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tsukuru novel

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私の創作小説です。
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記事一覧

SS 唯一無三

SS 唯一無三

「俺を愛してる自分を愛してるだけだよ」

そう言った瞬間に視界がぐるんと違う方向を向いた。
頬がひりつく。

「あんた今まで何を見てきたのよ」
叫ぶ女が目の前にいる。

幼少期に転勤を繰り返した俺は、自身を替えが効く存在だと認識してここまで過ごしてきた。

過去に愛した女が浮気していたことが発覚した瞬間がフラッシュバックする度に吐き気がする。

自分を必要だと請いた彼女もやすやすと他のところに行っ

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小説-偶然とは。渋谷のとある月曜日

気持ちの良い夜だ。
人が想像の10倍少なかったライブハウスの真ん中で、私はまたしても一人涙ぐんでいた。
既にリリースされている曲は全曲歌える。だから歌えない曲が流れた事が嬉しかった。新曲だ。

東新宿から新宿までは、仕事の関係で歩いた事があったけど、新宿から東新宿まで歩いたのは初めてだった。たったの15分ほどしか歩いてなくてもこんなにも「ハズレ」感が出るのか。古いライブハウスがより一層その街の外れ

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(小説の一部を公開しますね)

(小説の一部を公開しますね)

 次のミーティングまであと1時間あることを確認する。今日は珍しくミーティング続きなうえに月末なのでタスクが多い。転職してからというもの月半ばであれば毎日1時間半ほど真面目に画面と向き合えば終わる量の仕事しかないため、みなと同じように仕事をするだけでも休息が必要な身体になってしまった。
 リモートとは良いご身分で、勤務中にシャワーを浴びて週1行う米粕パックをしながら脚のマッサージをするなんて常になの

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トルコ🇹🇷がパン🍞になった。小説を書きたい

トルコ🇹🇷がパン🍞になった。小説を書きたい

▼最近短編小説を書いている

小説を書いてみたいな~~と思ってから、どのくらい経ったかわからない。というか、いつからそんなふうに考えていたのか覚えてない、くらい前から思ってた。

これまで私の中の
「小説書いてみたい」

「いつかトルコ行きたい」
くらいの感覚だった。
(世界で1番わかりにくい例え)

でも実際の「小説書きたい」は
「明日の朝ごはんはパンがいいな」
くらいなんじゃないかなと思い始

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中央_3

前回はコチラ

私は怖くなった。
この人を心の頼りにしてしまったら、私はもう生きてはゆけない。その想いを掻き消すよう、ワイングラスをグッと傾け、澄んだ赤色のアルコール飲料をツツと心の奥の方まで流し込む。

───────数時間前

何が必要か、どんな服装で行けばいいか、全くわからなかった。そもそも、本当に彼が来てくれるのかすらも、俄かに信じ難い話だ。

それでも、刺激がない日々に突然舞い込んだ一枚

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SS:みな、深夜のコンビニには勝てない

SS:みな、深夜のコンビニには勝てない

コンビニエンスストアで350エムエルの缶ビール買って
君と夜の散歩 時計の針は0時を指してる

この時間にあの交差点に向かうとき、決まって聞く曲だ。

誰にだって自慢できるこの田舎では、星がよく見える。
星に見守られながら歩く25分、時たま私は何しているんだろうと思うけど、なんだかんだ好きでやっている節がある。
月はそっぽを向いているけど別にいいの、私は一つのお月様よりもたくさんの輝きを散りばめて

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2H35m 下

2H35m 下

上はこちら。

どうやらお店は17時半開店だったよう。
スマホの画面を見ると17:28と表示されている。
「近くにコンビニあるかなあ。」
そんなことを言って店前から足を外そうとすると、すれ違いの同年代に見える女の子二人組が開いてる〜と言いながら角先に消えていく。
私たちは目を合わせてくるりと体の向きを変えた。

開店時刻前にも関わらず、二番目のお客さんになる。
先客の二人組とは1番離れたところに位

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2H35m 上

2H35m 上

17:05
スマホの画面上部に表示される数字を見て、

いやいや、もう5分すぎてるんですけど。と落胆する。

遅れますの一言もないの?そんな人初めてなんだよ、私遅刻にはうるさいタイプだよ。

17:06

[どこいますー?]

[すわってる!]

[ついた][びーむすのまえ]

ふんふん、オーケー、あなたにとってこれは定刻通りね。
ビームスの前1人しかいない。あれなのか。顔を覚えてないんだ、確信が

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今小説の続きを書いているんだけど、完全に前回の描写に失敗した!

もっと具体的な名前や年齢をうまく文章に組み込むべきだった!!
そこらを伏せながらお話を進行させていくの難しすぎる!!!

(小説を書く難しさというものを初めて実感できて嬉しい人より)

中央_2

封筒を開けると、そこにはホテルのカードキーのみ入っている。
装飾は何一つ施されていないけど、絶妙なクリーム色が上品さを出している封筒だった。

カードキーに刻まれたそのホテルの名前は、誰でも知っているようなホテルだった。勿論大学生の私は宿泊は愚か、ラウンジにだって足を踏み入れたことはない。

この封筒はご褒美、と言いながら年配の男性が私にくれたものだった。
守るべき自身とプライドが無い私は、後腐れ

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中央_1

中央_1

水曜、平日ど真ん中の午前十時。
ワンルームに無理やり押し込んだ、お気に入りのソファに寝転んで、天井を仰ぐ。

青山の大通りを入ってすぐにあった、今はもうシャッターを下ろしている家具屋さんで一目惚れをしたソファ。
ダークグリーンに染められた合皮が、レースカーテンを通した太陽光を僅かに浴びて艶やかな表情を見せる。

本当ならば今日は出勤予定だったが、数日前有給を取った。有給をいつでも好きなタイミングで

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