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政治講座ⅴ1631「隠蔽による支那政治・経済、オワコン!」

どうして、いつも同じ過ちをおかすのであろうか? そのような性(さが)なのか、不思議である。歴史を俯瞰すると将来が見えるのである。最貧国がGNP世界2位までの経済力になったが、没落も早い。いま、不動産バブル崩壊と巨額の不良債権と債務を抱えて、金融崩壊へと突き進んでいる。失政を隠すために真実を報道したら罰則を科すようである。これでは真実が隠蔽されて、原因がわからずに改善が期待できない。嘘の経済統計、捏造の経済指標からは、何も生まれない。悪化の道へ、奈落の底へと突き進むだけである。武漢から始まった疫病も隠蔽で世界中に広まった。今回は経済に関しての報道を中国のプロパガンダも織り交ぜて紹介する。

     皇紀2684年2月11日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

中国のGDPはすでに日本の4倍なのに、日本はなぜ不服なのか―中国専門家

Record China によるストーリー • 

8日、中国の政治学者、金燦栄氏が自身のSNSアカウント上に「中国のGDPはすでに日本の4倍なのに、どうして日本は中国を認めようとしないのか」について論じた動画を掲載した。写真は天安門広場。© Record China

2024年2月8日、中国の政治学者で中国人民大学国際関係学院副院長の金燦栄(ジン・ファンロン)氏が自身のSNSアカウント上に「中国のGDPはすでに日本の4倍なのに、どうして日本は中国を認めようとしないのか」について論じた動画を掲載した。

動画の中で金氏は、昨年の日中関係が総じて良好ではないと言うべきだったと指摘。政治的には両国首脳が多国間会議の中で簡単な立ち話をする程度にとどまって相互訪問がなく、淡々と時が過ぎていったとし、経済や貿易においては日本資本による中国からの撤退が比較的目立つという複雑な変化があったとする一方、「これは日本資本の競争力低下が主因であり、政治とはあまり大きな関係がない」と評した。

また、日本と「第三者」によるアクションが比較的多くなっており、その例が中国と南シナ海問題で争っているフィリピンへの支援だと主張。また、台湾問題でも日本は「第三者」と共にあくどい動きを見せたとし、2国間関係の冷淡さ、経済・貿易関係の冷え込み、「第三者」との関係を総合した上で「2023年の日中関係は良好ではなかった」との判断を下したと説明した。

金氏はその上で、「今や中国の実力は日本を上回っているにもかかわらず日本はなおも認めようとしない。これにはまだ一定の時間がかかるだろう」と予測。かつての日英同盟や日独伊三国同盟、そして現在の米国との関係など、歴史を鑑みれば日本は「強いものに服従する」傾向があるとし、「日本に中国を認めさせるには、やはり中国が米国を打ち負かして米国を超えることが必要だ中国のGDPが米国の2倍になればいいだろう」と論じた。(翻訳・編集/川尻)


「爆買い」復活は? 今年の春節、中国人観光客どこへ行く

毎日新聞 によるストーリー • 4 時間

キャナルシティ博多で、春節キャンペーンの窓口に訪れた訪日客=福岡市博多区で2024年2月9日午前11時42分、宗岡敬介撮影© 毎日新聞 提供

 中国で「民族大移動」といわれる春節(旧正月)が10日から始まる。今年は8連休で、アジアを中心に多くの観光客が訪れる見通しだが、かつて「爆買い」の象徴的存在だった訪日中国人の存在感は薄い。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大が収束し、中国人観光客も増加傾向にある。観光地などでは、さまざまなおもてなしを用意し、将来の需要増に備えている。

 福岡市博多区の商業施設「キャナルシティ博多」。大型バスが最大8台駐車でき、約150店のテナントのうち80店が免税対応店で訪日客に人気だ。1万円以上の買い物客に飲食店の割引券などを配布する春節のキャンペーンが始まった9日、1階の特設窓口には次々と訪日客が訪れていた。

 ただ、客の多くは中国人ではなく、韓国人が目立った。伊藤義之支配人は「コロナ禍前と比べて、中国人の団体客がまだ戻っていない。海外の方に来ていただけるよう、春節に限らずキャンペーンを継続的に仕掛けてリピーターになる人を増やしたい」と意気込む。

 コロナの収束を受けて中国政府は2023年8月、日本への団体旅行を解禁した。だが、日本政府観光局によると、訪日中国人はコロナ前の19年12月は約71万人だったが、23年12月は約31万人(推計値)と半数以下。通年でも19年の約960万人に比べ、23年は約240万人(同)と4分の1にとどまる

 中国人観光客が増えない一因が、中国経済の低迷だ。需要減などから、航空便数も伸び悩み、国土交通省によると、日中間で1週間に往復する航空機は24年1月は約800便で、19年10月の約1400便の6割程度だ。

 現状は飛行機の直行便が多い首都圏や関西などに観光客が集中しているとみられるが、今年3月下旬には航空会社が夏ダイヤに変わるため、日中間の定期便が増える可能性がある。

 寄港するクルーズ船も大型船が戻りつつあり、今月7日には福岡市の博多港に定員5000人超の中国初の国産大型クルーズ船が寄港。港近くの免税店は貸し切りバスがひっきりなしに出入りしていた。やはりクルーズ船が寄港する鹿児島県の観光地「仙巌(せんがん)園」は、2月上旬はレストランの予約がほぼ満杯となった。春節の期間は獅子舞を披露するなどイベントを準備してもてなす。

