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政治(金融)講座ⅴ1770「円安と円高を考察」

 為替介入における為替差益が出ているから日銀に6兆円の為替益がでたという論評も見受けられるが、国益から考えたらそのような単純な話ではない。1ドル360円の為替相場を経験した。その当時は、原材料を輸入し、色々な製品を製造して、加工貿易で膨大な対米黒字を計上した。その後急激な円高があり、1ドル70円台になったこともある。そのために、日本から工場を海外に移すなどの産業空洞化現象が起こった。
ここで、改めて為替相場による貿易収支に与える効果を簿記における先入先出法・後入先出法・移動平均法で考えてみたい。外貨準備高1兆2789億ドルは為替相場1ドルいくらで交換したものであるか。移動平均法で極論として360円当時の貿易黒字の積み重ねの結果であるならば、現在160円と仮定すると1ドル200円の為替損を出していることになる。255兆7,800億円の為替含み損があることになる。実際は違うのであろう。このように将来の為替相場による損をヘッジするために為替先物相場も発達してヘッジとして活用されて、急激な変動に対するクッションの役割を担っている。しかし、先を読む思惑が交差する相場の世界を相手にするには日銀の為替介入で出鼻を挫くタイミングが必要である。やる・やると言ってやらない、やらないと思わせてやる。だからやるともいわない、やらないとも言わない。経済指標をみれば自ずと相場の行方が分かる事であるが、相場師は先んずることにより利益をとるのでその様相を覆して意表を突くこともたいせつであろうか。日本経済の体質は、各企業の努力で、強靭さを増している。それは、債権国家であり、貿易における経常収支が黒字であることがそれを表している。徐々にであるが円高傾向に戻るのが本来の日本経済の実力であると考える。なぜ、円安が進行しているかは米国と日本の金利差によるものと思う。日本銀行が金利引き上げを仄めかした時点で円高に急激に方向転換するであろう。
今回はそのような日本の金融状況の報道記事を紹介する。

     皇紀2684年5月9日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

日銀がこれほどまで円安を「無視」する3つの理由 「為替は管轄外」では、結局うまくいかない?

小幡 績 によるストーリー

「管轄外」と言ってしまえばそれまでなのかもしれないが、日銀と為替の関係を考えてみよう(写真:ブルームバーグ)© 東洋経済オンライン


なぜ日本銀行は為替を「無視」するのだろうか。
以下の3つの理由がある。
1つは、古い経済学を信じているから。
もう1つは、古い世界に生きているから。
3つ目は、まともすぎる専門家集団だから。

「期待は正しい」という「古い経済学」が残存?

第1に、1970年代から1980年代に一世を風靡した「合理的期待形成理論」を日銀もほとんどの経済学者もいまだに信じているからだ。
不思議な理論だが、要は、将来予想が自己実現するのだが、ポイントは、すべての人が正しく予想するということは、すべての人の予想が同じであるということで、そして、すべての人がその予想に基づいて実際に行動するわけで、そうすると予想は自己実現する、ということである。
だから、人々の期待さえ動かせば、世界は思いどおりになるという(傲慢な)政策主体の見込みで(実はただの願望だが)、「期待に働きかける」という、壮大な実験、無駄である実験、無駄であるにもかかわらず大きな副作用を残す異次元緩和に賛成し、日銀はその実行を担ってきたのだ。
だが、期待は実現しない。なぜなら人々は、日々の生活においては、期待ではなく、しがらみ(現在の制約条件)によって行動するからだ。将来予想よりも、今、財布にある現金(あるいはスマートフォンにチャージされているマネー残高)、今月の給料、次のクレジットカードの支払い見込み額で決まってくる。
そのため、例えば「政府日銀がインフレにしようとしているらしい、もしかしたらそうなるかも」と思っても、実体経済における実物への消費、投資行動は少しずつ、部分的にしか修正されない。
結果的に期待は実現しない。理論的には、上述の合理的期待形成ではなく、適合的期待形成となるということだ。

