つじもとひでお

ビール会社に5年間務めたあと、キリスト教主義の高校で英語を教えました。部活動ではジャズ…

つじもとひでお

ビール会社に5年間務めたあと、キリスト教主義の高校で英語を教えました。部活動ではジャズバンドを指導していました。今は大学の学生寮の寮監をしています。みなさんがちょっとだけ幸せになれるような、本や映画の紹介、イラスト、エッセイ、小説、漫画を投稿してゆきたいと思います。

マガジン

  • イラストエッセイ 私家版パンセ

    ぼくは30年間の教師生活を送りました。その30年間、子供たちが元気になれるような言葉はないかなと考え続けて来ました。  そんな風にして考えた小さな思考の断片をご紹介します。  これらの言葉がほんの少しでも誰かの力になれたら幸いです。  週3回程度投稿いたします。

  • イラストエッセイ「読まずに死ねない本」

    ドストエフスキーとトルストイ、カフカ、ゲーテ、夏目漱石は全作読み、日本文学全集も通読しました。  学生時代は古代ギリシャ文学を専攻し、今まで文学を中心に何千冊もの本を読んできました。 その中で、何度も読み返したおすすめの本をご紹介したいと思います。

  • イラストエッセイ 北国の春

    北国の春に咲く山野草をご紹介します。

  • イラストエッセイ ぼくが住んでいる町 新潟県胎内市

    ぼくが住んでいる新潟県胎内市とその周辺の様子を、絵とイラストでご紹介します。

最近の記事

20240614 イラストエッセイ「私家版パンセ」0016 「人間は種(たね)である」 教育論

 人間は種です。  彼がリンゴの種ならば、正しい土壌に植えられ、水を与えられ、世話をされた時、たわわにリンゴの実をならせるでしょう。  しかし決して梨の実をならすことは出来ません。  もし正しく世話をされないならば、彼は実をならせるどころか、芽を出すことさえできないでしょう。  明日    はきだめに えんど豆咲き   泥池から 蓮の花が育つ   人皆に 美しき種子(たね)あり   明日何が咲くか  安積得也  この詩を刻んだ石碑が、ぼくが30年間務めたキリスト教主義の

    • 20240613 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 008 河合隼雄「子どもの宇宙」 心理学入門

       水木しげるセンセイの「ねぼけ人生」と並んで、ぼくが時々、若い人に贈る本が、河合隼雄先生の「子どもの宇宙」(岩波新書)です。  「ねぼけ人生」が人生の教科書だとすると、「子供の宇宙」は教師の教科書。あるいは、心理学の優れた入門書です。  河合隼雄先生は、ユング心理学者です。  その深い人間理解は、現代の老賢者と呼ぶにふさわしい。しかも分かりやすくて面白い。講演も音源が残っていますが、落語みたいに面白いのに深い。  心理学というのは、簡単に言うと無意識の研究です。  わたした

      • 20240612 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0015 「仕える指導者」

         前回、ピラミッド型社会(権威主義社会)と民主的な社会についてお話ししました。現在、この二つの陣営が世界の覇権をかけて争っている、そういう風に言われています。  ぼく自身は民主主義にも多くの欠点があることを認めつつ、まあ、これで行くしかしかたがないかな、という立場です。  さて今日は、リーダーのお話。  いかに民主的な社会制度を持っていても、それを運用するには優れたリーダーが必要です。みんなで話し合って決める、というのは聞こえは良いのですけれども、実際問題、リーダーとなるべ

        • 20240611 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0014 ピラミッド型の社会と民主的共同体

           権威主義国家と民主国家の対立、ということが昨今、よく言われるようになりました。  けれどもこれは新しいことではなく、この二つの社会の類型は古代からありました。  権威主義国家は、ピラミッド型社会と呼ぶこともできます。これは、より強いものがより弱いものを支配することを繰り返して、最終的に一人の支配者の元に社会秩序が安定するというものです。  古代から近代まで、ずっとこの型の社会が主流でした。一見すると、下の者が辛くていやだなーと思うかも知れませんが、下の人はより下の人を支配す

        20240614 イラストエッセイ「私家版パンセ」0016 「人間は種(たね)である」 教育論

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        • イラストエッセイ 私家版パンセ
          16本
        • イラストエッセイ「読まずに死ねない本」
          8本
        • イラストエッセイ 北国の春
          11本
        • イラストエッセイ ぼくが住んでいる町 新潟県胎内市
          10本

