楽曲について

I Feel Lucky / written by Mary Chapin Carpenter, Don Schlitz
日本ではあまり知られていませんが、本国アメリカではグラミー賞を5度も獲得している女性シンガーソングライター、メアリー・チェイピン・カーペンター。キャリアで最も高セールスとなっている1992年のアルバム「Come On Come On」に収録され、シングルとしてもビルボードのカントリーチャートで4位を記録しています。
サウンドよりも歌詞にフォーカスする指向が強くもともとフォーク音楽シーンで活動していた彼女ですが、デビュー当時の'80年代後半においてメインストリームの音楽シーンでは陽の目を見ず戦略を変更、心機一転カントリー市場に売り込むことで大きな成功を収めました。その戦略の一環か、ケニー・ロジャースの「The Gambler」で知られるカントリー界の売れっ子ソングライター、ドン・シュリッツと何曲か共作しており、その中の一つがこの曲です。

曲を聴く前にイメージしたいこと

占いでは凶兆しか出なかった女性が、高額宝くじが当たってしまって超ラッキー!たちまち大金持ちになり、ついでにドワイト・ヨーカムとライル・ラヴェットにナンパされてしまう、というなんとも夢のあるお話が、軽快なブルース・ロックと共に展開します。
最後のコーラス直前の1ラインに言いたいことは集約されています。つまり、占いなんて当てにならない!コツコツ勤勉が美徳で一攫千金なんてファンタジーと思っている多くの日本人は、こんなふうにもっとあからさまに幸運を求めても良いんじゃないかと、訳しながら思いました。ギャンブルで破滅するのはもってのほかですが、占いに頼るよりよっぽど合理的ですし、何より人生が楽しくなるかも。
もっとも、作者自身はこの曲を含む一連のヒット曲で真のアメリカン・ドリームを手に入れたわけですが……それではどうぞ!

歌詞と対訳

Well, I woke up this morning, stumbled out of my RACK
目が覚めて ラックに蹴つまずきながら起きた朝
I opened up the paper to the page in the BACK
新聞をひらいて 最後のページに目を通す
It only took a minute for my finger to FIND
指でなぞっていると すぐに見つけたわ
My daily dose of destiny under my SIGN
私の一生分のイベントが 一日でいっぺんに来た感じ
My eyes just about popped out of my HEAD
勢いで 目玉が飛び出るかと思ったわよ
It said, "The stars are stacked against you girl, get back in BED"
占い欄は「今日の運勢は凶 ベッドでおとなしくすべし」

I feel lucky, I feel lucky, yeah
私はツイてる 私はツイてるわ
No Professor Doom going to stand in my WAY
ドゥーム教授でも 私の強運は変えられない
Mmm, I feel lucky TODAY
うん、今日の私はツイてるわ

Well, I strolled down to the corner, gave my numbers to the CLERK
角を曲がったところの引換所で 店員に当選番号を告げた
The pot's eleven million so I called in sick to WORK
大金を手にしたから 仕事は仮病を使ってお休み
I bought a pack of Camels, a burrito, and a BARQ'S
タバコとブリトー そしてビールを買って
Crossed against the light, made a beeline for the PARK
信号なんて無視して 公園まで一直線
The sky began to thunder, wind began to MOAN
雷が落ち始めて 風がうめく空模様
I heard a voice above me saying, "Girl, you better get back HOME"
家に帰りなさい という天の声が聞こえたわ

But I feel lucky, I feel lucky, yeah
でも私はツイてる 私はツイてるの
No tropical depression gonna steal my sun AWAY
熱帯低気圧でも 私のお天道様は隠せない
Mmm, I feel lucky TODAY
うん、今日の私はツイてるわ

Now eleven million later I was sitting at the BAR
大金を手にして バーで飲んでいた私は
I'd bought the house a double and the waitress a new CAR
2倍大きい家を買って ウェイトレスにも新車をプレゼント
Dwight Yoakam's in the corner trying to catch my EYE
角の席から ドワイト・ヨーカムが目配せしてくるし
Lyle Lovett's right beside me with his hand upon my THIGH
ライル・ラヴェットは 隣に座って擦り寄ってくる
The moral of this story, it's simple but it's TRUE
このお話の教訓は シンプルだけど真実よ
Hey the stars might lie but the numbers never DO
占いなんて嘘ばかり でも当選番号は裏切らないわ

I feel lucky, I feel lucky, yeah
私はツイてる 私はツイてるわ
Hey Dwight, hey Lyle, boys, you don't have to FIGHT
ねえドワイト、ライル 喧嘩はやめて
Hot dog, I'm feeling lucky TONIGHT
ほら! 今夜の私は最高にツイてるわ
I feel lucky, I feel lucky, yeah
私はツイてる 私はツイてるわ
Think I'll flip a coin, I'm a winner either WAY
コイントスで白黒つけましょ どっちにしても私は勝者
Mmm, I feel lucky TODAY
うん、今日の私はツイてるわ

  • to find my daily dose of destiny under my sign……「私の星の元にある運命の1日の許容量を見つける」を文脈に沿って意訳しました。日本人ならさしずめ「盆と正月がいっぺんに来た」といったところでしょうか(笑)。

  • Professor Doom……たぶんアメコミのキャラクターDoctor Doomのことでしょうかね。doomという言葉自体に悲運・宿命といった意味があるので、Luckyの対義語のように扱っているのでしょう。

  • eleven millionということは1100万ドル?アメリカの宝くじってそんなとんでもない額なんですか。まあeleventy millionが途方もなく大きな数という意味のややふざけた表現とのことなので、具体的な額として訳しませんでした。でもウェイトレスに車をポンと買い与えるくらいは当たったんでしょうから、うらやましい限りです。

  • ドワイト・ヨーカムもライル・ラヴェットも、メアリーとほぼ同時期からカントリー界で活躍しはじめたアーティストで歳もほぼ同世代。同じ釜の飯を食う仲間といった感じなのかも。他人の歌詞にカメオ出演するというのは面白いですね。本人同士の交流があったか気になります。


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