実物経済と金融資産市場との間に起きる「深刻な問題」

一方、資産市場においては、将来の期待の変化の修正が行動に大きく影響する。なぜなら、それは資産価値のほとんどが将来のものであり、かつ資産の多くが金融資産であるからだ。つまり、金融資産市場においては、期待は実現する。
例えば、株が上がると思えば、買う。買うから上がる。上がるから買う。ほかの投資家もそう行動するだろうと予想するから、みんなが買って大幅に上がる前に買う。われ先にと買う。だからあっという間に上がる。
むしろ、金融資産市場においては、期待が実現しすぎて、オーバーシュートする(行きすぎる)おそれがある。資産市場においては価格がほぼすべてであり、その価格の変化が瞬時に起こるため、期待が実現すると投資家たちは確証を得ることができる。行動経済学でいうところの確証バイアスが現実に存在することを鑑みれば、この行動はさらに加速するからだ。つまり、期待が実現し、期待が期待を呼ぶため、すぐにバブルになってしまうのだ。

この結果、金融資産市場においては、変化はあっという間に実現する。実物経済(あるいは実体経済)との、変化が実現するスピードの差は、とてつもなく大きくなる。
そして、この差が問題で、経済に決定的な影響をもたらす。
金融市場は、実体経済が変化する前に変化してしまう。そして、この変化のスピードが21世紀になってさらに加速しているのだ。この結果、実体経済が中心で、それをサポートする金融市場という本来のあり方から、金融市場の変化が実体経済を振り回し変動させるという状況が定着してしまっている。これが新しい世界だ。
それにもかかわらず、日銀は(アメリカの中央銀行も)まだ20世紀の経済世界に生きているから、この変化の加速を無視し、実体経済の変化を中心に観察している。この結果、中央銀行が、実体経済の物価だけを注視し、実体経済を調整しようとしても、金融市場を直接にコントロールの対象に入れなくては、うまくいかないことになる。金融市場における最も重要な価格である為替をコントロールの対象外にしていては、経済運営はうまくいかないのだ。これが第2の理由である。
一方、21世紀は格差拡大が加速すると同時に、金融資産市場の規模が実体経済に比して急速に拡大しているという現実がある。

新しい現実を直視しない中央銀行

このような状況において、金融政策における大規模緩和の影響はどこに行くか。もちろん、金融市場である。インフレを起こそうとして金融緩和をすれば、実物経済は動かず、金融資産市場だけがバブルになる。
このバブルにより、富裕層と呼ばれる新成金資産家たちがぜいたく消費を増やすが、それは広がりを持つはずがない。住宅・土地価格は上昇し、庶民は家が買えなくなるし、高額品、レジャー品は金持ちの独占状態になる。
彼らのぜいたく消費に企業もターゲットを絞るが、こうした新富裕層は、新製品、画期的なモノ、流行モノなどに夢中になるから、物価指数は上がらない。なぜなら、物価指数に組み入れられないモノだけが高いからだ。例えばトヨタ自動車のレクサスハイブリッドから、テスラに乗り換えたときに、物価指数は上がらない。
レクサスハイブリッドがテスラに対抗するには、レクサスも全面的にEV(電気自動車)に変更するか、ハイブリッドの値下げあるいはサービスや質の向上で対抗するから、むしろ物価指数は下がる可能性すらある。
資産市場の影響を受ける物価指数は、住宅部分だけだ。だから近年、物価水準の動向は、世界的に住宅価格の影響が大きくなっているのだ。この結果、金融政策の影響はほとんど資産市場に吸収され、実体経済への影響は資産市場経由のものがほとんどであり、二次的なものであるから小さいうえに資産市場の変動には大きく及ばない。そして、景気が過熱しても、物価はそれほど上がらないことになる。
これが新しい現実であるこの新しい世界を中央銀行、エコノミスト、経済学者たちは見ようとしていない。この結果、21世紀はバブルにあふれるようになったのである。
物価と実体経済だけを見ていては、バブルは止められないし、結果的に実体経済運営もうまくいかない。物価だけを見ていると、資産市場がバブルになり、実体経済が過熱し、その後、少しだけ物価が上昇し始めたときになってようやく金融政策を調節し始めるから、バブルの影響は悲惨なことになるのである。
この議論は、実はすでに古くからあるものだ。20世紀においても、いわゆる「BIS(国際決済銀行)ヴュー」と、「FED(アメリカの中央銀行)ヴュー」の対立の話は、この連載でも以前から何度も言及している。
要は、前者は、バブルは事前の芽を摘み取ることは無理でも、膨らみ始めたら早めに退治してしまうことが必要であるという立場だ。一方、後者は、バブルつぶしが実体経済つぶしになってしまうといけないので、バブルが崩壊してから迅速に金融政策で対応するのがよい、という考え方だ。
結局、20世紀の後半は後者が力を持つようになった。そして、それは、1930年代の大恐慌の教訓を「中央銀行の引き締めが早すぎたからだ」と解釈した、経済学者のミルトン・フリードマンや、FRB(連邦準備制度理事会)議長を務めたベン・バーナンキなどの影響によって、より広く行き渡ってしまった。
それが、21世紀に起きた世界金融危機(リーマンショック)で見方が逆転したと思ったのだが、現在の経済学者、中央銀行の関係者は、依然としてFEDヴューの世界に生きているようである。

