ゲーム開発の道標(企画から完成まで)その10・隠し要素
こんにちは「つけらっとゲームス」プログラム担当のとちです。
この記事は何もないゼロの状態から完成までをドキュメンタリー風に手順に沿ってまとめたモノです。
前回の記事では「チュートリアル」を実装するお話をしました。これでゲームの本編は完成と言ってもいいのですが……
「信長の野望」「太閤立志伝」など戦国時代を題材としたゲームによくある「イベント」というのを追加するお話です。
前提条件
この記事の前提条件として「津軽為信統一記」ではUnityで作られています。
作る人によって「作り方」は違いますし、この記事ではあくまでわたしの作り方。
真似しても参考にしても構いませんが自分なりのやり方が見つかったら(恐らく)そっちの方がやりやすいんですよね……わたしの作り方も自分で色々手を入れている間に徐々に確立されていったものです。
自分なりのやり方を見つけるまでは試行錯誤の連続、結構苦しい時間なんですけど、それもまた楽しかったりしますよ。
歴史イベントを追加したい
「信長の野望」といえば、もう40年も続く「歴史シミュレーションゲーム」の定番ですよね。その「信長の野望」で(シリーズによって異なりますが)条件を満たすと発生する「本能寺の変」をはじめとした歴史イベント。
ムービーなどは開発費用や技術、時間的に難しいですが「津軽為信統一記」にも史実を題材とした何らかのイベントが欲しいと思っていました。
「本能寺の変」「桶狭間の戦い」「川中島合戦」「厳島の戦い」などなど信長や全国の有名戦国武将には名シーンとも言える象徴的なイベントがあります。
実は「信長の野望」には「津軽為信」が南部家に対し反乱を起こし独立するイベントが収録されてるモノがあるんです。
「信長の野望・創造 戦国立志伝」は大名だけでなく、武将としてプレイすることも可能な作品です。南部家に使える大浦為信として戦国乱世を上手く立ち回り独立するのはドラマチックなんですよね……
紹介した「戦国立志伝」では津軽地方を統一するまで「大浦為信の乱」というイベントになっており、このイベント後、天下統一を目指してゲームは続きますが「津軽為信統一記」では、このイベント自体がゲーム全体の流れとなります。
ですので、津軽での戦いをもう少し詳しく細かく分けないといけません…
次項からは各イベントについて説明していきます。
最後の項では、どういう仕組みで動いているかをお話したいと思います。
野崎村強襲
1569年の冬に発生します。策略札「火攻め」が手に入ります。
合戦演習(チュートリアル)なので隠し要素とは言えませんね。とはいえ、特殊合戦(イベント)の基本的な仕組みは、ここで作りました。
石川城急襲
1571年の春(または夏)に石川城を出撃先に選んだ場合に発生します。
策略札「ならず者」が手に入ります。
チュートリアルの後、すぐに難易度5段階中「4」の石川城へと出陣しないと発生しない特殊合戦(イベント)です。普通は難易度の低いエリアに出撃するので、遭遇していないプレイヤーもいると思います。
特殊合戦発生時のメッセージなんですが、実はかなり気を遣ってます。
石川城を攻める際に賭場にいた「ならず者」を用いて城兵の奥方や娘などに乱暴狼藉をさせたという話がありまして、
センシティブな表現をするとGoogleさんやappleさんに「対象年齢的にどうなのよ!」と言われる可能性を恐れて「ふんわり」した表現にしています。
大光寺城奇襲
発生させると策略札「撹乱」が手に入ります。
発生させるためには以下の条件を満たす必要があります。
1575年の冬(または1576年の春)に大光寺城を攻める
以前、大光寺城を攻めたが攻略に失敗している
一度攻略に失敗していないと発生しないという意地悪な条件です。
しかし以下の「発生時のメッセージ」を読むと、何故こんな条件なのかご理解いただけると思います。
油川城夜襲
策略札「火攻め」「急襲」「撹乱」を入れた編成で油川城を攻撃すると発生します。発生させると攻撃札「鉄砲(熟練)」が手に入ります。
武力ではなく策略で勝利したと伝わるお話があるので、デッキに特定の策略札を入れることで発生する特殊合戦です。
飯詰城包囲戦
現在の支配地域が14以上で飯詰城を攻撃すると発生します。
発生させると攻撃札「騎馬(熟練)」が手に入ります。
