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現代の営業パーソンは大変だ: 分業化と横断的アプローチをそれぞれ考える

最近、TwitterにてCERBRIX今井さんの呟きに共感しました。こんな内容です。

現代営業科学(?!)の最重要著書のひとつに挙げられるTHE MODEL以降で、営業活動を分業制にしてパイプラインの各ステップを専業する組織手法は増えてきました。今回は、私なりに営業活動の各ステップで望まれることや持っておきたいマインドをまとめてみたいなと思います。また、(私の仕事がこれなので)分業ではないアカウントマネジメントについても、説明したいと思います。

今回のnoteは機能面を中心に書きますので、営業とはなんたるかと言ったべき論はあまり書かない様にしたいと思います(一部漏れているかも、、)

筆者の営業経験

これまでのnoteでも書いた通り、私は約10年前に大学の研究員から転職して、前職の化学材料メーカへアカウントマネジャーとして入社しました。それが私の営業職人生の始まりです。入社当時(と、入社前の面接の時)に私は営業という仕事についてどう考えていたのだろうか、と思い出してみます。

・ものを買いに来た人(顧客)に売る仕事
・トークが大事
・顧客の元へ製品を届けにいく

まあ、今考えると何にもわかっていないで良く採用していただけたものです。こんなスタートから、入社5年後くらいにはマネジャーになり、その後はグローバルチームも経験して、新しい市場の営業職として転職するわけです。10年間で少しは大人になったかしら。

営業プロセスをちゃんと把握してみる

営業プロセスの解釈は様々かもしれませんので、私なりの理解という視点で書いていきます。大きく分けて以下のステップが存在します。

・リード創出
・リード醸成
・見込み客転換
・合意形成
・クロージング
・顧客体験促進

この流れは、有形/無形商材に関わらず骨子となるものかと思います。一言ずつ各ステップを説明します。

・リード創出
自社にとってコンタクトすべき顧客を見つけ出し、リストアップする。プッシュではテレマーケティングなどアウトバウンドな活動、プルではリスティング広告などによるインバウンドな活動が例に挙げられます。

・リード醸成
リストアップした顧客が自社の製品・サービスに興味関心を示すか、購入サイクルに入りそうか見定めるステップ。積極的な関与で次のステップへのコンバージョンを高めたいところ

・見込み客転換
リードステップと比較して、自社の製品・サービスを紹介、提供すべきであると判断された顧客であることを認識するステップ。通常はこの時点でしっかりとしたNeed Analysisを行って、セールスプロセスとしてこの先進めていく対象にするか判断されます。

・合意形成
しっかりとニーズや課題が分かり、それらに対する提案をもとに自社の製品・サービスを利用いただけるかの合意形成を行う。ここで重要な事は、お互いの要求や期待値に対するギャップを最小化して、契約内容として落とし込める納得感が得られる事です。

・クロージング
クロージングで重要な事は、価格や契約内容を明瞭にして、お互いがビジネスを始めるためのサインができる状態にある事です。一方的なクロージングでは、さっさと契約をまとめるために契約内容の説明が不十分であったり、明確ではない価格提示が現れてきたり、これまでのステップでは登場しない様な後出し条件をここに来て提示して無理やり飲ませる様なことがなくも無いです。

・顧客体験促進
契約はゴールではなく、スタートです。自社の製品・サービスを利用いただく顧客に対して、使って良かった、これがないとダメだったと実感していただくためには、納品後の対応が重要です。契約したものの製品・サービスの価値を引き出せず、やがて追加購入が無くなったり契約を破棄される様では、本当に顧客の課題解決を達成できたとはいえません。

分業制の強みと弱み

近年、これらの営業プロセスを分業化する組織が増えてきています。特にインサイドセールスはプロセスの前半で活躍する組織として、多くの企業が導入を進める様になってきています。インサイドセールスと言ったら、茂野さん(@insidesales_job)。黒本、THE MODELと並んで去年出版された著書は #ISの白本 として本当に必読書だと思う内容です。

インサイドセールスは、テレアポの焼き直しではないという事はたくさん議論されるポイントです。これは、インサイドセールスにとって重要な事はアポイントをとる(とにかく増やす)ことではなく、ビジネスに繋がる案件を創生する事だからです。つまり、高度なインサイドセールス機能においては、リードの評価と共に、前段階としてのNeed Analysisができており、あるいは顧客の購入サイクルを回すことができる様に設計されるのです。こうなると、アポをとって営業さんが挨拶するという従来型の動き方とは、必要な情報やそれを得るための行動様式が全く変わってきます。インサイドセールス機能には、莫大なリードから有用なターゲッティングを達成するためのデジタルアプローチは不可欠ですし、顧客関係管理(CRM)ツールを駆使して営業プロセスチェーンの前後であるマーケティングとフィールドセールスと連携していく必要があるのです。