 中国人観光客向けに旅行事業を展開する日中友好旅行社(福岡市)の高尾淑江(よしえ)社長(62)は「4~6人ぐらいのお客様向けにオーダーを受けて旅行プランを作るが、イチゴ狩りや、焼き物作り、お菓子の工場見学などをしている」と体験型の観光が人気になっているという。

 もっとも、23年に日本を訪れた外国人旅行者は2500万人を超え、すでにコロナ前の8割近くまで回復した。中国人観光客が以前の水準に戻れば、オーバーツーリズムとなる懸念もある。福岡市観光マーケティング課は「特定の場所に訪日客が集中するのではなく、市内各地で回遊を促したり、九州や西日本の自治体とも連携したりして、観光客を分散する取り組みを強化したい」と話す。【宗岡敬介】

春節大移動でEVの脆弱性が露呈―中国メディア

Record China の意見 • 1 日

春節(旧正月。今年は2月10日)の大移動が始まっている中国では悪天候の影響もあり、電気自動車(EV)の脆弱性が露呈しているようだ。© Record China

春節(旧正月。今年は2月10日)の大移動が始まっている中国では悪天候の影響もあり、電気自動車(EV)の脆弱(ぜいじゃく)性が露呈しているようだ。

中国メディアの中新経緯は7日付の記事で、あるEV所有者の女性のケースを紹介した。女性は今月2日、故郷の湖北省武漢市を目指して広東省深セン市を出発したが、渋滞等で予想以上に時間を要した。サービスエリア(SA)が停電していたため充電できずに一度国道に降りたほか、充電スタンド付近が雪で埋もれていたため立ち往生したりもした。数日かけてようやく到着したが、この間EVは計6回の充電を行い、充電待ちの時間は最も長い時で8時間に及んだという。

同じく、雪の中をEVでの帰省に大変な苦労をしたという別の女性は、ネット上で「春節にはEVで長距離移動をしないように」と呼び掛けた。渋滞に巻き込まれると電力消費が気になり焦ってしまうことと、一部の車種は雪の坂道を上る際にパワーが不足していることを理由に挙げている。

春節大移動でEVの脆弱性が露呈―中国メディア© Record China

記事は上記の2人の女性が新エネ車に対してそれぞれ「85点」と「70~80点」という点数を付けたとしているが、同時に女性らから「帰省の際には必ず事前にルートをよく考えないといけない。渋滞や、充電スタンドに突発的な問題が発生した時は自分で電力を確保する必要がある」との指摘も出たことを伝えている。

こうした例は他にもあるようだ。中国メディアの汽車頭条は、EVでの帰省の途中、高速道路で渋滞に巻き込まれた男性のケースを紹介した。男性は「(渋滞にはまった状態で)充電が39%しか残っていなかった。都市部を走っている分にはエアコンをつけても問題ないが、夜を明かさなければならないということを意識すると慌てた」と語った。節電のためにエアコンをつけずにダウンジャケットを着て車内で夜を明かした人もいたそうだ。

上海から甘粛省蘭州市に向かった女性は、スノータイヤやチェーンを装備しておらず、甘粛省の大雪に苦しめられた。何度もスリップしながら低速で進むしかなかった。また、ほかのEV所有者と同様に「電力消費」に何よりも気を使った。西に行くほど充電に不便さを感じるようになり、甘粛省では充電スタンドが開放されておらずに別のスタンドを探さなければならない状況もあったという。

今年は例年にも増して天気が不安定で、雪や雨の影響で事故が相次いだことも渋滞に拍車をかけたようだ。とはいえ、SNS上ではEV所有者が「車で実家に帰れるのか?」「そもそもEVを買うべきだったのか?」といった不安を吐露しているという。(翻訳・編集/北田)

ヘッジファンド、中国恒大から痛い教訓-額面1ドルで1セントに沈む

Alice Huang、Dorothy Ma、Pearl Liu によるストーリー •

(ブルームバーグ): 欧米のヘッジファンドにとっては、中国不動産開発大手、中国恒大集団の社債は魅力的なディストレスト債取引のように見えた。デフォルト(債務不履行)となった190億ドル(約2兆8400億円)のオフショア債に対し、資産は2420億ドル。中国政府も低調な不動産市場のてこ入れを決意しているように見受けられ、利益を上げる条件はそろっていると考えられた。このため、ヘッジファンドは高いリターンを得ようと、恒大債に資金を投じた

  しかし、2021年末のデフォルトから約2年。代わりに得たものは、中国共産党と交渉しようとする危険性を巡る厳しい教訓だった。香港高等法院(高裁)は先月29日、中国恒大に清算を命令。恒大債はほぼ無価値となっており、流通市場では額面1ドルに対しわずか1セントで取引されている。

中国恒大に香港高裁が清算命令-資産は本土中心、実質的な回収困難か

  ブルームバーグは今回、中国恒大と債権者の交渉を直接知る十数人を取材した。非公開の協議に関して公にコメントする権限がないとして、全員が匿名を条件に話した。

  グローバルな運用会社は、中国政府が先進国ではあまり見られない形で企業の問題に影響力を行使するということ自体は知っていた。それでも、中国当局が政治的・経済的な都合でどれほど介入してくるのか、中国恒大の件で多くが身をもって知ることになった。

  碧桂園など他の中国企業が恒大に続いてデフォルトに陥る中で、額面1ドル当たり1セントで取引される恒大債は、投資家に対する警鐘になると関係者は話す。

Evergrande's Dollar Debt Is Nearly Worthless | The company's bonds have sunk below one cent on the dollar© Bloomberg

  債券保有者に不利となる企業行動への対応に取り組む投資家組織、ザ・クレジット・ラウンドテーブルでチェアを務めるデービッド・ナットソン氏は、「投資家は国家介入のリスクを恐らく十分に理解していなかった」と指摘。「国内と海外の債権者間の損失配分は政治色を帯びることになるだろう」と語る。