中央銀行の政策ターゲットはどこに向けられるべきか

この対立は「バブルへの対処法」という狭い観点で見るべきでない。「中央銀行の政策ターゲットは実体経済か金融市場か、どっちなんだ?」という、より大きな問題を提示しているのである。
現在の経済学と中央銀行の人々の立場は、実体経済がターゲットであり、その価格である物価のコントロールに金融政策は専念するというものである。しかし、このスタンスを取っているとしても、最終目的は、物価の安定を通じた「日本経済の健全な発展」である。その最終目的を達成するために必要であれば、実体経済も金融資産市場もどちらも政策のターゲットになるはずである。
また、日銀の役割は、金融政策とともに「金融システムの安定」に貢献することであり、この2つの機能は等しく重要である。そうであれば、金融政策においても、金融市場が当然視野に入るべきである。
ではなぜ、このようにやや柔軟に考えずに、文字どおり、しゃくし定規に物価に専念し、為替相場には関与しないという姿勢をかたくなに守ろうとするのだろうか。それは、冒頭に挙げた第3の理由、すなわち、まじめすぎる専門家集団であるということだ。日銀は専門家集団としてあまりに健全すぎ、同時に謙虚すぎるのだ。
どういうことか。日銀の考えはおそらく以下のようなものだ。
自分たちは専門家として政府から独立した。物価に専念できるように組織の法律も改正された。悲願の独立性を得た。1980年代のバブル時の例に代表されるように、つねづね「物価以外の要素を見ろ」という圧力に屈して、金融政策が歪められてきた。だから今後は、物価以外を見ろという要求には応えてはいけない。
自分たちはあくまで物価の専門家であり、バブルに対処する専門家ではない。実体経済のモデルを前提としており、資産市場、特に株式市場、投資としての不動産市場は二次的な影響しか見ていない。だから、法(のり)を踰(こ)えることはしない。あえて、資産市場、金融市場、そして、たとえ為替市場であっても無視するのが、正しい専門家、政策担当者としてのあり方である。

