今日は道ゆく人とよく目が合うなと思ったら
筋肉痛で体中が悲鳴をあげている。
三連休で助かった。
お弁当もいらず、予定もない。
ただ床に座って、約束の靴下を編んでさえいればよかった。
メリノの混じった毛糸はしっとりと柔らかい。手触りのよさにうっとりしながら、ひとめひとめ編み進めていく。
昼前には新しい編み針も届いた。
ノルウェー語で「幸せ」を意味するLYKKE(リッケ)というメーカーの「ドリフトウッド」という輪針だ。白樺でできていて、カスリ模様がなんとも渋い。
模様が綺麗に出るように太さはいつもより細めの2.25mm。
竹串みたいな太さだ。でも今まで使っていた金属針より滑りすぎずコードも柔らかくて編みやすい。
これはいい買い物をした。
と、筋肉痛に苦しみながらも、ご機嫌に編み物を続けていたところにメールが届いた。
「予約の本が確保できました」
図書館からだ。
明日は休館日だし、模様編みの本を早く読みたい。すぐに取りに行くことにした。
上がらない腕をなんとか動かし、ジャージを脱ぎ捨て服を着る。
夫に返す本あるなら一緒に持ってくよ、と尋ねそのまま家を出た。
車だし、10分もかからずに図書館には着いた。
休日だからか、人が多い。
駐車場に車を停め、歩き出すと向かいの入り口の脇に座っていたおじさんと目があった。
入り口ですれ違う子どもとも。
なんだか今日はよく人と目が合うな……
人が多いからかしら、と大して気にも止めず、ひとまずぐるりと図書館の本を物色する。
久しぶりにミステリーが読みたくなり島田荘司の「斜め屋敷の犯罪」を手に取った。確かシリーズ一作目は読んでいたはずだ。
せっかく来たのでついでに編みものの棚も見ておくか。
新作は入っていないようだ。
特に目的もなく、棚の間をプラプラと歩いて気になる本を手に取っては戻す。
ひとしきり図書館の中を歩き回ったところで、気が済んでカウンターに向かった。
「予約の本もお願いします」
「少々お待ちください」
カウンターの奥から、係の人が予約していた本を持ってきてくれた。
いつもであれば、ここで「◯日までですね(ニッコリ)」としてくれるところ、今日は目も合わせてもらえない。
おかしいな。
今日はみんななにか妙。
よくわからないけど、とりあえず本も借りたし帰って編みものの続きやろう、っと。
借りた本を胸の前でかかえ、ルンルンで家に帰ろうとした、そのときだった。
光の加減で入ってくるときは見えなかった自分の姿が自動ドアに映っていた。
ガラスに反射するヤシの木。
ド派手な黄色の極太ゴムで縛られた前髪。せめてピンででも留めていたならよかったのに、家から出るつもりがなかったので忘れていた。
自動ドアが開いたところでまた子どもと目があった。
急いで、でもなるだけ普通の振りをして車に乗り込む。
ぬぉおぉおおおお!!!
車に乗って、ようやく気づいた。
妙なのは周りの人たちじゃなくて、私の髪型だと。
しばらくは図書館に行くの控えようと思う。
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