  無論、恒大債の暴落を招いた原因は政府による関与だけではない。

  深刻化する不動産市場の低迷や7兆ドル相当の株安、不十分な政策対応など、いずれも全般的な地合いの重しとなっている。中国恒大が保有する資産の大半がすでに差し押さえられているか、香港ではなく、デービッドソン・ケンプナー・キャピタル・マネジメントやキング・ストリート・キャピタル・マネジメント、コントラリアン・キャピタル・マネジメントなど債券保有者の力が及ばない可能性もある中国本土にあるという事実も、回収期待が高まらない一因となっている。

  デービッドソン・ケンプナーとキング・ストリートの担当者はコメントを控え、コントラリアン・キャピタルはコメント要請に応じなかった。

Evergrande Property in Beijing As Developer Liquidation to Leave Little for Creditors to Claim© Source: Bloomberg

  一連の交渉に詳しい関係者は多くの不満を挙げたが、ほぼ全員が中国恒大の指揮を誰が執っているのか明確でないという点を指摘した。

  中国恒大がデフォルトに陥った直後、本社を置く広東省の政府当局者を中心とするリスク管理委員会が抜本的な見直しを指導するために設けられた。同省はこの年、恒大の内部統制と経営を強化するため、作業グループを派遣することも明らかにしていた。

中国恒大の債務再編、共産党に主導権-債権者には痛しかゆし

  交渉の過程では、中国恒大の担当者が事実上全ての重要な決定を精査する責任があるとして、広東省の省都である「広州」に言及することもあったが、債権者にはどの組織や個人の組み合わせを示唆しているのか分からないままだった。

  投資家やアドバイザーはこうした協議で誰の利益が優先されているのか、政府のどの層を相手にしているのか、よく分からないと嘆いていた。

  広東省関連のグループがオフショア債の交渉に関わる人々と直接やりとりすることは一度もなかった、と関係者は明かす。意見は中国恒大の財務アドバイザーを務める中国国際金融(CICC)と中銀国際(BOCI)に伝えられ、香港と中国本土の弁護士やアドバイザーから成る複雑な伝達網を通じ、債券保有者にようやく情報が渡るという流れだったという。

  中国恒大とCICC、BOCI、広東省政府の担当者にコメントを求めたが、返答はなかった。

2年間を無駄に

  最終的には、香港高等法院の陳静芬(リンダ・チャン)判事が合意に向けた進展が乏しいとして、中国恒大の清算を命じることになった。

  恒大のあるアドバイザーは、交渉が終わって安堵(あんど)しているとしながらも、終わり方を考えると、人生の2年間を無駄にしたような気分だと語った。多くの人が同じ感情を抱いている。

  香港の裁判所が選任した管財人は中国恒大の1兆7400億元(約36兆円)に上る資産を引き継ぎ、分配作業に着手しようとしている。しかし、資産の90%超が中国本土にあるほか、香港の破産手続きが中国で認められることは限定的で、回収を目指す債権者は困難な闘いに直面する。

  プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社、開源資本のマネジングディレクター、ブロック・シルバーズ氏は「実質的に支払い不能の不動産開発会社が政治的に緊張した本土で債務返済に苦労する中当局が価値ある本土資産の確保をオフショア債権者に認めることはないだろう」と指摘。「発展途上の中国クレジット市場にとって、これは深刻な後退だ。外国資本はより低リスクの資産を求めるようになっており、市場心理の悪化に拍車を掛けるだけとなる恐れがある」と述べた。

原題:A 99% Bond Wipeout Hands Hedge Funds a Harsh Lesson on China(抜粋)

--取材協力:Eliza Ronalds-Hannon、Erin Hudson、Dong Cao、Zheng Wu.

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世界の不動産市場、ダメージ判明へ-中国勢の不良資産売り始まる

Neil Callanan、Ainslie Chandler によるストーリー • 21 時間


(ブルームバーグ): 中国の投資家その債権者が世界中で保有する不動産資産を売りに出している。中国国内の不動産危機が深刻化する中、資金調達の必要性が高まっており、相場下落を承知で「売り出し中」の看板を掲げている

  中国勢が資産売却で確保できる資金が、業界全体がどれほどの苦境に陥っているのか、明確かつ最終的な数値を示すことになるとみられる。

  米不動産投資会社スターウッド・キャピタル・グループのバリー・スターンリヒト最高経営責任者(CEO)は最近、金利上昇に端を発した世界的な不況により、オフィス不動産の価値だけでもすでに1兆ドル(約149兆円)余りが失われたと述べた。

オフィス不動産市場の損失、1兆ドル超える-富豪のスターンリヒト氏

  しかし、売却された資産が非常に少なく、最近のデータをほとんど鑑定士が持っていないため、そのダメージの正確な大きさはまだ分かっていない。

  世界の商業用不動産成約件数は昨年、10年ぶりの低水準となったが、資産売却の遅れが巨額の含み損を隠しているのではと規制・監督当局や市場は神経をとがらせている。

見直し

  商業用不動産に関連する貸倒引当金の増加と減配を発表した米銀行持ち株会社ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)は6日、株価が27年ぶりの安値となった。

  欧州中央銀行(ECB)はユーロ圏の銀行による融資の評価損計上が進んでいないことを懸念。英国の金融行動監視機構(FCA)は不動産を含むプライベート市場のバリュエーションを見直す予定だ。


Luxury Development in Heart of Mayfair Falls Into Insolvency© Photographer: Jason Alden/Bloomberg