日銀の姿勢は正しくて謙虚でも、世界は非合理

このような専門家としての政策担当者の姿勢は、確かに正しい。謙虚ですばらしい。しかし、現実の世界はそんなきれいな世界ではないのだ。日銀が自分の専門領域を保守的に謙虚に守って専念しても、外の世界では、投機家、政治家、世界中の欲望にまみれた人々、われわれ普通の個人でさえも、金融市場、資産市場において、欲望にまみれて行動している。世界はひずみにあふれている。非合理性にあふれている
為替市場は、どう考えても妥当な水準にない。円は安すぎる。「それは日米金利差で説明できる」と言うが、金利差だけでここまで円安になるわけではない。
しかも、一定の金利差が続いているときは、それは円安の理由にならない。為替が金融市場の変数として動くのであれば、金利差が続くのであれば、金利の低いほうの通貨は直ちに減価して(円安になって)、円の長期金利が低い分を円の将来の増加(円高)期待で、今後は円高が急速に進むという見通しにならなければ、理論上の裁定は成り立たないからだ。
つまり、現時点の円安、為替の動きは、合理的には決して説明できないのだ。「いやいや、構造的な貿易赤字体質になっている」とも言うかもしれないが、それにしても過度の円安である。投機家が、これらのひずみを生かして、投機的行動によって歪みを増幅させている
世の中がノイズと欲望と悪意にまみれているときに、1つの専門組織だけがきれいな世界にとどまっていいのだろうか。世界の人々が全員善意かつ理論的に正しい行動をとるときには、自分の専門だけに邁進すれば世界はうまくいくという理想の世界に生きていていいのか。「日本経済の健全な発展」という最終的な目的のために、自分ができることはすべて行うべきではないか。
さらに、異常な円安になってしまった最大の原因は、10年以上にわたって続いてきた日銀の異次元緩和にある。この副作用が、貿易赤字やアメリカの金利上昇によるドル高円安の影響を何倍にも増幅して、34年ぶりに1ドル=160円台をつけるまでの円安にしてしまった。
これは、今の「植田日銀」には直接の責任はない。しかし、過去の金融政策では、たかだかインフレ率を0.5%から2%に上げるために、約10年も無理矢理異次元緩和を続けた。
しかも、インフレ率は0.5%から1%弱で安定していたものを、この先2%になるのかならないのか、2%を超えたらさらに上がってしまうのか、確証もないまま、物価の不安定性、物価の予測を大幅に増加させ、経済を不安定にした。結果的にインフレ率は上がったが、それは金融政策と無関係に、世界的なサプライ(供給)サイドの制約要因(および円安)で上がっただけだった。

