれでイケメンのお兄さん、が、かれだ。偶然にも。

ううん。あんなにイケメンだったかな?
まあ初めましてした時はそんなに顔見ていなかったけど…
ううううん。そもそも私より背高かったっけ?


答えは、イエスだった。
壁に寄りかかる、彼らしき人物は結構がっしりした体つき。

「あれですよね、あの餃子屋さん、あそこの通りっすよね」

「あーそうそう。あれ、行ったことあった?」

「いや、ここら辺全然来ないっすね。」
「お腹空いてる?」

「うんもう、お腹痛いくらい空いてる。お昼食べ損ねちゃったの。でもさ、昨日も餃子食べてたよね?」


なんだこれ。この空気感、
これじゃまるで出会って3年目だ。


ちなみに言うと、
最後まで出会って3年目だった。

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