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「推し活」で乙女に変身したあの子と、本命を「崇拝」し続ける私

友人が、突如乙女になった。
彼氏への対応が塩すぎる、幼馴染のまゆみである。

「私ね、推しができたんだ!」

久しぶりに休みが合ったので、同じく幼馴染のきよも誘ってご飯に行った帰り道。
いつもなら職場のあり得ない同僚のぶっ飛び話でフィーバーしている時間だ。
それが「推しができたんだ」なんてどうしたことだろう。

きよと二人、顔を見合わせてしまった。
彼氏と月に1回デートするのすら、面倒くさいこの幼馴染が「握手会で〇〇君に会って号泣しちゃって」なんて顔を赤らめている。

最近のアイドルは、直接会うこともできるのか。
まゆみから推しの活動状況を事細かに聞かされ、妙なところに関心してしまった。

どうやら、「推し」とは私が思っているよりももっと身近な存在らしい。

私にも応援しているバンドがある。
小学生の頃からずっと好きな某北海道バンド。

あまりに大きな存在すぎて「偶然でも会えたらいいのに」とすら、思えない。
ただ彼らがこの先も4人揃って活動してくれればそれでいい。
そのためだったら喜んで、ライブに通うし、安くないグッズだって喜んで買う。
よく夫からも「またお布施してんな〜」とツッコミを入れられているけど。
むしろ、それくらいのことしかできない。
多分この先、死ぬまで好きなことは変わらない。
熱狂的というより人生の一部。
もはや、崇拝していると言ってもいい。
他人に何を言われてもどうでもいい。
メンバーのプライベートにも興味ない。
ただメンバーが居心地のいい環境で、活動を楽しく続けられたらいいと思う。

直接会えるなんて、恐れ多い。

しかし「推し活」には「本命」とは違った一面があるらしい。
まゆみにも「本命」は別にいる。
某黄色い猿。私も大好きだ。
何度も一緒にライブに行った。
カラオケで本命縛りで8時間以上彼らの曲だけ歌い続けたこともある。
何時間も本命バンドの魅力について語り合った。

そんなとき、まゆみからも「崇拝」の匂いを感じる。
それがどうだろう。
「推し活」からは「崇拝」の匂いは感じない。

その代わり、キラキラしたピンク色の何かが見える。
これが「恋心」というやつかもしれない。
推しについて話すまゆみの顔は、10代の乙女のよう。
ただ楽しくて、会えるのが嬉しくて、それだけで幸せのような。
「本命」とは別の楽しみを満喫しているまゆみ。

心から幸せそうに話す姿に羨ましくなった。
私は好きになるとすぐ楽しい恋心レベルを超えてしまう。
「あ…愛します!! 一生どこへでもついていきます!!」
ユリアはシンに無理やり言わされてたけど、私のは自主的な崇拝なのだ。
このあと、シンはユリアにこっぴどく振られて涙目だったけど崇拝なら振られることもないw

ああ、私にはときめきが枯渇しすぎている。


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