直接責任はなくても植田日銀はひずみの処理を行うべき

つまり、無駄でなんの効果もなかった異次元緩和の10年が、過度の円安という大きな副作用を残したのである。たとえ現在の日銀自身には責任はなくても、やはりこの壮大なひずみの処理を行うべきであるし、そもそも日銀は日本経済を健全な状態に保つ責任があるわけだから、その責任を果たすために、金融政策の理想像からの多少のひずみは甘受すべきではないのか。
もちろん、この10年の金融政策の失敗、異常な副作用の放置の真因は、アベノミクスにある。アベノミクスにおけるキャッチコピーである「デフレ脱却」「日本経済停滞のすべての原因はデフレである」という誤った(政治的には成功した)経済政策戦略を政治が採ったせいで、日本の経済政策はおかしくなってしまった。
本来、物価と為替と雇用と長期的視野と財政などのバランスを総合的に取って経済政策全体を運営すべきである日本国の司令塔が、すべてを物価のせいにし、物価さえ上がればすべて解決すると問題設定してしまった。そのため、物価の司令塔である日銀がインフレ率2%の達成に向けて、どんなに副作用が大きくなっても、その達成を最優先させたのは、専門家としての政策担当者としては、自然であったともいえる。しかし、今回の議論では、それは置いておくとしよう。
一方、確かに専門家として与えられた部分的な役割を超えて、日本全体、経済全体について考えることによってひずみが生じるケースもある。典型的な例が、財務省がかつて大蔵省と呼ばれていた当時のことだ。
彼らは、とにかく日本をよくすること、それが自分たちの責任だという使命感に燃えていた。だから、私に言わせれば、省益や天下りなどを行動のインセンティブにすることは皆無だった。縦割り行政などという言葉も無縁だった。権限争いなどそもそもない。
「とにかく自分たちこそが、日本を救えるのだ」という使命感に燃えすぎており、日本全体という大きな話をする際には、全部「自分たちこそが正しい」という考えを持っており、かつそれを「自分たちが実現する義務がある」という責任感に燃えすぎていた。
つまり、狭い専門性に引きこもるというプロの官僚としての弊害はなかった代わりに、「日本の将来は自分たちが仕切るべきだ」というエリートの傲慢性にあふれていたのだ。「財政健全化至上主義に陥っている」などというのはウソで、「将来財政のことを考える人が皆無だから、その役割を果たす使命感があるのは自分たちだけだから、自分たちがなんとかしなければいけない」と思っていただけなのだ。
財政に限らず、すべての日本の問題について痛みを伴う改革の必要性を主張し、ポピュリズムと戦う日本最後の良心を持っているのはいまや自分たちだけだから、世の中のすべてのポピュリズムと戦わなければいけない。だから、すべての政策決定において、自分たちのアンチポピュリズムの主張を通そうとしたのだ。
これが大蔵官僚の欠点であり、傲慢さであった。なぜなら、人々がそれを望んでいるとは限らず、またその意思決定を委託されているわけでもなかったから、エリートを自認する人々の独りよがりにすぎなかったからだ。責任感があるのはよいが、結局、責任も取れないし、責任を取ってほしいと誰にも望まれていないから、出しゃばりすぎなのだ。
いまや大蔵省も財務省となり、このような雰囲気は薄まっているが、いずれにせよ、狭い専門性に逃げ込む欠点と、全体を考えすぎてでしゃばりすぎる傲慢さと、トレードオフ的な組織の欠点が存在することも事実だ。
では、どうしたらよいのか。
あまりにつまらない結論だが、現実的に、その中間でバランスを取るしかない。そして、すべての組織、すべての個々人がその立場になり、自分の専門性、個々の役割をまっとうしながら全体のことも考え、自分の領域に励みながら、それが全体に悪影響を及ぼさないか、全体の役に立っているか、つねに考えながら行動する。そういう当たり前のことを全員がやるしかない。
今回は、つまらないオチになってしまったが、現実における解決策とはそんなものだろう。

日銀・植田総裁、円安「物価に影響及ぼしやすくなった」 講演で言及

朝日新聞社 によるストーリー

読売国際経済懇話会で講演した植田和男・日銀総裁
=2024年5月8日、東京都千代田区© 朝日新聞社

 日本銀行の植田和男総裁は8日の講演で、円安について「過去と比べると、物価に影響を及ぼしやすくなっている面は、意識しておく必要がある」と述べた為替の変動を「経済・物価に影響を及ぼす重要な要因」だと指摘し、動向を注視していく考えを示した。

 植田氏は、賃上げや商品などの値上げに企業が積極的になってきていると分析。そこに円安の影響が加われば、想定以上に物価が上ぶれる可能性に言及した。「仮に物価見通しが上ぶれるリスクが大きくなった場合には、金利を早めに調整していくことが適当になる」と、追加利上げに前向きな姿勢を示した。

 日銀が掲げる物価上昇率2%の目標については、「見通しに沿って(可能性が)高まっていけば、緩和度合いを調整していくことになる」と語った。


円安、企業に「追い風」ばかりでない 商社「ボディーブローのよう」

2024年5月7日 
高橋豪 田中奏子 明楽麻子 福岡龍一郎 東谷晃平

 記録的な円安相場が続く事態に、企業経営者から懸念の声が上がっている。輸出が強みの日本企業にとって円安は従来「追い風」と考えられてきた。だが、産業の変化もあって、そうも言い切れなくなっている。行き過ぎた円安が消費を冷やすとの心配も出ている。

