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岡大流伝説② -VS桃太郎-

~平成元年秋 倉敷杯会場にて~
その年、国体軽量級で優勝し、地元誌上で「日本一の桃太郎」と称賛された選手が凱旋出場。オレは岡大流を名乗って1回戦を勝ち抜き、桃太郎はシードで初戦という2回戦での勝負だったが、結果は大方の予想通り、桃太郎の圧勝。すごすごとギャラリーへ引き上げるオレだった。

オレ:いやあ、相手の方が一枚上でしたッス。
先輩:5,6枚は上に見えたが‥。
オレ:きっつう。でも、まあ、国体優勝選手相手に、稽古もろくにしていないジブンが、最初の一本を取ったんだから、良しとしてくださいよ。
先輩:確かに。相手は、日本一の桃太郎だからな。
オレ:結局、最初の一本で桃太郎の目を覚まさしちまったということすかねえ。
先輩:どうもそうみたいだな。でも、こうも考えられるぞ。「試合」というのは、その前に「ころ」がつく。つまり、「殺し合い」だ。そんな言葉を聞いたことがあるだろう。その説で行けば、桃太郎は最初の一本で、やられているな。空手は「一撃必殺」というしな。
オレ:うーん。あんまり慰めにはなってない気が…。どっちかと言えば、「負け犬の遠吠え」?
先輩:それはそうだ。負けた方がいくら御託を並べても、それは言い訳しかならなくて、スポーツマンシップにももとる。男は潔さが一番。花は桜木、男は岩城。
オレ:先輩、それ、なんか違いません?「ドカベン」じゃないすか?
先輩:まあまあ。落ち込んでさえいなければ、それでいいさ。
オレ:押忍。「猿も木から落ちる」って、ことッスよね。その隙につけこんだジブンも、ちょっとは、見どころがあると。そう受け止めときます。

その日、現役を退いたばかりの4回生が、ベスト8あたりだろうか、この日本一の桃太郎と激突。どちらが勝ってもおかしくないとろまで、桃太郎を追い詰めたが、惜しくも敗れた。これが岡大流だ。岡大流は究極のところで我流なのだ。だから、強い。そして、だから、もろい。

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