  中国では地主やデベロッパーが、国内事業の立て直しや債務返済のため、たとえ財務面で打撃を受けることになっても、今すぐ現金が必要だと判断。過剰な借り入れに対する政府の取り締まりにより、かつて大手とされていたデベロッパーでさえ、無傷でいられるところはほとんどない。

  例えば、広東省広州に本社を置く中国奥園集団は60億ドルの債務再編計画の真っただ中だが、データプロバイダーのアルタス・グループによると、傘下の部門がカナダのトロントで持っていた区画を2021年の購入価格から約45%割り引いて昨年後半に売却した。

  ブルームバーグ・インテリジェンスのクレジットアナリスト、トル・アラムトゥ氏は「積極的な売り手によって市場の凍結が解け、透明性と価格発見機能が向上され得る」と述べた上で、「ポートフォリオのバリュエーションはさらに下がるかもしれない」と予想した。

欧州と豪州

  不動産売買が行われるたびに、資本還元率について市場はよりはっきりと知るようになる。そのデータは、鑑定士が他の資産を評価する際に使用され、さらに大きな減損処理を引き起こす可能性もある。

  世茂集団の許栄茂会長に関係するロンドンのオフィスビルが昨年、売却された。事情に詳しい関係者によれば、22年に売却で合意していたが実際には売れ残っていた物件で、売値はその時から約15%引き下げられた。

  欧州ではこれまで、中国勢が所有する資産の売却は限られていたが、ここに来て増え始めている。

China's Property Woes Engulf London with Stalled Projects, Sales© Photographer: Chris Ratcliffe/Bloomberg

  広州富力地産(広州R&F)はロンドンで手がけている不動産プロジェクトを売却する。6日遅くに香港で提出された届け出によれば、広州R&Fはロンドンにある高層ビルの持ち株会社を売却する同意書に署名。

  このビルは13億4000万ポンド(約2500億円)と評価されてきたが、代価として求めているのは、広州R&Fのドル建て債務の一部引き受けと現金わずか1香港ドル(約19円)だ。

経営難の富力地産、ロンドンのビル売却へ-19円と債務引き受けで

  JPモルガン・アセット・マネジメントの欧州不動産調査責任者キャロル・ホジソン氏は先月、「価格発見は年内を通して改善される」との見方を示し、「市場に出てくる不良資産が増えている」ことが一因だと説明した。


Chinese Investors Are Selling Off Assets Abroad |© Source: MSCI Real Assets

  オーストラリアを含め、欧州以外でも不良資産売りが加速している。豪州の市場ではほんの数年前まで野心的な中国のデベロッパーが主要プレーヤーだったが、今はそのほとんどが買収をやめ、代わりにプロジェクトの売却に軸足を移している。

  地元メディアによると、多額の負債を抱え中国不動産危機の象徴となっている碧桂園傘下のリスランドがメルボルン郊外の用地を2億5000万豪ドル(約242億円)で売却。また、別の現地報道によれば、同社は最近、シドニーの開発資産を約2億4000万豪ドルで手放した。

  リスランド・オーストラリアのグオタオ・フーCEOはブルームバーグに対し売却の詳細や価格については明かさなかったが、「残っている土地の一部売却はポートフォリオを最適化するアプローチの一環」とのコメントを寄せた。

  世茂と碧桂園、広州R&Fの担当者はコメント要請にすぐに応じなかった。中国奥園の本社に電話したが、応答はなかった。

原題:China’s Property Crisis Is Starting to Ripple Across the World (抜粋)

--取材協力:Jack Sidders、Natalie Wong、Erin Hudson、Emma Dong、Amanda Wang.

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中国社会は水面下で発火寸前~河南省・小中一貫校生徒の死、いじめ隠蔽に怒りの群衆が都市封鎖を引き起こす

北村 豊 によるストーリー • 

ある年末の死が

河南省東部に位置する商丘市(しょうきゅうし)は773万人の常住人口を擁する中都市であり、その面積は10704平方キロメートルで、日本の都道府県別面積で7番目に大きい岐阜県の10621平方キロメートルに匹敵する広さを持つ。寧陵県はその商丘市の管轄下にある常住人口56万人の小都市であり、商丘市の市街地から37キロメートルの距離にある。

河南省寧陵県育華園学校 中国SNSより© 現代ビジネス

寧陵県の程楼郷に所在する「育華園学校」は2018年に寧陵県共産党委員会と寧陵県政府によって認可された民営の学校であり、2022年に校名を「清華園学校」から「育華園学校」に変更した。同校は小学校6年間と初級中学(日本の中学校)3年間の「九年一貫制学校」で、全学生が親元を離れて学生宿舎で毎日の生活を送っている。

その育華園学校で2023年12月24日の早朝一人の生徒が死亡する事件が発生した。

12月24日朝6時04分に学校の宿直であった副校長が日課である定期巡回中に学生宿舎1号棟前の地上に黄緑色のシャツを着て、紺色のトレーニングズボンを穿いた学生が倒れているのを発見した。副校長は倒れていた学生に大声で呼びかけ、肩を軽く叩いて反応を確認した後に、舎監の協力を得て電話で120(救急)と110(公安警察)へ連絡したのは6時05分だった。この電話を受けて宇寧県中医院の医療スタッフと公安警察官が相前後して現場へ到着した。

医療スタッフは現場到着後即座に倒れていた学生の診断を行い、呼びかけに対する無反応、無呼吸、両側瞳孔散大、頸動脈拍動消失など、一連の検査結果を踏まえて、6時39分に患者の死亡を確認した。その後の調べによって、死者は程楼郷楊楼村の学生で7年級(中学1年)3組の楊某某であることが判明した。

