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ハーメルン【7】

これはフィクションです。
ハーメルン【1】
ハーメルン【2】
ハーメルン【3】
ハーメルン【4】
ハーメルン【5】
ハーメルン【6】の続きです。



ママに毛布をかけると、ノートを持ってきてページを1枚破った。なんのドラマをすすめたらいいんだろう?そうだ、この前ノリちゃんが話してた。記憶をたどって思い出しながらドラマのタイトルを書き終えたら、ママが起きてきた。
「ママ、大丈夫なの?」
「えぇ、もう大丈夫。ちょっと眠ったらスッキリしたわ。毛布かけてくれたのね。ありがとう。暖かくて気持ちよかった。元気出たわ。」
僕はホッとして、ママに紙切れを差し出した。
「ねぇこのドラマ、ママがこの前カッコイイねって言ってた俳優さんが出てるって。すっごく面白いって、ノリちゃんが言ってたんだ。BTS のメンバーも出てるから、コウくんのママも見たんだって。ママも明日、見たら?」
「あら、ほんとう?面白そうね。観てみるわ!」
ママの笑顔が復活した。やっぱりママは綺麗だ。
「さぁ、晩御飯の支度しなくっちゃ。」
「今日の晩御飯なあに?」
「今日はロールキャベツ〜!」
「やったー!パパも一番好きだもんね。」
「ふふふ。お風呂掃除お願いね。そのまま、さっと入っちゃって。」
思いのほかママは元気そうだ。
明日は休日だから、みんなでイズミちゃんちに集まって作戦会議をする。パパもお休みだし、ママはドラマを見ると言ったので一安心だ。
「おっけーい!」
僕は、調子よく答えてバスルームへ向かった。

ぽっかぽかのいい気持ちでバスルームから出るとロールキャベツのいい匂いが漂ってくる。
「パパもそろそろ帰ってくる頃だし、ご飯にしよっか?」
その時、ママのスマホが鳴った。画面にパパからのメッセージが表示される。
『 急に食事会になった。ちょっと遅くなります。』
珍しかった。大抵、食事会は前もってわかってる。急に決まったときだって、もっと早い時間に連絡が来るのに。

「飲んでばっかりで全然食べられなかった~。やっぱりママの料理が一番美味いな。」
いつもパパは食事会から帰って来ても晩御飯のおかずをつまむ。

「じゃ先に食べよう。パパにオッケーってかえしといてー。」
「うん。」
オッケーのスタンプを押す。
『パパ、今日はロールキャベツだよ!僕がパパの分も食べちゃうからね!』
パパへの返信は僕の担当だ。
「帰ったら食べる!残しといて!!」ってすぐ返って来ると思ってたけど、既読もつかなかった。忙しいのかな?

今日のロールキャベツも最高だった。
「ママは料理だけはうまい!!」
いつも人を褒めないパパでも絶賛する味だ。
大満足でお皿を片付ける。ママが食器を洗ってるあいだにテーブルを拭いていたらパパが帰って来た。
「ただいまー。」
「パパ、おかえり!ロールキャベツ食べるよね?」
「あー、ごめん晩御飯食べてきたんだ。今日はもう、いいかな。風呂入ってくるよ。」
そう言ったパパとすれ違う瞬間、ふわっといい匂いがした。街で綺麗なおねえさんとすれ違った時みたいな…。ん?不思議に思って振り返るとママが目を見開いてパパの背中を見つめていた。


つづきはこちら
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