見出し画像

「マネジメントってこういうこと?」 ある学生さんたちとの出会いで学んだこと

みなさんは「マネジメント」と聞いて、どのようなイメージを持つでしょうか?

社会に出ると、やたらと職場で耳にするようになるかもしれませんが、当時の私は「なんだか大変そうだなー」「プレーヤーの方が楽しいだろう」くらいに思っていました。
年齢が上がるとともに役割として与えられて、給料は上がるけど責任は増え、自分のことを考える時間・自分で手を動かす時間が減っていくのに、とにかく忙しい。そんなイメージを持っていました。

ところが2年前のある経験が、私の考えを大きく変えることになります。
今回は、その時の経験から学んだ「マネジメントの面白さと大切さ」について触れていきたいと思います。

たまたま参画したプロジェクト

私は普段、電機メーカーで採用人事の仕事をしています。
採用活動やそのための企画が主な仕事ですが、キャリア教育を目的として、ときには大学の授業などで講師をさせていただくこともあります。
その一環で、2年前に産官学連携プロジェクトへの参画のお話をいただきました。
とある大学と複数企業、自治体が協力し、「地方創生」をテーマに課題発見から解決策の提案までを行うことで、学生さんのビジネススキルやマインドを醸成させるためのプログラムです。

参考:企業・団体向け WEBマガジン「#Think Trunk」

上司から「メンターとして参加してみないか?」と言われ、「よくわからないけど、とりあえずやってみるか」くらいの気持ちで、参画させていただきました。
このような機会を与えてくれた会社、上司には本当に感謝しています。

このプロジェクトは、学生さん6人のグループが8つあり、それぞれに企業担当者が1名ずつメンターとして入り、約3ヶ月間の活動後、最終的に自治体の方にプレゼンをするというコンペ形式のものでした。
初回にオンラインでキックオフイベントがあり、その後グループに別れてプロジェクトがスタートしました。

メンターとして意識した関わり方

私がメンターとして入ったグループは、商学部、経済学部、社会学部などバックグラウンドは様々で、元々仲の良いグループなどではなく、全員が初対面というグループでした。
ここで私が意識したことは「関係構築を手伝うこと」「基本的に後押しをすること」の2つです。
関係の質が最も重要だということを学んでいたので、それだけは特に意識しようと思っていました。

参考:ダニエルキムの組織の成功循環モデルとは?

最初の顔合わせのとき、みんなやや緊張気味だったので、自己紹介する際に、「僕はみんなのことをなんて呼べばいいかな?ちなみに僕は職場でナカシと呼ばれているから、もしよかったらナカシさんって呼んでね!」というコミュニケーションから始めました。(笑)
そうするとみんなもあだ名を教えてくれて、チーム全員があだ名で呼び合うようになりました。
すごく簡単なことですが、これは大事なプロセスだったなと今では強く感じます。

メンバーはみんな、自分の意思でプログラムに応募しているので意欲も高く、また、大学でマーケティング理論をしっかりと学んでおり、その知識を生かしながら「京都府与謝野町の経済発展」を目的に、プロジェクトは進んで行きました。
理系出身で元エンジニアの私は、マーケティングや新規事業創出について、プロとしてのアドバイスはできないこともあり、グループワークの中で「何かを教える」のではなく「後押しをする」「安心感を与える」ということを意識していました。
格好良く聞こえるかもしれませんが、「それしかできなかった」というのが正しいです。(笑)

メンバーは割と定期的に集まって、議論を繰り返していたようですが、私は週に1回(多くても2回)、約1時間だけ相談相手として学生さんが設定してくれた会議に参加するだけでした。(もっと関わりたかったですが、プロジェクトのルールとしてそのように決められていました)
ただ、前述したとおり、そこで私がクリエイティブで画期的なアイディアを与えることはできず、「ここはどのように考えたの?」という問いかけや「すごくいい考えだね、今後が楽しみ!」などの後押しをするだけでした。

プロジェクト中に感じた明らかな変化

学生さんたちは本当に優秀で、様々なデータから与謝野町の現状や考えられる課題点などをまとめあげていました。
私が理解しやすいように、わかりやすい資料までつくってくれていて、「本当にすごいなー」と思っていました。もはや、ウチに欲しいなーというレベル(笑)
ただ、1つだけ引っかかっていたのが、学生さんからの質問で「これって正しいですか?」であったり、「このまま進めていって大丈夫ですか?」といった、いわゆる既存の正解を確認するような問いが多かったことです。