なぜわざわざ事件性を排除

事件発生直後に寧陵県は教育、公安、衛生などの部門から成る合同調査チームを発足させて事件の調査を行ったが、その調査結果の詳細は以下の通り。

1)育華園学校には監視室が有り、監視カメラは校舎だけでなく、学生宿舎やその廊下の映像が保存されていた。映像を確認すると、死去した楊某某は12月23日の20時58分に授業を終えて宿舎の自室である1号棟5階の501号室へ戻り、12月24日の1時41分に501号室を出て5階の共同便所へ行った。(501号室には室内にも小型のトイレは有るが、夜中に同室者の就寝を妨げたり、異臭が漂うのを防ぐため、学校が夜間は共同便所を使うよう提唱していたのだった)

2)楊某某は1時43分に501号室へ戻ったが、その後は6時05分に地上で発見されるまで楊某某が501号室から出た形跡はなかった。楊某某が死亡した区域は監視カメラの撮影可能範囲に含まれていたが、夜間は光線が暗く、加えて撮影距離が約87メートルと遠かったので、死亡する過程を確認することはできなかった。(現場の実証試験では、昼間は宿舎までの見通しが利いたし、高所から物が落下するのを見ることもできた

3)楊某某が居住していた学生宿舎1号棟5階501号室における現場検証では、楊某某のベッドの上にはちゃんと畳まれた掛布団が置かれ、枕の下にはホチキスの針で封をした封筒があり、その上には「遺書」と書かれていた。部屋の東側にある窓ガラスは24.5センチメートル開けることができた。(これは1~2ヶ月前に窓の固定ネジが抜け落ちたために開けられるようになったもので、事件発生後に学校は校内の全ての窓を検査して開けられないように修理したのだった)

4)窓の東側の内側にある壁面のタイル上には左手の手形が発見されたが、そこにあった指紋は楊某某の左手の人差し指の指紋と一致した。さらに、窓の内側の出窓には靴跡が発見されたが、靴の先端は外側を向いていた。窓の下にある4階の空調室外機の上にも靴跡が発見されたが、その靴先も外側を向いていた。これら2つの靴跡と死んだ楊某某が履いていたサンダルの模様は同一だった。楊某某と同室の学生についても靴跡を比較したが、いずれも出窓と4階室外機上の靴跡とは一致しなかった。

5)楊某某の遺書が育華園学校と彼の実家から1通ずつ発見されたが、それらの内容から生前の楊某某が厭世的であり、自殺傾向を抱えていたことが判明した。12月27日に公安機関は河南省の司法鑑定センターに2通の遺書の筆跡鑑定を依頼したが、鑑定結果は2通とも楊某某の筆跡であった。また、遺書の内容はその他の証拠と相互に関連付けられた。ただし、親族の意見を尊重して、楊某某のプライバシーを尊重して、遺書の具体的内容は対外的に非公開とした。

6)死因を究明すべく、12月24日午前中に寧陵県公安局の監察医が寧陵県人民医院で楊某某の遺体に対する検死を行い、12時13分に終了した。当日の午前中は死者の親族が学校で学校側と交渉を続けていたが、情緒不安定となっていたため、落ち着くのを待って、14時50分に警官同行の下で親族は寧陵県人民医院へ出向いて楊某某の遺体と面会した。12月25日、寧陵県公安局は商丘市公安局の監察医に対して遺体を再検査して確認することを要求した。

7)商丘市公安局の監察医による検死が行われた結果、遺体に残る損傷の状態が確認されたが、遺体に損傷を与えた工具や素手の物証は発見されなかったし、遺体表面の損傷は表皮の剥離と皮下出血で、高所からの墜落による傷痕に符合していた。CTスキャナー検査によれば、死者の楊某某は頭蓋内出血、左側気胸、両側胸水、右下肢及び尾骶骨の骨折で、高所からの墜落による頭蓋脳損傷による死亡と符合した。

家族が納得しない理由

上記を踏まえて、寧陵県合同調査チームは12月27日付で「寧陵県育華園学校の学生死亡事件に関する状況通報」を発表した。

2023年12月24日に寧陵県育華園学校で学生が死亡する事故が発生した。事故発生後、寧陵県人民政府は事態を重視し、公安、教育、衛生などの部門から成る合同調査チームを発足して調査を行った。調査を経て、死亡した学生は寧陵県程楼郷楊楼村の村民である楊某某であることが判明した。当日早朝の6時04分に育華園学校の巡回職員が地上に横たわる楊某某を発見した。6時05分に学校は直ちに救急の120へ電話を入れると同時に警察へ通報した。公安機関が監視カメラの映像チェック、個別の聞き取り調査、現場検証および商丘市と寧陵県双方の監察医による検死結果、さらには死者が生前に残した2通の遺書の内容を勘案して、楊某某は高所から墜落した事故死と認定し、刑事事件の可能性を排除した。

寧陵県聯合調査組(合同調査チーム) 2023年12月27日

この通報の内容を知って驚いたのは死亡した楊某某の家族だった。楊某某が死亡したのは12月24日早朝2時から6時までの間と考えられるが、楊某某の遺体は6時04分に発見されたにもかかわらず、家族が寧陵県人民医院で遺体と面会できたのは9時間以上経過した同日の15時41分だった。遺体にはまだ温もりが感じられただけでなく、遺体の全身には多くの打撲傷があり、手や腕には錐(きり)の様な鋭利な道具で刺し貫かれた穴がいくつも有り、腿は青紫のチアノーゼ状態を示し、足首はねじ曲がって捻挫状態で、くるぶしには大きな傷跡があった。

