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『ルポ 誰が国語力を殺すのか』石井光太 感想

📕『ルポ 誰が国語力を殺すのか』石井光太
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昨年夏に出版された話題の本です。
夫が図書館で借りて「良い本だったよ❣️」と勧めてくれましたが、あまりにも良い本だったので、書き込みをするため1冊買いました。

近年、日本の子供達の国語力(読解力)が、どんどん下がっているといいます。
原因は、ゆとり教育の弊害を始めとして非常に複雑ですが、本書が指摘している最大の主題は

🔴国語力は、数字(点数や成績など)で測れるものではない。
🔴文学作品を精読し味わうことは、勉強だけでなく、社会で生きる上での基盤となる力を育む

この2点だと思います。

第8章では、日本女子大学付属中学校2年生の
「文庫本『アンネの日記』を1年間通して精読する国語の授業」を紹介しています。
この章を読んでいる途中、何度も涙しました。
それは自分の中学・高校時代を思い出したからです。

小学6年間、私の一番好きで得意な教科は国語でした。
しかし中高の6年間、私の国語の成績は常に底辺でした。(それでも、国語が大好きでした)

高校2年の秋、全国の駿台模試を受験したところ
「英語の偏差値75・国語の偏差値35」という成績をとり、悲しくて恥ずかしくて、放課後、教室で泣きました。(泣く暇があるなら、勉強すれば良いのですが…)

クラス担任(英語科)は、明るい先生で
「英語と国語の偏差値の差が、40の生徒さんは、初めてよ~。ホッホッホッ!」
「椿さんは英語ができるから、国語もコツを掴めば伸びます。気にせず勉強し続ければ良いのです!」
と、笑い飛ばして励ましてくれましたが・・・

この時、自分の国語力に非常な危機感を感じ、
「お母さん、お父さん、本当にすみません!!」と、両親に頭を下げてお願いしました。

「私を公文式に通わせて下さい❗️私には、予備校に通うほどの国語の学力がありません。
公文式の国語の教材は、基礎力の養成に良いと友達に聞きました」
※クラスの友人が、小学1~3年生の時に公文式に通ったおかげで、国語の成績がジャンプアップしたと話してくれたのです。

…というわけで、高2の秋と冬の半年間、
歩いて5分の近所の公文式に通わせてもらいました。

寺子屋のような公文式の教室で、セーラー服を着て勉強している高校生は、私だけ。
クラスメートは、全員かわいい小学生で、
何人か、小さい友達ができました。

この公文式に通った半年間は、私の人生を大きく変えました。

公文式では、ありとあらゆる日本の近代文学・・・夏目漱石、森鴎外、太宰治、井伏鱒二、谷崎潤一郎、武者小路実篤etc・・・を読まされましたが、どれも非常に面白くて、文が美しくて、体全体で日本語の美しさを味わいました。

あらすじも面白く、勉強を忘れて読書を楽しみ、森鴎外の高瀬舟では、安楽死の是非について考えさせられました。
だから毎週、公文に行くのが楽しみでした。

一度、こんなことがありました。
公文の教室でプリントを解いていた時、
嗚咽がこみあげ、涙が止まらなくなりました。

私と机を並べて勉強していた小学生の子供達が
「隣りのお姉ちゃん、泣いてるよ」
「だいじょうぶかな?学校で嫌なことがあったのかな?」
・・・と、心配そうにチラチラ見ていましたが…

プリントを解き終えて立ち上がり、
「先生、この小説、感動しました!!」
と、泣きながらプリントを提出しに行きました。

先生は「問題文を、気に入ってもらえたようで、良かったです」
と、笑顔で丸付けしてくれました😊
ちなみに、その小説は遠藤周作の『沈黙』です。今でも忘れたことはありません。

半年たって、公文式をやめました。
私の国語の成績は、相変わらず安定しませんでした。
高校の定期試験は範囲があるので、ある程度の点はとれますが、
模試は良かったり悪かったりの繰り返しで、自分の国語力の絶望的な低さの原因は、最後までわかりませんでした。
大人になった今も、自分は読解力が足りないなぁ…と呆れることが、しばしばあります😢
(※ちなみに読書は好きで、中高時代、日本語の本は年間60冊近く読んでいました。読んだ本のリストは今でも保存しています)

その後、指定校推薦で大学が決まったので
結局、公文式のお陰で自分の国語力(偏差値、点数)がどれだけ伸びたのか、いまだに知りません。

それでも、私にとって、高2の半年間、
公文式に通って、心が踊るような国語のプリントを解いたことは、宝物の思い出です。

「日本文学って、こんなに面白いの!?」
と、びっくりし、日本人に生まれたことを誇りに思いました。

国語の模試で、良い偏差値を取ることより
本を読んで感動して涙を流す時間のほうが、私の人生にとって、数百倍の価値を持つと、心の底から思います。

それは、『ルポ 誰が国語力を殺すか?』で紹介されている、日本女子大学の国語の授業(アンネの日記の文庫本を読み、「アンネにとって、日記を書く行為とは何だったのか?」を一年通して考える。その答えに正解は、ない。)に通じると思います。

私の高校時代の大親友が、ある時、こんな風に語ってくれました。

「例えば人生で大きな壁にぶつかったとするでしょう。
失恋したり、災害にあったり、家族の病気や死を迎えたり。

そういう時、一体何が、私達を立ち上がらせる力になるの?
仕事で役に立つスキルや、資格じゃないでしょう?

それは、学問とじっくり孤独に向き合う中で、自分の中に芽生えた自尊心。
あるいは、クラスメートと一緒に切磋琢磨して研究しながら培った、根性かもしれない。
あるいは、文学を読んで琴線に触れた、たった一つの美しい言葉や、
何気ないふとした瞬間に、先生や友達がくれた言葉かもしれない。

私たちは、点数で測れるもののために学校に行って勉強するわけじゃない。
リベラルアーツという曖昧なものは、一見何の役に立つか不明だけど、じわじわと人生で効いてくるのよ」

友人はたった26歳の若さで、一緒に箱根に旅行に行った時の朝ご飯の時間に、この言葉を私に言い聞かせてくれました。素晴らしい人です。
この友人の言葉を、今また思い出して噛み締めています。

最後に、本書の316ページを引用します。

「エリック・カールの本の特徴に、鮮やかな色彩というものがある。
彼は子供の時、第二次世界大戦を経験し、
その時、建物は全て地味な色に塗り替えられ、
人の服からも目立つ色が消えた。

その様子から、色は自由や平和のシンボルとして、彼の中に存在するようになったという。」

私は、イメージソングを作って歌うほど、エリック・カールの『はらぺこあおむし』が大好きです。
この絵本の色があんなに明るく鮮やかなのは、
エリック・カール氏が幼少期に戦争を経験し、
つらい思いをしたからこそなのだ…。

彼の絵本が「子供達に、幸せに自由に生きてほしい」という祈りであふれているのは、
彼の人生のつらい経験が、彼の肥やしとなり、
人にエネルギーを与える光として変換されているからなのだ・・・と知り、涙があふれました。

石井光太さんの本書は、たくさんの学びを与えてくれました。
特に第8章以降が素晴らしいです。

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