 海外で利益の7割を稼ぐ三菱商事。2024年3月期の純利益は、最高益だった前年に次ぐ9640億円だった。豪州の原料炭事業の不振もあったが、円安が利益を700億円押し上げた

 だが、2日の決算会見で中西勝也社長は円安進行は「よろしくない」と言い切った。海外での企業買収が多い同社では、「円安はボディーブローのようにきく。買収額が上がり、投資を慎重にさせてしまう。為替は安定していただかないと」と述べた。

円安で含み益が6兆円?…でも岸田政権は国民還元を否定 「外為特会」めぐり立民・江田憲司氏が提案

 円安ドル高が急激に進んだことを巡り、立憲民主党の江田憲司氏は8日の衆院財務金融委員会で、外国為替資金特別会計(外為特会)に円換算で利益が出ているとして、物価高に苦しむ国民に還元すべきだと政府に求めた。

◆「円安による物価上昇に苦しむ国民に還元すべきだ」

立憲民主党の江田憲司氏=4月、千葉一成撮影© 東京新聞 提供

 江田氏は、外為特会で保有する米国債が満期になると、購入時に比べて円安が進んだ結果、償還金に年間約6兆円の評価益が生じていると指摘。「円安による物価上昇に苦しむ国民に還元すべきだ」と迫った。

 これに対して、鈴木俊一財務相は、「満期になった(外国)証券を少しずつ円に転換する場合でも、外貨売り・円買いの為替介入そのものになる」と答弁。物価高対策のための介入を否定した。

 政府は外為特会で、為替介入に使う外貨資産を管理している。3月末の外貨準備高は、米国債など1兆2906億ドル(約200兆円)に上る。急激な円安進行を防ぐための介入では、ドル資産を為替市場で売却し円を買う。

 外為特会の評価益を経済対策などに使う案は、国民民主党や自民党の一部でも訴えていた。(市川千晴)

円安加速なら物価高で家計さらに苦しく… 一時1ドル160円台に急落、乱高下 新NISAも一因

2024年4月30日 06時00分

 29日の外国為替市場は、約34年ぶりに一時1ドル=160円台まで円安が進んだ。その後154円台に戻すなど乱高下する場面があり、政府による円買いドル売りの為替介入が行われたとの見方が金融市場で広がった。だが、円急落の背景には好調な米国経済や日本の低金利があり、長期の物価高に苦しむ家計への懸念は簡単に払拭されそうにない。

◆背景に日米経済格差


アメリカドル紙幣

 円安が加速すれば、輸入物価の上昇を通じて実質賃金の低迷が長引くおそれが生じる。今春闘での賃上げの流れを吹き飛ばしかねず、家計への打撃は深まるばかりだ。しかし今の円安にはさまざまな要因が絡んでおり、政府が為替介入をしたとしても、その場しのぎになりかねない。

 最大の要因は米国経済の底堅さだ。連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを行うとの見方は遠のき、今後も金利の高いドルを買う動きが収まる気配はない。かたや、日銀は26日の金融政策決定会合で金融緩和の維持を決定。市場では日銀が円安を容認しているとも受け止められ、同日の植田和男総裁の会見中から円安が加速していた。

◆「1ドル=120~130円台が良い水準」

 今年から開始された新少額投資非課税制度(NISA)で、米国株連動の投資信託が多く買われていることもドル高円安の一因とされる。三菱UFJ信託銀行資金為替部の岡田佑介氏は「円高になっても米国投資でドルを買おうとする人が多い」とし、ドル高に伴う円安が進みやすい構図を指摘する。

 円安の影響と今後について、SMBC日興証券の牧野潤一氏は「円安になれば、日本の安い半導体がよく売れるようになるが、家計は苦しくなる。そのバランスを考えると、1ドル=120~130円台が良い水準だろう」と話す。(白山泉)