家族は遺体の状況を写真に撮ったが、それは楊某某が「校園欺凌(学校いじめ)」を受けていたのではないかと疑ったからだった。家族がそうした疑念を持っていたにもかかわらず、上述した合同調査チームの状況通報には遺体の傷痕に関する記述がなかったばかりか、楊某某の死因を高所からの墜落による事故死として認定し、刑事事件の可能性を排除していた。

これに納得が行かない楊某某の家族や親戚は12月27日に育華園学校の校門に集合し、「還我孩子(我が子を返せ)」と書いた横断幕を掲げ、校内へ向けて「育華園学校の教師が学生を殺した」などと大声で叫び続けた

校門前で抗議活動をする犠牲者の家族 中国SNSより© 現代ビジネス

彼らは楊某某が学校でいじめを受けて、暴行されている間に痛みで気絶して死亡したのではないかと疑っていたのだった。だからこそ、学校はその責任を回避し、楊某某の親に死因の真相を知られるのを恐れて、楊某某が完全に死んだのを確認してから、楊某某の死亡を家族に連絡したのではないかと考えていた。だから、家族が遺体と面会した時に遺体にはまだ温もりが残っていたのだ

殴り、頭髪をもぎ取る

楊某某のいとこは楊某某が1日前の12月23日にも校内いじめを受けていたと断言している。それと言うのは、彼が楊某某の隣室の学生から聞いたところによれば、12月23日に学生たちは授業終了後に学生宿舎には戻らず、教室で一夜を過ごすように指示を受けたという。このため、全ての学生は机にうつ伏せになって眠ったのだという。また、或る筋からの話では、楊某某は2カ月前も学校で殴られ、頭髪の一部がもぎ取られたという。

なお、合同調査チームは、楊某某が「校園欺凌(学校いじめ)」を受けていたか否かについて、楊某某の親族や育華園学校の管理者、クラス担任、担任教師、生活指導教師、同級生、同じ宿舎のルームメイト、仲の良い同級生など47人に聞き取り調査を行ったが、楊某某が生前に学校いじめを受けていたという事実は発見できなかったと述べていた。

育華園学校における虐待が原因で死亡した可能性があるという話は一部のメディアや口コミ、さらにはネットやSNSを通じて商丘市周辺の地域に伝えられた。虐待による死亡という疑念があるというのに、寧陵県合同調査チームが楊某某の死因を高所からの墜落として事件を終わらせようとしたことも人々の反発を招いたようだ。

一挙に群衆の大抗議行動に

こうした経緯を経て、楊某某の家族を支援しようという人々が地元や外地から続々と寧陵県葛天大道に所在する育華園学校の校門前に集まり、一部の人々は寧陵県庁前に集まった。12月28日には育華園学校の門前の道路には所狭しと花束が置かれ、不正に怒る群衆が学校内に向かって抗議の声を上げていた。この日に集結した群衆は数万人に上り、彼らは役人の黒塗りの乗用車を包囲して議論を吹っ掛け、役人を助けようと現れたパトカーを取り囲んで、群衆と警官の衝突が繰り返されたが、最後はパトカーが逃げ出す始末であった。

12月29日には寧陵県は封鎖状態となり、外部からの進入は禁じられ、高速道路も封鎖された。それにもかかわらず、育華園学校の正門には数万人の群衆が集結し、寧陵県政府に対して事件の真相を公表せよと要求を突き付けた。群衆の先頭にいた楊某某の祖母は遺体のむごたらしい写真を警官たちに示して、彼らの胸を叩きながら正義を訴えた。

一部の群衆は育華園学校の柵を押し倒し、学校をガードしていた警官を押しのけて校内へ侵入した。彼らは運悪く通り掛かった校長を取り囲んで、跪(ひざまず)いて謝るよう要求し、逃げる校長を揉みくちゃにして、頭や尻を所かまわず殴りつけたのだった
さらに、群衆の一部は育華園学校の幹部事務室に入り込んで狼藉を働き、机、椅子やロッカーをなぎ倒したりもした。

その後、一部の群衆は中国国旗を手にして寧陵県庁へ向かい、県庁ビルに入り込んで事件の真相究明を要求したのだった。この間にも態勢を整えた警察部隊は多数の人々をとらえて警察車両に収容した。これに対して群衆は捉えられた人々を釈放するよう要求して、警官たちと衝突を繰り返した。

12月31日の現地メディアによれば、寧陵県全域は戒厳令下にあり、数十台の「特警大巴(特殊警察大型バス)」が投入されて群衆による抗議活動は鎮圧され、数十人が逮捕されたという。また、今回の群衆による抗議活動の状況を全国各地へネットやSNSで報じたとして勇敢な人々が警察によって連行されたという。なお、「特殊警察(略称:特警)」とは英文ならSWATであり、テロリストや強力な武器を持つ犯罪集団を対象とする特別警察隊である。

県全域がいまだ封鎖状態

年が明けた2024年1月2日に寧陵県合同調査チームは「寧陵県育華園学校の学生・楊某某の墜落死亡事件の調査状況通報」を発表して、事件の幕引きを行った。調査状況通報の内容は、上述した調査結果の通りで、変更箇所は何もない。寧陵県全域が特殊警察によって完全に封鎖されており、人々は口を閉ざし、見て見ぬ振りで、特警が撤収するのをひたすら待っている状況にあるとの事だった
事件発生から1ヶ月が経過した現在の寧陵県はどうなっているのか。その後の寧陵県の状況に関する情報は何もないので分からない。

