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あなたが戻るべき場所へと帰っていく

私には現在、4つの腕時計を所有している。


その全てを、思いがけないことで無くしてしまわないよう、専用の収納ケースに収めている。

収納ケースは、全部で10本まで入る仕様となっている。因みに私自身、これといってマニアと云えるほどのコレクターではない。だが、いずれ何かしらの形で増えていくであろうと思い、敢えてたくさん収められる物を用意した次第である。


一つ目は、主にプライベートを中心に身に着けているカシオの青い電波時計と、

二つ目は、数年前にAppleの初売りで買ったアップルウォッチに、

三つ目は、亡き父の形見として実家から持ってきた、赤い文字盤が目立つ自動巻き式の時計である。

そして四つ目は、仕事用として肌身離さず身に着けてきた、カシオの黒いG-SHOCKだ。

その中でもG-SHOCKは、間もなく退職を控えている今の会社へ入社した際に、どんな過酷な環境でも耐え得るように(?)と、某家電量販店で購入したものである。

だがそれもいよいよ、あと少しで役目を終わろうとしている。いや、厳密に言えば、本社に最後の挨拶へと出向くことを除けば、すでに定期的な運用なるものは終わっているのだ。

先日、営業所にても1最後の出勤を終えた今、現在私は絶賛有休消化中である。それを終えた後もしばらくの間、このG-SHOCKを身に着ける機会は、おそらく無いかもしれない。

だからといって私はこの子を、どこぞの質屋などに売り飛ばしたりするような、手放す行為は一切考えていない。何か使用するタイミングさえ見つかれば、再び外に持ち出していきたいと思っている。


ただ、今はじっくりと休ませてあげたい気持ちがある。実家と同じ市内にある会社の営業所に行くと決まってから現在に至るまでの間、ケースの中に長らく収められていなかったのだ。

仕事のある平日は、肌身離さず身につけていた。しかし一ヶ月に二回ほど、東京の自宅に戻っている間だけは着用することなく、常に実家に置きっぱなしにしていたのである。

そうと考えたら、このG-SHOCKもずっと、元いたところに帰りたいと願っていたことだろう。在るべき場所に戻れずに、およそ1年半もの間。それもだらしのない状態のまま、長くて短い時を過ごしてきてしまったのだから。

だからこそ、これまで過酷な環境に付き合ってくれたことに感謝を述べつつ、長い間おつかれさまと云ってあげたい。 

そして、またいつか活躍できる時が訪れるまで、今はゆっくり休んでほしいという念を込めて、私は黒いG-SHOCKを、戻るべき場所であるケースに収めるのだった。

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