        記事

          20240610 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 007 「ねぼけ人生」水木しげる 伝記文学の最高傑作

           妖怪漫画で有名な水木しげるセンセイの自伝です。  ぼくは若い人に何かプレゼントするというような時、この本を選ぶことが多いです。人生の教科書と言っても過言ではありません。  のびのび育った子供時代。  規格外のマイペース少年だった学校時代。  それゆえ、毎日ビンタをくらった軍隊時代。  そして、ラバウルでの生死をさまよう激烈な体験。  終戦後の混乱の中で出会った奇妙なヒトビト。  売れない紙芝居、貸本漫画を描く、餓死寸前の日々。  人気漫画家になってからの、奇妙なアシスタント

          20240610 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 007 「ねぼけ人生」水木しげる 伝記文学の最高傑作

          20240607 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0013 「何かを得ればそれと同じ価値のものを失う」 人生は等価交換

           還暦過ぎまで生きてきて、人生は等価交換だって思います。  何かを得ると、それと同じ価値のものを失うのです。  例えば、お酒を飲めば楽しい代わりに健康が損なわれます。  スマホは便利ですけれど、その便利さが大きければ大きいほど、人間として貴重なもの、たとえば時間などが失われます。  坊主丸儲け、みたいなことってないんですよね。  だから何かを得るときには、同時に何が失われるかを考えて手に入れるようにしなければ。もちろん、それはとっても難しいのですけれど。  伴侶を得れば独身

          20240607 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0013 「何かを得ればそれと同じ価値のものを失う」 人生は等価交換

          20240606 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0012 「刈り入れの日」

           人は日々種を撒いています。良い種のこともあるし、悪い種のこともあります。  やがて刈り入れの日が来ます。  今日撒いた種を十年後に刈り取ることになるかも知れないし、明日刈り取ることになるかも知れません。  いずれにせよ、必ず刈り入れの日は来ます。  けれども、今日撒かなかった種を刈り取る日は永遠に来ることはないのです。 私家版パンセとは  ぼくは5年間のサラリーマン生活と、30年間の教師生活を送りました。  その30年間、子供たちが元気になれるような言葉はないかなと考え

          20240606 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0012 「刈り入れの日」

          20240605 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 006 ホフマン「黄金の壺」 

           ホフマンは、ドイツ後期ロマン主義の作家で、近代幻想文学の創始者とも言われています。  もともと神話や伝説は超現実的、神秘的な物語を扱いますけれど、それを現代社会を背景にして描いたものが幻想文学と言えると思います。  ゲーテは古典主義に分類されますが、ぼくはゲーテの中にもロマン主義的なものを感じます。ていうか、ドイツ文学の根底にはものすごくロマン主義があるように思います。ホフマンはゲーテより三十歳若く、若い時には愛読していたそうです。もともとドイツにはロマン主義的、幻想文学の

          20240605 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 006 ホフマン「黄金の壺」 

          20240604 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0011 「人間になる」 旧約聖書にならって 教育論

           二本足で歩行することによって脳に刺激が加えられ、人間が誕生したと言われます。  だから人になるためには足を使って歩かなければなりません。  ちょうどアブラハムが父祖の地を後にして約束の土地へ歩き始めたように。  手を使うことで人間は道具を使用するようになり、文明を築きました。  だから人は手を使わなければなりません。  ちょうどダヴィデが投石機を使って巨人ゴリアテを倒したように。  人間は考える葦であるとパスカルは言います。  だから我々は考えなければなりません。  ち

          20240604 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0011 「人間になる」 旧約聖書にならって 教育論

          20240603 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 005 カフカ「変身」「審判」

           ぼくはいわゆる幻想文学、ファンタジー小説が好きです。  中でも一番好きなのが、カフカ。  全集を何度も繰り返して読むほど好きなのです。  今日はそのカフカの死後ちょうど100年になります。  「ある朝、グレゴール・ザムザが不安な夢から目を覚ましたところ、ベッドの中で自分が途方もない虫に変わっているのに気がついた。」 池内紀訳  「変身」の冒頭。    「誰かがそしったにちがいない。悪事をはたらいた覚えがないのに、ある朝、ヨーゼフ・Kは逮捕された。」 同  これは「審判