一方で、SaaS (Software as a Serviceの略で、従来のPCにインストールしてソフトフェアを使うオンプレミスに対して、クラウド管理されたソフトウェアを契約ベースで活用するモデルのことです)の様なサブスクビジネスモデルが隆盛になってくると、製品やサービスを売り切る事だけではなく、如何にして顧客の離脱を防ぐかということが重要視される様になりました。その中で、インサイドセールス同様に注目される機能がカスタマーサクセスです。CSと訳すこともありますが、これもまた従来のカスタマーサポートとは異なる働きが期待されます。

従来のカスタマーサポートは、顧客が何か困ったことがあった場合に問い合わせたり、顧客に対して製品やサービスの変更点、注意点などを伝える必要があった際にコンタクトが発生するものでした。しかしカスタマーサクセスに期待される機能はこの受動的な動きではなく、顧客が製品やサービスを最大限に活用でき、顧客の事業活動の中で価値を生み出すために能動的にコンタクトすることです。そのため、カスタマーサクセスは従来以上に顧客接点を確保し、もしくはアップセルやクロスセルに繋がる新規の案件醸成の入り口としても重要は活動となります。

これらの分業化は、それぞれのプロセスに最適な機能、人材、KPIを設定することで各ステップのおけるパフォーマンスを高めることが可能です。しかし、組織の分断化はそれぞれのチームが自チームのタスクや目標を優先してしまい、協業的な最大アウトカムを創出することが困難になる場合があります。例えば、最初の今井さんの呟きの様なアポ件数をとにかく稼ぐ様な動き方は、インサイドセールスチームがアポ数をKPIに設定することで発生して、ビジネス成就に繋がりにくい様な未熟なリードが送り出されるリスクを招くかもしれません。また、離脱率を下げないために、一度契約した顧客に対して過剰なサービス提供を行なったりすることで、契約内容が(自社にとって)改悪されたり、闇雲に将来の価格を押し上げる様な振る舞いをしてしまってはいけません。どのプロセスを専業していようとも、営業プロセスという一つのチェーンの中にいることを決して忘れることなく、何が自社の営業活動として必要なことであるかという大命題を常に意識した上で、それぞれのチームの貢献を高めていく様に考えたいものです。

アカウントマネジメントという動き方

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(去年の転職活動時に最終面接でプレゼンしたスライドから抜粋)

さて、私の場合はアカウントマネジャーという職位で前職も現職も働いています。読んで字の如しなのですが、ここでいうアカウントは顧客を示し、顧客に対する活動全ての責任を持つというのがキーポイントです。そのため、担当顧客に対する新規ビジネスのためのプロスペクトから、既存顧客に対するカスタマーサクセス計画から、はたまた新規顧客獲得のためのリード情勢から全てが業務範囲です。分業化は営業プロセスを縦に割って考えていたとすると、アカウントマネジメントは顧客ごとに横に割って考える状態です。アカウントマネジメントにとって最重要ポイントは、アカウント戦略の立案と実施で、対顧客予算の達成に向けた現在ー将来の売上計画に対する責任と共に顧客との信頼関係マネジメントが求められます。顧客との信頼関係については、ビジネス現場での窓口として顧客の声(Voice of Customer, VoC)を自社内に伝える役割と、会社対会社の関係構築に向けたレベルコンタクト設定の役割はとても優先度が高いものです。

アカウントマネジャーは、案件に対して自社の技術担当、バックオフィス、サポートチーム、上層部など多くのステークホルダーと関わりながら仕事を前進させる働き方が求められます。そのため、よく言われる社内での非公式な人的ネットワーク構築や社内営業によるリソース獲得を達成するためのリーダーシップが成功のための大事な能力として考えられます。LinkedInのポストでも先日、この事について簡単にですが述べましたので参考にしていただければと思います。


さて、今回は営業プロセスについて分業化と横断的なアプローチについて書いてみました。商材や市場によって最適な戦略・戦術は様々かと思いますが、忘れてはいけないのは会社としてなぜ営業組織が必要なのか、顧客にとって営業組織が果たすべき役割は何なのかです。その部分は、多くの優れた営業パーソンがSNS上でもいらっしゃるので、ぜひコンタクトしてみるのをお勧めします。

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