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「お母さん」と呼べる喜び

実母が亡くなって15年。
私には今、義母という母がいる。結婚するはるか昔に亡くなってしまったので、実母と義母は面識はない。
最近、もし母が生きていたら義母とどういう関係を築いただろうと考えることがある。

義母はどちらかと言うと、私の祖母に近い年齢で母とは歳が離れている。
ちなみに母は祖母とは折り合いが悪く、いつも「必殺⭐︎聞こえないフリ」をかましては、バチバチにやり合っていた。物心ついた頃からそのバトルを見せられていた私は「同居、ダメ、絶対」を心の中で密かに誓いながら大人になった。

同居のいざこざは、私の中である種のトラウマ。仲良くひとつ屋根の下で暮らす様をどうしても想像できない。

義母とは同居でもないし、同じ市内には住んでいるものの用事があるとき以外はほぼ行き来もない。
別に歪みあっているわけでもない。
義母は昔気質で働き者なので、用事もないのに連絡してくることはまずないし、アポ無しで来ることも絶対にない。

たまに忙しいと私のことを「あんたぁ〜」とか呼ぶけど基本的には「やたさん」と呼んでくれるし、土足でプライベートに踏み込んでくることもない。

ベッタリ仲良しじゃないけど、別に仲悪くもないちょうどいい距離感。

同居でほぼプライバシーがなかった実母が今の私を見たらきっとこういうだろう。

「お義母さんを大切にしなさいね」

母が生きていたら、盆正月にはお互いの地元のお土産を渡し合って、電話でお礼の挨拶をして田舎らしい付き合いをしただろう。

私の実家にはもう誰も住んでいない。
親がいない私は、義母から実家に帰る前親戚の人たちに、とたくさん野菜や米をもらうと心苦しい気持ちになる。

後ろ盾がない心許なさを感じると同時に、一言も私を責めない義母にありがたさを感じる。

実母と同じ、ちょっとドライでぶっきらぼう。
でも心根はとても優しいお母さん。

お花が大好きで、毎年アレンジの花籠を持っていくと玄関の一番目立つところに飾ってくれる。

これからも元気で長生きしてほしい。

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