円安の加速を止められない日銀のジレンマ 利上げ急げば住宅ローンの負担が重く… 1ドル=156円を突破

2024年4月27日 06時00分

 円安が一段と進む中、日銀は追加利上げを見送った。超円安の要因は、米国でインフレが長く続いていることに加え、日銀の金融緩和がしばらく続くとの見方から、日米の金利差が縮まらないことだ。一方、日銀が円安の進行を阻止しようとして利上げを急いでも、住宅ローンのある家計や中小企業への負担は増加しかねない。日銀はジレンマを抱えている。

日銀の植田総裁(資料写真)

 日銀が政策維持を公表すると、為替レートは1ドル=156円を突破した。3カ月に1度公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」が今後の政策運営について「当面、緩和的な金融環境が継続する」と述べたことで、追加利上げの観測が弱まったためだ。

 会合後の記者会見で植田和男総裁は円安について「インフレ率への影響は通常は一時的にとどまる」と述べた。しかし、鈴木俊一財務相が「今はマイナス面の懸念を持っている」と発言するなど円安に対する不安は強まっている

◆中小企業経営者「115~120円台がちょうどいい」

 都内の製造業の中小企業経営者は「115~120円台がちょうどいい海外からの仕入れ価格が大幅に上がっており、その分の転嫁を取引先に認めてもらえるかが重要」と話す。東京商工リサーチの松永伸也情報部長は「為替の変動が大きいため、仕入れ価格の転嫁ができない輸入卸売業者もある」と話す。

 家計への影響も懸念される。今年2月の実質賃金は前年同月比で1.8%減。電気・ガス料金の補助金が終わり、再エネ賦課金の負担も増える中、超円安は家計をさらに圧迫する。

しかし、利上げも容易ではない。展望リポートでは、「中小企業を中心に賃上げの価格転嫁は容易でないとの声も多く聞かれる」と2%の物価安定に向けたリスクに言及。住宅の高騰で可処分所得に占める住宅ローンの比率も高まっており、利上げをすれば返済負担が増える可能性がある。

 一方、円安の背景には「連邦準備制度理事会(FRB)が利下げできないくらい米国景気が強い」(SMBC日興証券の牧野潤一氏)ことがある。仮に日銀が利上げをしてもドル高円安の基調は変わらないとの見方もある。(白山泉)

先入先出法・後入先出法・移動平均法とはこんな感じだ

2015年1月1日 最終更新日時 :2019年1月28日

在庫管理の手法で、「先入先出法」「後入先出法」「移動平均法」という3種類の手法がある。

原価が変わる!

例えば、こんな感じに仕入れをしたとしましょう。

仕入数量単価合計4月1日10個110円1100円4月14日15個130円1950円4月20日25個100円2500円

これに対して、4月末に10個の在庫が売れたとしたら、その原価はいくらになるか?という話です。この場合の原価は、考え方によって変化するんです。

先入先出法の場合

先入先出法の場合、先に在庫に入ったものから先に出します。つまり、古いものから出すという考え方です。まあ、なんというかフツーの考え方ですよね。
4月末に10個の在庫が売れたとすると、上記の表の4月1日に仕入れた分を出して売った、とみなします。なので、原価は単価110円が10個で1100円です。

後入先出法の場合

後入先出法の場合、後から在庫に入ったものを先に出します。つまり、新しいものから出すという考え方です。ちょっと変な感じがしますよね。そう感じた方の感覚は正しいです。普通は使いません。
4月末に10個の在庫が売れたとすると、上記の表の4月20日に仕入れた分を出して売った、とみなします。なので、原価は単価100円が10個で1000円です。

後入先出法が活躍するのは、例えば急激なインフレが起こっている時などです。急激なインフレが起こるとモノの値段がどんどん上がっていくので、先に在庫に入ったものよりも後に在庫に入ったものの方が値段が高くなります。その状況下で、フツーにさっき説明した先入先出法で原価を考えてしまうと、インフレ分の利益も乗っかってものすごく儲かってるように見えちゃうんですね。なので、それを避けるために後入先出法を使うと良いとされています。まあ、いずれにしろ通常はあまり使わない考え方です。