発生時のメッセージのとおり、津軽地方統一目前に発生するイベントです。
開発メンバー内の人気武将「朝日行安」が、プレイヤーの前に立ちはだかります。
大浦城攻略戦
「南部信直奪還録」(南部信直を主人公としたモード)であり、且つ支配地域が15以上で大浦城を攻撃すると発生する特殊合戦です。
発生させると攻撃札「鉄砲」が手に入ります。
これまで津軽為信を主役として作ってきたゲームですが、南部信直を主役としたモードを搭載しているため真逆の特殊合戦も必要だろうと設定したものです。
種里城包囲戦
「南部信直奪還録」であり、且つ支配地域が15以上で種里城を攻撃すると発生する特殊合戦です。発生させると攻撃札「鉄砲(熟練)」が手に入ります。南部モードも大詰めですね。
九戸の乱
「南部信直奪還録」で支配地が17になると大光寺城で九戸勢が挙兵します。
本来「九戸政実の乱」では九戸城に籠る九戸勢ですが、いま津軽地方に遠征していますからね…急遽「大光寺城」を乗っ取って貰いました。
九戸政実が反乱を起こした後で大光寺城を攻撃すると発生する最後の特殊合戦です。発生すると武将札「津軽為信」が手に入ります。
物語の最終盤にかつてのライバルキャラと共闘という少年誌ではよくある熱い展開です。
とは言っても、この特殊合戦の相手は近距離特化型の九戸勢。プレイヤーとしては遠距離デッキの方が有利だったりします。為信も近距離型なので使い勝手があまり良くないのはご愛嬌ということで…
浅瀬石籠城戦/六羽川合戦
ここまではプレイヤー側が攻撃すると発生するイベントでしたが、敵方主導の特殊合戦も用意されています。そのひとつが「浅瀬石籠城戦」であり、いわゆる「宇杭野の合戦」をモチーフとしたイベントです。
発生条件は1585年の春であり、浅瀬石が津軽側の支配地域であることです。
もうひとつが「六羽川合戦」です。こちらの発生条件はちょっと複雑。
1579年の夏であり、且つ「浪岡御所」「大光寺城」「乳井城」の支配地域が津軽側である必要があります。
特殊合戦を起こす
「ゲーム開発の道標」の記事を書くために当時の資料を見直していたのですが、特殊合戦の仕組みのメモが見当たらなくて苦労しました。
このへんの仕組みも開発の最終盤に作られたモノなので本当に突貫工事だったんでしょう。
仕方ないのでプログラムコードそのものを見たのですが、予想以上に複雑だったのでフローチャートにしてまとめるとこんな感じです。
「敵方主導の特殊合戦のフラグ」と「自分主導の特殊合戦のフラグ」を用意しておきます。
政略画面をロードした(または季節が変わった)時に絶対に処理する「軍師役のTips準備」の際に「年と季節」「支配エリア」をそれぞれチェックします。
特定(前述の各特殊合戦)の条件を満たしている場合は「敵方主導の特殊合戦のフラグ」をONにしてデッキ選択画面へと進みます。
それ以外の場合は、プレイヤーが政略画面で出陣を選びデッキ選択をした後で各条件のチェックをします。
合戦画面へ遷移したあと、特殊合戦と通常合戦の違いをフラグによって認識できますので対戦相手のデッキを読み込んで合戦の処理を行います。
合戦終了後にフラグのON/OFFによって増減する支配エリアが変わります。
最後に…
いかがでしょうか?
今回は「ゲームの作り方」というより特殊合戦を出現させるゲーム攻略記事っぽいですね。
これで「津軽為信統一記」は完成です。長い連載記事でしたが最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。
また後で、書き忘れていた話とか出てきそうですけどね~。
プログラムの組み方や、ツールの使い方の講座記事はよくありますが実際に販売しているゲームの企画段階から完成まで、作った人たちの想いや気持ちをメインにしたお話はあまり無いのではないかと思い書いてみました。
そんな「津軽為信統一記」が気になった方はコチラからどうぞ!
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皆様のゲーム作りに少しでもお役に立っていれば嬉しいのですが…
それでは他の記事でまたお会いしましょう!
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