見出し画像

「京都の白味噌椀」についての考察

先日書いた「京都人が愛用する生麩」の記事で、こんなコメントを寄せて頂きました。井垣利英さん、ありがとうございました。

白味噌の味噌汁に生麩を入れるのは、意外でした!

生麩入りの白味噌の味噌汁は、かなりマイノリティな食文化?

興味がわいて調べたら、レシピがいくつか出てきました。メジャー路線ではないながらも着実に受け継がれている料理のよう。うちの義実家の特有の習慣じゃなくてよかったです(ホッ)。

「あわ麩のみそ汁」(きょうの料理レシピ)、「生麩のみそ汁」(ベターホーム)、「さくら 白みそ汁」(本田味噌本店)

あの白いとろっとしたお椀を頂くと、身も心もあたたまる。優しいお味です。そんな白味噌の汁物の魅力をもう少し掘り下げたいと思います。

【粕汁は格別。間違いなく美味】

白味噌の汁物には、味噌汁・粕汁・雑煮などが挙げられると思います。なかでもおすすめしたいのは粕汁。

画像1
※写真:京都アンテナショップ 丸竹夷より

昆布のだし汁で具材(大根、人参、油揚げ、豚コマ肉など)を炊いたら、煮汁で溶いた酒粕を加え、白味噌を入れて完成。仕上げに九条ネギを散らすと綺麗です。七味をお好みで。

白味噌の甘い香りとお酒の華やかな香りが、鼻先で混ざり合い、食欲をそそります。特に京都のしんと冷えこむ冬にいただくと、身体がじんわりとあたたまります。

一度試していただく価値はあると思います。

【白味噌は出し惜しみしない】

作り方の基本的な工程は、味噌汁も粕汁も雑煮ほぼ同じです。昆布だしで、具材を必要に応じて炊き、仕上げに白味噌を入れる。

私もたまに自宅で作るのですが、京都で頂くのと何か違う。味が薄く、どうもコクが足りない。

この悩みは、樋口直哉(TravelingFoodLab.)さんの「白味噌のお雑煮」の記事を読んで解決しました。

白味噌は普通の味噌とは別の食材と考えたほうがよく、なにせ400ccの液体に対して150gも味噌が入るのですから。白味噌を買ってみたけどいまいち・・・・・・と思われる方は量が足りないことがほとんど。

思い当たる節あり。確かに白味噌は割と高いし、大量投入するのに躊躇いがありました。

白味噌は塩分濃度が低い。一般的な味噌の塩分量が10%以上あるのに対し、せいぜい5%前後にとどまるようです。つまりケチるとぼんやりした味になってしまい、白味噌の本来の良さを引き出せないわけです。

【雑煮には縁起物の芋や餅を】

お雑煮には丸餅が入ります。「角が立たないように」との願いを込めているんだそう。ちなみに家の主と長男のお雑煮には、大きな頭芋(かしらいも。里芋の親分)が丸ごと投入されます。子孫繁栄と、人の上に立つ「頭(かしら)」になるように祈願されてのこと。縁起物なので食べきってしまわないとお節料理に手がだせないんだとか。旦那さんにとっては毎年試練だったようです。

画像2
※写真:京都のおばんざい「京雑煮」より

【ディナーを格上げしてくれる一品】

関東人の私が描く「味噌汁」と、京都の「白味噌の汁物(お椀)」は、少しポジションが異なる気がします。

味噌汁というと通常は、「水分や野菜を補う/摂るための一品(手段)」「おかずの油分などを流し、さっぱりした口当たりを維持するためのもの」のように、あくまで補助的・実用的存在として扱われることが多いのではないでしょうか。

でも白味噌椀は、白いこっくりとした見た目も、ふんわり甘い香りも、とろっとしたのど越しも、食卓につく人の気持ちを高める華やかさがあります。フレンチコースの序盤に出てくるきれいなスープのように。

味噌汁よりコストはかかるけれど、ディナーを楽しむためのちょっとした格上げアイテムとして、今後もなるべく食卓に登場させたいと思います

【京都の老舗の味噌屋さん】

本田味噌本店
御所の西側にある江戸時代後期(1830年)創業の老舗。かつては宮中御用達だった。オンライン販売してます。

石野味噌
洛中にある、創業1781年の超老舗。九代続く伝承の技で料理家さんなどからも高い評価を得ています。百貨店などで購入できます。

この記事が参加している募集

おうち時間を工夫で楽しく

ご当地グルメ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?