移動平均法

移動平均法の場合、仕入れるたびに平均単価を計算し直します。さっきの表に、移動平均単価を書き加えてみましょう。

仕入数量単価合計在庫数量在庫残高平均単価4月1日10個110円1100円10個1100円110円4月14日15個130円1950円25個3050円122円4月20日25個100円2500円50個5550円111円

この表の右端が移動平均単価です。それまでに仕入れて残っている在庫全ての仕入額と在庫数を把握して、仕入れるたびに平均単価を出し直します。これが一番公平に思えますね。
4月末に10個の在庫が売れたとすると、上記の表の4月20日の行の右端の単価を使って原価を割り出します。単価は109円なので、原価は10個で1090円です。

ただ、この移動平均法はなかなか実運用は難しいです。というのは、常に在庫数と仕入額を把握しておいて、仕入れるたびに移動平均単価を算出しなければならないからです。大抵の会社は毎日のように仕入れを行ってますよね。ということはこの移動平均単価の算出を毎日やらなきゃならないわけですよ。そうすると、いざ売るときにまだ移動平均単価を計算し終わってなくて原価がわからないってシチュエーションに陥ります。移動平均単価を算出し続けるには、かなり大掛かりなシステム化と、強い社員教育が必要になります。

4月末の外貨準備高、前月末比116億ドル減の1兆2789億ドル…財務省

読売新聞 によるストーリー

財務省© 読売新聞

 財務省が9日発表した4月末の外貨準備高は、1兆2789億ドルで、前月末に比べて116億ドル減った。

東京円、20銭程度安の1ドル=155円台半ば…米長期金利上昇で日米金利差の開きを意識

読売新聞 によるストーリー

日本銀行本店© 読売新聞

 9日の東京外国為替市場の円相場は、前日(午後5時)と比べ20銭程度円安・ドル高の1ドル=155円台半ばで取引されている。

 前日に米国の長期金利が上昇し、日米金利差の開きを意識した円売り・ドル買いが優勢になっている。

 日本銀行の植田和男総裁は8日夕の講演で、物価見通しが日銀の想定より上振れするリスクが高まった場合、「金利をより早めに調整していくことが適当だ」と述べた。追加利上げを念頭にした発言だが、相場への影響は限定的だった。対ユーロでは、30銭程度円安・ユーロ高の1ユーロ=167円台前半で取引されている。

参考文献・参考資料

日銀がこれほどまで円安を「無視」する3つの理由 「為替は管轄外」では、結局うまくいかない? (msn.com)

日銀・植田総裁、円安「物価に影響及ぼしやすくなった」 講演で言及 (msn.com)

円安、企業に「追い風」ばかりでない 商社「ボディーブローのよう」:朝日新聞デジタル (asahi.com)

円安で含み益が6兆円?…でも岸田政権は国民還元を否定 「外為特会」めぐり立民・江田憲司氏が提案 (msn.com)

円安加速なら物価高で家計さらに苦しく… 一時1ドル160円台に急落、乱高下 新NISAも一因:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

円安の加速を止められない日銀のジレンマ 利上げ急げば住宅ローンの負担が重く… 1ドル=156円を突破:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

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先入先出法・後入先出法・移動平均法とはこんな感じだ | 会計SEのメモ (kanrikaikei-sys.com)

先入先出法とは?意味や計算方法をわかりやすく|freee税理士検索 (advisors-freee.jp)

4月末の外貨準備高、前月末比116億ドル減の1兆2789億ドル…財務省 (msn.com)

外貨準備高、434億ドル減…政府・日銀の為替介入を反映 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

東京円、20銭程度安の1ドル=155円台半ば…米長期金利上昇で日米金利差の開きを意識 (msn.com)

外国為替資金特別会計 - Wikipedia

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