月夜野

森林同盟というサークル名で活動していた月夜野すみれです。主に小説の投稿先のリンクを貼っ…

月夜野

森林同盟というサークル名で活動していた月夜野すみれです。主に小説の投稿先のリンクを貼っています。後は小説の資料とかです。

最近の記事

源頼政の短編

「鵺退治」「平家物語」「源平盛衰記」の頼政が出てくる部分だけ現代語でアレンジした物です。 カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16817330669230100189 小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n6391io/ ノベマ! https://novema.jp/book/n1714198 アルファポリス 「源頼政、歌物語」「俊恵、危機一髪!」は1話目のタイトルで、鴨長明『無名抄』の頼政が出てくる

    • 「花のように」第七章 花のように

      第七章 花のように         一 「なんだよ」  取調室に通された吉田が紘彬を睨みながら言った。  紘彬はスマホを机の上に置くと、 「これ、さっき解約の手続きしただろ」  と言った。 「それが犯罪なのかよ」 「解約は犯罪じゃないけど、このスマホは犯罪に使われたものだ」  吉田はスマホに目を落としてから顔を上げると、 「こんなスマホ、知らないね」  とぶっきらぼうに答えた。 「知らないスマホの解約手続きしたのか? 月々の料金まで払ってたのに?」 「だから知らないって

      • 「花のように」第六章 花霞

        第六章 花霞        一  放課後、帰る支度をしていると花咲が近寄ってきた。 「藤崎くん、今日は図書委員の会議で遅くなりそうなの。だから写真は明日でいいかな?」 「うん、じゃあ、明日」  花咲と入れ違いに、斉藤道子が話しかけてきた。 「藤崎くん、子猫、まだ残ってる?」 「いるよ」 「じゃあ、一匹譲ってくれない?」  斉藤ははにかんだように言った。 「いいよ」 「じゃあ、今日一緒に帰っていい?」 「いいけど」  正直斉藤は苦手なのだが猫の貰い手は必要だ。  紘

        • 「花のように」第五章 花筏

          第五章 花筏        一 「どうせ歌舞伎町に来るならきれいなお姉ちゃんがいる店がいいんだけどな」  紘彬がいつもの調子で言った。 「石川の兄はホストだそうですから客以外は野郎ばかりかと」 「そうだよなぁ。この時間じゃ、客は来てないだろうしなぁ」  紘彬はぼやきながら歌舞伎町を歩いていた。  昼間の歌舞伎町は、明るい日差しに照らされて、饐えた臭いのする通りやビルのボロさが晒されていた。  毎朝、町内会の人達が掃除をするのでゴミはほとんど落ちていない。  路地から出

        源頼政の短編

          「花のように」第四章 花嵐

          第四章 花嵐        一 「で、また歌舞伎町かよ」  紘彬はむすっとした顔で歩いていた。 「仕方ないですよ、この前捕まえたヤツらはHeを扱ってなかったんですから」  如月が苦笑しながら言った。  捕まえた連中の供述によると、扱っていたのはエクスタシーだった。  Heを希望している客にも、エクスタシーをHeだと偽って売っていたのだという。  しかし、その連中の話によると、確かに歌舞伎町でHeを売ってる人間がいるらしい。  誰が売ってるのかまでは知らなかったが、流通量

          「花のように」第四章 花嵐

          「花のように」第三章 花香

          第三章 花香        一 「歌舞伎町の派出所って、日本で一番人数が多いんだろ。なんで俺達が行かなきゃならないんだよ」  紘彬がぼやくと、 「いくら人数が多くても全員をこっちに回すわけにはいきませんし、うちの事件も関わってますから」  如月が宥めるように言った。  紘彬と如月は、団藤達と共に数人の新宿警察署の警官達と歌舞伎町を歩いていた。  警官達は背中に「警視庁」と書かれたジャケットを着用していた。Heを売っているというタレコミのあった店を強制捜査するのだ。  夜

          「花のように」第三章 花香

          「花のように」第二章 花曇り

          第二章 花曇り       一  現在――。 「桜井さん、血刀男の検死結果が出ましたよ」 「ずいぶん早く出たな」 「まだ仮報告ですが」  そう言って如月が紘彬に報告書を渡す。  紘彬は受け取った報告書に目を通し始めた。  まだ早い時間で、紘彬と如月以外は誰も来ていなかった。  二人は血刀男が死んだと言うことが気になって早く出てきてたのだ。  別に申し合わせたわけではないのに、玄関のところで鉢合わせした。  とはいえ、まさかこんなに早く結果が出るとは思っても見なかった

          「花のように」第二章 花曇り

          「花のように」第一章 花吹雪

           第一章 花吹雪      一  暖かい春風が花の香りを乗せて通り過ぎていく。  満開の桜からは花びらが、空に輝く太陽からは日差しが降り注いでいた。アスファルトの道路も花弁で桜色に染まっている。  桜の根元では黄色い菜の花や紫色の花大根が競うように咲いていた。  その中から紫の花菖蒲が一輪、飛び出していた。  ここまで来る途中で、白い花菖蒲が何輪か咲いているのを見かけたから、季節外れというわけではないようだ。  花から花へ、蝶や蜂が飛んでいる。  桜井紘彬は蜂を目で追っ

