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【読書感想】大事なことほど小声でささやく 森沢明夫著(幻冬社文庫)
最近、心がほっと温まる体験をした。
素敵な作品に出会うことができました。
先日、コミュニティの友達から2冊も小説をプレゼントいただきました。1冊読了したので、感想をシェアしていきます。
あらすじ
45歳のサラリーマン本田宗一は、出世が遅れている課長補佐。お客様へのプレゼンでしくじり、傷心のまま帰宅する。家庭では16歳の娘に冷たくされ、贅肉のついた身体と精神を鍛えるべくスポーツジム「SAB」に通い始める。
ジムではスナックを経営する巨漢でマッチョなオカマのゴンママと知り合い、毎日ジムに通い続ける。次第に身体に変化が現れ、精神的にも余裕が出てきたある日、妻からある相談を持ちかけられる。
感想
あらすじは第一章の「本田宗一の追伸」の一部。本作品は第一章〜第六章の六章構成となっており、オムニバス形式で主人公が章ごとに異なる。
その主人公も、サラリーマン、高校生、会社経営者、歯科医師、漫画家、スナック経営者と多種多様で読んでいて飽きがない。
本作品を読んで最も強く感じたのは
「人は誰しも何らかの悩みや苦しみを抱えて生きている」ということ。
さらに、その悩みや苦しみは乗り越えることで人は成長し、人間性にも深みがでる。まさにこの物語の舞台であるスポーツジムでの筋トレと同じなのである。
筋トレの場合は筋肉に負荷をかけ、筋繊維を破壊し、それが修復することによって筋肥大が起こる。
悩みや苦しみの回復法はそれと少し違う。
人に相談し、自ら学び、自分の思考や行動を変えていかなければならない。
本作品の主人公たちもゴンママをはじめとした周りの人たちに相談しながら、自分の思考や行動を少しずつ変化させて成長していく。その成長模様が人間らしくていい。
この物語の中で一番特徴的なのは、ゴンママの珠玉の名言と花言葉ならぬ「カクテル言葉」だろう。
登場するカクテルもシャンディガフ、ギムレット、ラムコーク、ソルティドッグなど王道で馴染みのあるものばかりだ。
最後に私の心に残ったゴンママの名言を引用して、この本の良さをお伝えしたい。
「あなた、言っとくけどね、いちばん苦しいときに笑うって、実は人生の極意なのよ」
「いちばん騙しやすい人間は、すなわち自分自身である」
「誰かを愛して誰かを失った人は、何も失っていない人よりも美しい」〜中略〜「でもね、愛した人を失わないように努力した人だけがきっと美しいのよ。最初からあきらめていた人は、たとえ愛する人を失っても、そんなに美しくないはずだわ」
ー悲しいときはしゃべらなくていいのよ。泣けばいいの。寡黙っていう意味のソルティドッグを飲んで、おいおいでも、しくしくでも、泣けばいいのよ。
オカマ独特の下ネタが散りばめられている作品だが、それ以上に感動する部分が多くを占める。優しいあなたに読んでいただきたい一冊です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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