          20240603 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 005 カフカ「変身」「審判」

          20240531 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 004 村上春樹「羊をめぐる冒険」

            村上春樹さんの40年来のファンです。  最初に読んだのがこの「羊をめぐる冒険」。先輩にすすめられて読んだのが、大学1年生の時でした。  おそらく眠らずに一気に読んだと思います。それ以来、10回は読み返したかな。  もともと、カフカとかホフマンなんかが好きで、ああいう幻想的なものが好きだったのですけれど、日本にはそういう伝統があまりないんですよね。日常の隙間から、異世界に滑り込んでしまうというような。エンターテイメントではたくさんあるのですが。  それ以来、村上春樹さんの作

          20240531 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 004 村上春樹「羊をめぐる冒険」

          20240530 イラストエッセイ「私家版パンセ」0010 人間は社会的動物

           人は群れて生きる動物です。このことは、強調しすぎてしすぎることはないと思います。  「俺は一人で生きていく」という風に考える時もありますけれど、それは技術的に不可能なんですね。  まず、動物の中で人間だけが一人では出産できません。必ず手助けする人が必要。  次に、言語を習得しなければ人間になれません。そして、言語を習得する段階で、すでに社会の価値観が入り込んできます。つまり、人間は母親の乳を吸って生きると同時に、社会の価値観を呼吸して成長します。  虎には牙があり、熊には巨

          20240530 イラストエッセイ「私家版パンセ」0010 人間は社会的動物

          20240529 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 カエサル「ガリア戦記」003

           言うまでもなくカエサルは、ローマの武人ですね。現在のフランス、ガリアを征服し、帝国を共和制から帝政へと変化させました。  その名前は皇帝の一般名詞にもなりましたし、12の月の名前の7月 July は、ユリウス・カエサルの名前からとられたもの。(ちなみに、8月のAugust はカエサルの養子のアウグストゥスからとられたものです。この二人が無理やり月の名前に入ったために、セプテンバーのセプトはギリシャ語で7という意味なのに9月に、オクトーバーのオクトはオクトバスで知られるように

          20240529 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 カエサル「ガリア戦記」003

          20240528 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0009 母性と父性(教育論)

           ジェンダー論的に議論があることは前提として、また、性がグラデーションであることも前提としつつ、人が育つためには父性と母性の両方が必要だと思います。  学校の先生を30年やってきて、生徒に対して「厳しく鍛える」派と、「優しく受容する」派の対立みたいなものがよく起こりました。  生徒を育てるために、厳しさが必要なのかやさしさが必要なのか?これは、先生の持ち味によっておおむねこの二派に分かれるんです。  でもぼくの中での正解は、両方必要。  時に厳しさが必要であり、時にはやさしさ

          20240528 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0009 母性と父性(教育論)

          20240527 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 002 森鴎外「ヰタ・セクスアリス」少年愛について

           ぼくが一番好きな小説は夏目漱石の「坊ちゃん」。  漱石の文体の魅力は漢文の素養を生かした語彙力と、江戸文学由来のユーモアと語り口の調子の良さ。そして短歌の研究から会得した写生の力だと思います。  しかし文体の魅力と言えば、ぼくは森鴎外の方がむしろ好きかも知れません。  鴎外の魅力は、抑制された、簡潔にして素朴な文体。たくまざるユーモア。そしてあくまでも冷静な客観的な視点。  その魅力を余すところなく堪能でき、しかも内容が面白いのが、「ヰタ・セクスアリス」です。これはラテン語

          20240527 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 002 森鴎外「ヰタ・セクスアリス」少年愛について

          20240525 イラストエッセイ「私家版パンセ」0008 自立と依存

           昔、同志社大学の樋口和彦教授の話をうかがったことがあります。  樋口先生は河合隼雄先生と並ぶ、ユング心理学者でした。  こんなお話です。  日本ではかつて、腕白坊主を叱る時、お母さんがタンスの中から「へその緒」出してきて叱ったものだ。  「お前は、わたしから生まれてきたのだ。そんなわたしを泣かせて良いのか?」という訳である。  一方、西洋では、子供が初めて自分の足で立った時にはいていた靴を大切に保管していて、子供が道に迷った時、それを見せる。  「お前は自分の足で立つこと

          20240525 イラストエッセイ「私家版パンセ」0008 自立と依存