          「花のように」第一章 花吹雪

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第七章

          五月三日 日曜日  夕方、俺達は中央公園に来ていた。  昼間はうちに皆で集まっていたのだが、解散した後、雪桜から連絡が来たのだ。  妖奇征討軍の二人を見掛けたが雪桜には化生が見えない。  それで神社に行って繊月丸を呼び出して中央公園に同行してもらい、化生がいるかどうかを聞くと猫又がいるという。  そして俺が助けた狸が駆け寄ってくると、雪桜に帰るように伝えろと繊月丸に言ったそうだ。  それを繊月丸から聞いた雪桜が俺達に報告してきた。  そこで俺はアーチェリーのケースを持っ

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第七章

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第六章

          四月二十七日 月曜日 「しょうがないだろ」  高樹が言った。  休み時間、教室での事だ。  俺は相当嫌そうな顔をしていたらしい。  高樹からしたら嫌なのはお互い様だと言いたいだろう。  というか、マムシに剣術を教わったり天狗に空の飛び方を教わったりしなければいけない分、高樹の方が迷惑しているのは間違いない。  何の得にもならない化生退治などやりたくないに決まっている。  それはともかく――。  高樹がクラスメイトから聞いてきた話によると、例の公園でまた神隠しが起きている

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第六章

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第五章

          四月二十一日 火曜日  休み時間、高樹が噂話を仕入れてきた。 「え……」 「どういう事?」  秀と俺が聞き返した。 「見えない何かにぶつかって転ぶらしい」 「それ、俺達が何かする必要あるか?」 「かなりの勢いでぶつかられるらしいんだ。それで死んだ人がいるらしい」 「死ななくても大ケガした人もいるんだって」  高樹と雪桜が言った。  死人まで出ているなら放っておく訳にはいかないだろう。  妖奇征討軍め……。  俺は溜息を吐いた。  放課後――。  中央公園で祖母ち

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第五章

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第四章

          四月十五日 水曜日  朝、俺は学校へ向かいながら、秀と雪桜に夕辺のことを話していた。  繊月丸は東雲と会うためだろう、今日も随いてきていた。 「へぇ、猫なのに人間に執着するなんて珍しいね」 「そう思うだろ」 「うん、猫って薄情なものだと思ってたよ」 「俺も」 「きっと小早川さんが相当可愛がっていたのね」  雪桜が同情するように言った。  小早川もミケを残して死ぬのは無念だったろうな。  だから心配でミケに憑いているのかもしれない。  今日も学校にいる間中、ずっと視線

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第四章

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第三章 後編

          「これ、どうするの?」  秀が鬼の腕を指して訊ねた。 「鬼は死んだ訳じゃないんだろ?」 「一時的に姿を隠しただけよ。後で取りに来るわ」 「じゃあ、今度こそ倒さないと。繊月丸、手伝ってくれるか」  高樹がそう言うと繊月丸は黙って頷いた。 「今夜、大森か内藤の家に泊まってることにしていいか? 遅くまで帰らないと母さんが心配するから」 「なら秀の家にしてくれ。俺も秀の家に泊まるってことにして付き合うよ」 「じゃあ、僕はアリバイ工作するね」  秀が言った。  用がある時はスマホに

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第三章 後編

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第三章 前編

          四月十一日 土曜日  次の朝、起きるとミケはいつの間にか俺の部屋の床で寝ていた。  朝食の後、母さんが、 「孝司、古新聞縛ってちょうだい」  と言った。 「分かった」  こういう時は素直に従うに限る。  下手に逆らって言い争ってもどうせ負けるのだ。  仮に勝ってもおかずの量を減らされたり、部屋を掃除されたりという仕返しをされるから割に合わない。  それくらいならさっさと済ませてしまった方がいい。  俺は積み上げてある古新聞をまとめ始めた。  新聞紙を重ねていると数日前

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第三章 前編

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第二章

          四月八日 水曜日  翌朝、起きるとミケが俺の部屋で寝ていた。  今いても朝じゃ忙しくて捨てにいけないじゃないか。  俺は朝食をとると家を出た。  母さん、今日も無事でいてくれよ。  いつもの角で秀と落ち合って高校へ向かう。  途中で雪桜も合流した。  学校に着くと相変わらず虎の話で持ちきりだった。  昨日の虎狩りでは虎は見付からなかったらしい。  いくら戸山公園が広いと言っても都会のど真ん中なのだ。  一日あれば十分捜索出来る。  見付からなかったと言うことは誰

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第二章

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第一章

          四月七日 火曜日  朝、目を覚ますと隣りに見知らぬ中年男が寝ていた。  黒いスーツを着た、新宿駅で石を投げれば当たる類のどこにでもいそうな中年の男である。  道理でベッドが狭いはず――。  じゃなくて!  なんでここに男がいるんだ!?  …………思い出せない。  全てを半透明のガラス越しに見ているような感じがする。  夕辺のことはさっぱり思い出せないし考えがまとまらない。  頭は窮屈なヘルメットを被せられたみたいに痛む。  胸はムカつくし吐き気もする。  頬に油を皮下

          「東京の空の下 ~当節猫又余話~」第一章