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ハーメルン【10】

これはフィクションです。
ハーメルン【1】
ハーメルン【2】
ハーメルン【3】
ハーメルン【4】
ハーメルン【5】
ハーメルン【6】
ハーメルン【7】
ハーメルン【8】
ハーメルン【9】
の続きです。

「さてと、私はアイロン掛けしなきゃならないから行くわね。みんな、ごゆっくり。」
そう言うとイズミちゃんのママはトレイを持っていない方の手をひらひら振って戻って行った。
「イズミちゃんのママって、たよりになるよね。」
ノリちゃんとコウくんもうんうんと頷く。イズミちゃんは満更でもなさそうな顔で肩をすくめた。
「じゃ、私達もできるだけ沢山の人に噂をひろめなくっちゃ。お兄ちゃんにもSNSで拡散してってたのむよ。」
イズミちゃんのお兄ちゃんは高校生だから、きっと凄くひろめてもらえる。
学校ではもちろん、ピアノ教室とかスイミングクラブでも他の学校の子達に広めてもらおうと話し合った。
「ノリちゃんちのハーメルンと、コウくんちが買い替える前のハーメルンと、うちのって全くおんなじかな?どっか違うとこがあるか見に来てよ。あ、それからこの前話してたボードゲームもあるし。」
「あ、あのゲーム、やりたかった!」
「オッケー。また、あとでね。」
作戦会議は順調に進んだし、一応ちゃんと宿題も終わらせた。一旦解散して、予定通り午後は僕の家にまたみんなで集まることにした。
「「「おじゃましましたーー。」」」
僕は明るい気分でイズミちゃんちをあとにした。これできっとうまくいく。

笑顔で家の前にたどり着くと、玄関のドアを開けながら声を張り上げた。
「ただいまー!ママー!」
なのに返事は無かった。
まだ玄関にいるのに、なんとも言えない、あの、とろけるような心地よさが頭のなかに流れ込んでくる。
キッチンに続くドアの隙間からは金色の光が漏れていた。
全身の毛が逆立つような気がして、僕はあわてて駆け出す。
蹴破るようにドアを開けると、冷蔵庫の扉が反対側から開いて、中から金色の光を放っている。ママは冷蔵庫の扉に手を掛けて今にも一歩踏み出そうとしていた。

つづきはこちら
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