楊某某は学生宿舎の4、5階から墜落して死亡したのか、あるいは校内いじめを受けた末に死亡したのか。本当のことは不明ながら、家族が示した遺体の写真を見る限りでは楊某某の死因は墜落ではなく、いじめによる暴行死であると思われる。それを寧陵県政府ぐるみで隠蔽したというのが真相だろう。ただし、寧陵県政府がなぜに育華園学校の味方をして隠蔽に加担したのか、その理由は分からない。

昨今の中国では一般民衆の正義感や不満を刺激するような事件が発生すれば、それを知った人々が燎原の火のように立ち上がって、地元の政府や共産党に対して反旗を翻す可能性があることを示したのが上述の楊某某死亡事件だと考えるのは早計だろうか。情報統制が一段と厳格化を強めつつある中国では国内の暴動や騒乱の状況を示すような事件が外部へ報じられることは滅多になくなっているが、本事件だけは統制の抜け道をすり抜けたのかその全貌が報じられたのだった。

止まらぬ中国経済の地獄化に「まるで30年前の日本」…暴落する大手銀行株を買い支える”国家隊”の正体と政府の「貸株・空売りの禁止措置」

みんかぶマガジン によるストーリー • 

止まらぬ中国経済の地獄化に「まるで30年前の日本」…暴落する大手銀行株を買い支える”国家隊”の正体と政府の「貸株・空売りの禁止措置」© みんかぶマガジン

中国経済は、かつての日本のように経済の長期低迷に陥る「日本化」が懸念されている。バブル崩壊前後の日本経済と現在の中国経済との間に、共通点が多く見られるのだ。日経新聞の上級論説委員兼編集委員である小平龍四郎氏は「まさに1990年代の日本のようだ」と語る――。

日本の“失われた30年”を再現しようとしている中国

不動産バブルが崩壊し、経済は失われた10年に突入――。日本の1900年代の過ちを中国がくり返そうとしている。中国はバブル崩壊後の日本経済の教訓を学んではいなかったのか。そう思わざるを得ない光景が広がっている。

PKO。本来は「ピース・キーピング・オペレーション」、国連の平和維持策を意味する言葉だ。しかし、市場関係者にとってのPKOは「プライス・キーピング・オペレーション」、株価の人為的維持策と解釈する。景気や企業業績の善し悪しに応じて上がったり下がったりする株価を国などが様々な策を弄して下支えする。これによって株価のシグナリング機能が奪われ、人々は密かに進行する経済の病に気づかなくなる。つかの間、健康になった気持ちにもなる。しかし、病は確実に進行し、身体をむしばんでいく。病院に行かなければ健康と考えるのと同じで、なんとも愚かしい発想だ。

このPKO政策が不動産バブルの崩壊に直面した中国で採られている。1月29日に中国証券監督管理委員会が発表した「株価対策」は、日本にとっては古色蒼然の内容だった。譲渡制限付き株式の貸株禁止だ。譲渡制限付き株式とは株式新規公開(IPO)や増資、社員の株式報酬などに伴って発行される株式のうち、ロックアップと呼ばれる一定期間の売却禁止条項がふされているものだ。

中国の国家安全省は「空売り」に対して厳しく警告

中国では株価の下落を恐れてIPOや増資などに消極的な企業が増えている。貸株を禁止し、株価下落を招いているとされる空売りを封じ込めれば、株式相場が下支えされて企業活動が正常化するという見通しだ。中国の市場当局は過去にも貸株を制限していたが、今回の措置は、より明示的で厳しい内容だ。

貸株・空売りの禁止措置は例えばリーマン・ショックのような緊急時には採られたことがある。しかし、それはあくまで「100年に1度」級の緊急時に限っての話だ。逆に言えば、貸株・空売りを禁止すれば、市場参加者に「それほど経済や市場は酷い状態なのか」と思わせかねない。今回の中国市場当局の政策もまさにそうしたシグナルを市場に送ってしまったようで、株式相場は弱含みしている。

「混乱から利益を得ようとしている人々が、対中投資を動揺させ、我が国に金融不安を起こそうとしている」。中国でスパイを監視・摘発する国家安全省は昨年来、こんな警告を発している。混乱から利益を得る行為が何を指すのかは判然としないが、株式相場を一時的に下げる空売り行為が含まれると解釈することは可能で、実際に中国の投資コミュニティーではそうした受け止め方が急速に広がっている。しかも、警鐘を発しているのは国家安全省空売りは国家への反逆罪として摘発するというメッセージにも受け取れる。

中国政府系ファンドは大手銀行株の買い支えを実行

こうした方向性を突き詰めれば、手元にない株券を借りて売却する「空売り」だけでなく、保有する株券を処分する「現物売り」も、相場を下げ社会を混乱させるという理由で、国家への反逆と見なされる恐れも浮上する。市場を舞台にした恐怖政治にほかならない。

売却を人為的に止めるだけでなく、政策的に株式を買う動きもある。中国政府系ファンドが大手銀行株を公然と買い支えている。「国家隊」と呼ばれる政府系資金の動きだ。報道によれば、ファンドが投資する規模はさらに大きくなりそうだという。

政府介入による売りの抑制と買い支え。これによって株式市場が活性化すれば良いのだが、実際には逆に動くだろう。まっとうな投資家は中国株に見切りをつけ、別の市場で売買しようとするからだ。昨年来の日本株の上昇は、こうした中国からの逃避マネーによっても支えられている

経済や企業が抱える問題の解決が先送り。マグマはいつか吹き出す

市場の本質は、多様な売買によって企業価値を見きわめ、それに基づいて投資や雇用が調節されるプライシングにある。景気や企業業績に基づいて投資判断を下そうとする投資家を閉め出し、人為的に株価を支えるお金だけが流入する市場はプライシング機能を失う。それによって、株価下落という為政者にとって見たくない現実は当面の間回避されるかもしれないが、経済や企業が抱える問題の解決が先送りされるため、株式市場の潜在的な売りのマグマが蓄積される。それはいつか吹き出し、社会を大混乱させる……。

