見出し画像

映画『悪は存在しない』

ゴールデンウィークに 地元のFMラジオにゲスト出演した
英語通訳をしながら 映画エッセイを書いている
そんな肩書きで媒体でご紹介に預かるのは とてもとても光栄なこと
放送では こんな堅苦しくはなく むしろ砕けすぎていたのではないかと思う

番組内で紹介した映画『悪は存在しない』
ゲスト出演の翌日に 下関のシネマポストへ

「水は低い方へ流れる」

自然なことを 自然なこととして受容することの清々しさと心地よさ
昨今の不条理と不自然さを振り返る
まさに いままでの消化不良で堆積した「体験」が「経験」に変化するよう

随分以前のこと
ある映画の舞台挨拶にいらしていた高良健吾さんに質問をすることができた
台詞の言い回しについての質問だったと思うが
高良さんは「それぞれのシーンで言葉を置いていく」と表現された
言葉を置いていく
ただ台詞を発するという行為ではなく 言葉を大切に扱っていることが伺える

植字

濱口監督の作品を観るたびに思い浮かべる言葉である
役者の方が 一株一株土に苗を植えているかのように 言葉を育み養っている
植字という言葉は印刷用語ではあるが 想像以上にこの言葉には汎用性がある
土が言葉を受け容れ
言葉が自然の大地に解き放たれていく

北九州市立美術館につながる林道

シネマポストで映画を味わうことができる幸福とは
何といっても鑑賞後の支配人 鴻池さんの解説だろう

濱口監督からの問いかけー映画とは何か?
続けて よい映画とは 予定調和ではない 緩急のある緊張と緩和があると

“動の中に静があり 静の中に動がある“

この映画の軸を捉えようとすると どうしてもこの言葉が脳裏に浮かぶ
静と動が交互に入れ替わり 常にゆらぎが生じ
一見すれば 安定している(ように見える)
安定の中の変化 変化の中の安定

水は低い方へ流れる

自然の変化(ゆらぎ)を こんなにも繊細に描き表現できるとは
鴻池さんの言葉を拝借するならば「世界規格」

下関で世界を感じた

※この作品の前にもおすすめ映画をノートに描いていますが『悪は存在しない』を先に投稿しました。

映画ノート


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?