この取り組みは、まだ見えていない課題を発見し、その解決に向けてトライをしていくという、正解のない取り組みなので、私にも正解はわかりません。
現代は、VUCAの時代などと言われますが、ほとんどがこういった正解のわからないものに対してアプローチしていかなければなりません。
ただ、教育の現場では、いまだに既存の正解を正確に導く能力が強く問われているように思います。
元リクルート フェローの藤原和博さんは、以下のように述べています。

それに対して今、成熟社会へ入ると、鈴木寛の言葉で「板挟み問題」ね。僕は想定外という言い方をしますし、正解のない時代とも言いますが。その中で、自分が納得し、かつ関わる他者が納得できる納得解をどれぐらい頭を柔らかくして紡げるかという、この情報編集力が大事になるわけです。

正解を出す力より「納得させる力」が求められる
藤原和博氏が示す“成熟社会”で必要なスキル


私は学生さんたちの問いに対し、「みんなはどう思っているの?」であったり、「みんなはどうしていきたいの?」ということを繰り返し問い返していました。
学生さんたちは、ちょっとストレスだったかもしれませんね(笑)
そして、その回答に対し、「みんなの考えを尊重するし、応援する。その上で助けが必要であればなんでもするから、いつでも言ってね。」というスタンスを貫きました。
多少考え方や進め方などのアドバイスはしたかもしれませんが、具体的な話はほとんどしていなかったと思います。
以降のミーティングでは、「相談」はほとんどなく「報告」がメインであり、みんなの認識合わせの場のようなものになっていました。

私が何も助言せずとも、「現場の意見を聞くのが大事だ」と言って、実際に与謝野町に足を運び、住人や農家の方々にヒアリングまでしていました。
(同行したい気持ちをぐっと押さえたことを覚えています笑)
そして、議論を重ねた結果、「与謝野ホップを使ったクラフトビールをつくり、経済循環の1つの武器にしよう」という提案方針が決まりました。

最終的にこのチームは、最終発表のコンペで8チーム中1位、優勝を飾りました。(企業の部課長クラスの方々複数名と自治体の方の投票で決まる形式でした)
あのときは自分のことのように嬉しかったのを、今でも鮮明に覚えています。

しかし、驚いたのはここからです。
「せっかくここまでやったのだから、発表で終わるんじゃなくて実際にビジネスとして形にしたい」とメンバーが言うのです。
メンバーの1人が、クラフトビールを扱うお店(家守堂というお店です。是非足を運んでみてください!)でアルバイトをしていたので、「そこに導入することを視野に、クラフトビールをつくろう!」ということになりました。
企業が参画するプロジェクトとしては終了していましたが、「もしよかったら、今後も定期的に壁打ちをさせてほしい」と言っていただき、喜んで引き受けました。

それからも学業や就職活動の合間、メンバー同士で定期的に集まっていたそうです。
与謝野町のホップの生産者や家守堂の方々を巻き込みながら、またどんなメニューにすべきかというアンケート調査なども実施しながら、ついにはお店でのクラフトビールの提供を実現させました。
「与謝野の里から21 収穫」という名で一時期販売されていました。

販売開始後、「是非ナカシさんに飲んでほしい」と声をかけてくれて、メンバーと一緒にお店にいかせてもらいました。
無類のビール好きですが、これまで飲んだビールの中でぶっちぎりで1番おいしかったです。もう泣いてしまいそうでした。(笑)

その時に上げたインスタのストーリー


組織・人がチャレンジを続けるために

これが、私がマネジメントに対するイメージが180度変わり、「面白い・大切だ」と考えるようになった大きなきっかけです。
私がやったことは、「関係構築のお手伝い」「後押し」だけです。
プロジェクトが終わった時、「あー大した関わり方ができなかったなー」と反省していましたが、メンバーのみんながすごく感謝をしてくれていて、「あ、これでよかったのか。いや、むしろこれがよかったのか」と気づかされました。
「マネジメントってこういうこと?」と思った瞬間です。

もちろん、大前提として学生さんたちの高い能力があったからこそ、実現した話ですが、マネージャー(ここでいうメンター)の関わり方次第では、結果は大きく変わっていたのではないでしょうか。
「教えないスキル」が組織・人がチャレンジし続ける環境を生み出していくのかもしれません。

このときのメンバーとは、2年たった今でもつながっていて、たまーに連絡を取っています。(結局ウチには誰も来ませんでしたが・・・笑)
社会に出て、このときのように、日々チャレンジをしていると信じています。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
何かの参考になれば、非常に嬉しく思います。

この記事が参加している募集

振り返りnote

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?