こう書けば、既視感を抱く方もいらっしゃるのではないか。そう、これはまさにバブル崩壊後の日本が1990年代に犯した過ちにほかならない。

以下の新聞記事の一節をお読みいただきたい。

「(中略)PKOには様々なテクニックがある。基本は巨額の公的資金による直接的な買い支えだ。簡易保険、公的年金などに株式を買いやすい新単独運用指定金銭信託を設定、2年間で8兆円を投入した」「手ガネを使わずに価格介入しようという裏技が〝事情聴取〟。『なぜ売るのですか』。『だいぶ下がりましたね』。決して強制的な言い回しはせず、いんぎんに問いかけるだけだ。金融機関が言外の意をくんで行動する大人の世界。官僚にとって責任問題が起きる心配はない」「似ているのが、アナリストや証券会社に対する緩やかな〝言論統制〟だ。日本証券業協会の新谷勝は記者会見で、日本たばこ産業(JT)株上場に時期について『東証の一日の売買高が、3億5000万株以上にならなければ……』と慎重論を展開した。この弱気発言に大蔵省の担当官は微妙に反応。『手足を縛る発言はいかがなものですかね』と証券関係者につぶやいた」

1993年12月11日付日本経済新聞朝刊の1面企画「官僚」から引用だ「管理への過信」のサブカットがつけられており、見だしは「未練の株価PKO――裏技頼みは不変、実態から遊離」。登場する企業や人物の固有名詞を除けば、今の中国株式市場で起きていることと二重写しの内容だ。

国内外の投資家が愛想を尽かした「30年前の日本」

ここに書かれている内容のほか、時の大蔵省は人為的な売り抑制や買い支えのほかIPOの社数を公然と制限していた。

1993年3月17日付日経夕刊1面には「証券界、株式公開を積極推進――来月から週2社ペース」という記事が掲載されている。日本証券業協会が「週1社」に制限していたIPO社数を4月から「週2社」に増やすという内容だ。記事によれば「株式の新規公開は91年末からの中断をはさんで昨年(92年)5月に再開したが、株式の供給過剰による相場への影響に配慮、証券界では公開ペースを抑制してきた」という。

立て付けとしては、あくまで証券業界の自主的に判断してIPOを中断したり制限したりしていたことになっているが、この時代の大蔵省と証券業界との関係、日本証券業協会という団体の特性などを考えれば、背後に公的な規制当局の意思があったことは言うまでもない。実際、筆者は時の大蔵省証券局の幹部から「株式市場の需給調整はしています」と聞いたことがある。

これが30年前の日本市場である。国内外のまともな投資家が愛想を尽かすのも無理はない。株価は大きくは下がらなかったものの、相場は凍り付き、自由な売買を通じた価格形成が経済の先行きを指し示すシグナリング機能は麻痺してしまった。

中国は本当に日本の失敗事例を正しく研究したのか

本来であれば日本経済をむしばむ不良債権の問題について株価下落という形で警鐘がなり、当事者が危機感をもって解決に動くべきだった。しかし、あの手この手の株価維持で市場のシグナリング機能を殺してしまった結果、不良債権問題の解決が先送りされてしまった。それがいよいよ隠せなくなり、たまったマグマが一気に噴き出したのが97年11月の日本版金融危機なのである。

小林慶一郎著「日本の経済政策 『失われた30年』をいかに克服するか」は、日本の90年代の人為的な市場介入と問題の隠蔽が「失われた10年」を招いた経路を明快に解説している。その結果として不良債権問題への対処がいっそう難しくなり、多くの優秀な人材が不良債権処理に関わらざるを得なくなった結果、人的資本の形成が進まなかったとも指摘している。

不良債権問題への対応として銀行再編が一気に進み、経営統合に伴い膨大な後ろ向きの労力が費やされたことも記憶に新しい。お金や時間、そして人材。90年代の問題先送りがその後の様々な資源の空費につながったのである。

「中国はバブル崩壊後の日本の経済政策をよく研究しているので、同じ間違いは犯さないはず。従って中国発の金融恐慌は起きないと期待している」。日本の金融関係者からこんな話を聞いたことがある。中国は本当に日本の失敗事例を正しく研究したのか。習近平政権のもとで人事の粛正が相次ぎ、蓄積されたノウハウが散逸してしまった恐れもある。不動産バブルの崩壊が誰の目にも明らかになった今の中国は、まさに1990年代の日本。どちらも世界第2位の経済大国に上りつめた直後のバブル崩壊という意味でも共通点がある

参考文献・参考資料

中国のGDPはすでに日本の4倍なのに、日本はなぜ不服なのか―中国専門家 (msn.com)

「爆買い」復活は? 今年の春節、中国人観光客どこへ行く (msn.com)

春節大移動でEVの脆弱性が露呈―中国メディア (msn.com)

ヘッジファンド、中国恒大から痛い教訓-額面1ドルで1セントに沈む (msn.com)

世界の不動産市場、ダメージ判明へ-中国勢の不良資産売り始まる (msn.com)

中国社会は水面下で発火寸前~河南省・小中一貫校生徒の死、いじめ隠蔽に怒りの群衆が都市封鎖を引き起こす (msn.com)

止まらぬ中国経済の地獄化に「まるで30年前の日本」…暴落する大手銀行株を買い支える”国家隊”の正体と政府の「貸株・空売りの禁止措置」 (msn.com)

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