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『特殊清掃人』(中山七里・著)

 最近、業者への依頼が増えていると聞く「特殊清掃」、孤独死などで遺体が長期間放置された部屋を片付け、綺麗にする作業(仕事)です。
 それが題名に入る『特殊清掃人』(朝日新聞社・刊)を書架で見て手にしました。

 誰もいなくなった部屋にこそ、住んでいた者の嘘のない生きざまが現れる──。特殊清掃業者〈エンドクリーナー〉には、日々、様々な依頼が押し寄せる。彼らの仕事をとおして、死者が抱えていた様々な事情が浮かび上がる。
 『護られなかった者たちへ』の著者が贈るヒューマン・ミステリー。

 本書は、web TRIPPERに連載されていたものに加筆修正されて単行本化されたものです。

 特殊清掃の仕事について、業者のサイトに次のような説明がありました。

 特殊清掃の仕事内容は、一言でまとめると事故死・孤独死の現場や、ゴミが大量にある家の片付けです。
 特に遺体やゴミが放置された部屋は体液による汚染や害虫が発生することがあり、その清掃や悪臭の除去などを行います。
 特殊清掃の具体的な仕事内容は、以下の5つです。
○ 血液・体液の除去
○ 死臭・悪臭の除去
○ 害虫の駆除
○ 遺品整理
○ 不用品処分

 厳しい仕事、難しい仕事であることが想像されます。
 本書に登場するのは、清掃業者〈エンドクリーナー〉です。その代表五百旗頭 亘(いおきべ わたる)、社員の秋廣香澄(あきひろ かすみ)と 白井寛(しらい ひろし)の3人で、依頼のあった部屋を清掃します。

 〈エンドクリーナー〉のメンバーが作業に入るとき、

 タイベックスと防毒マスクに身を包み、(略)
 今回の防護はレベルCで臨む。(略)
 レベルCの必須装備は化学防護服(浮遊個体粉じん及びミスト防御用密閉服)、化学物質対応手袋(アウター)、長靴、自給式空気呼吸器、酸素呼吸器又は防毒マスク、そして保安帽となる。(略)

と重装備です。
 これだけの装備をして入った部屋には…。

 亡くなって発見されるまで時間のかかった部屋は、遺体はありませんが、体液が…、臭いが…、ハエの大群が…、さらに病原体も…。
 そして、その方が生きた証が…。

 〈エンドクリーナー〉の特殊清掃人が、作業が済んで“業務”は終わりです。けれども、五百旗頭、秋廣、白井が、特殊清掃が入らなければならないような〈死〉に至った“人生”を解き明かしています。
 「生きること」そして「死生観」、いろいろ考えました。
 お薦めです。

   目次

一 祈りと呪い
二 腐蝕と還元
三 絶望と希望
四 正の遺産と負の遺産

【関連】
  ◇中山七里オフィシャルWebサイト
  ◇中山七里「特殊清掃人」(web TRIPPER)
【関連?】
  ◇「遺体の体液で腐食が…」孤独死の部屋を片付ける“特殊清掃”…超高齢社会の現実(CBC MAGAZINE)

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