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Webディレクターに #コミュ力なんていらない

はじめまして、Webディレクターのてらみです。Web制作会社に新卒で入社してキャリアをスタートし、4年目になりました。「京都大学文学部卒で頭が良いのが強みです」ってキャラクターでやっています。

「ディレクター」ってなんかカッコいいですよね。デザイナーに「疾走感が足りない」とか言って、ビシバシーっと指示をだして、カッコいいものを作って、ドヤ顔でメディアにインタビューされてろくろ回してる、みたいな。「コミュ力のネ申」みたいな人しかできなさそうな仕事ですよね。

実際、Webディレクターに必要なスキルはいちに「コミュ力」にに「コミュ力」、さんしに「コミュ力」「コミュ力」「コミュ力」「コミュ力」「コミュ力」…と言われるくらい「コミュ力」が乱用されています。

「コミュ力」が乱用されすぎて、みんな大切なものが見えなくなっていないかい?と思うので、そのWebディレクターに必要な「コミュ力」というものについて、書いてみることにしました。

とくに、Webディレクターになって1年目〜2年目ほどの、「コミュ力」という謎ワードに頭を抱えている人に読んでみてほしいです。

Webディレクターとはどういう仕事か

Webディレクターのお仕事は、クライアントからWebサイト制作という業務を、予算を預かり委託されることでスタートします。これがいわゆる受託制作と呼ばれるものです。

Web制作(受託)の制作フローやWebディレクターの業務範囲がよくわからんという型はこちらの記事の中盤あたりが参考になると思います。

Webディレクターは立場上、プロジェクトの責任者役を担うので、与えられた使命をもっともシンプルに表すと、こんな感じになるのかな、と思っています。

与えられた予算の納期内で可能な限り最良のアウトプットを行うこと

まずもって、Webディレクターが果たすべき役割はこれ以上でもなく、以下でもありません。

企画力が、提案力が、マーケティング力が、などとWebディレクターに求められるものは際限なく増えていますが、付加価値にすぎません。どれほどの役割を果たすべきかは、あなたにつけられている単価によって変わるでしょう。

Webディレクターが行う業務内容ですが、先の記事の通り、細かく上げるとキリがありませんが、核となる部分を抽象化して表すとこんな感じになるのかな、と思っています。

必要な情報を、しかるべき人から仕入れ、しかるべき人に、しかるべき方法で伝達し、プロジェクトの課題を解決しながら進行させること

つまるところはWebディレクターって"コミュニケーション"の仕事なんです。

Webディレクターにコミュ力は必要か?

おい、タイトルに「コミュ力なんていらない」っていらないと書いておきながら、「コミュニケーションの仕事です〜」ってどないことやねん!と思われた方、どうもすみません。

というのも、Webディレクターはコミュニケーションの仕事ですが、わたしは、業務を全うするのに「卓越したコミュニケーション能力」はなくてもよいと思っています(もちろんあればいいですけどね)。

というのも、わたし自身は、いわゆる「コミュ力」のある人間ではないからです。ひょうきんなキャラを装っているので、意外に思われるかもしれませんが、実は人と会話するのも好きじゃないし、できればそっと一人にしておいて欲しい人間です。コミュニケーションもどちらかと言えば嫌いです…。

飲み会も4人以上のなるとまったく喋らなります。ぜんぜん元気なのに「体調悪いの?」と聞かれます。初対面の人と特に話したいことがないと黙っているので「最初は怖い人だと思ってました」と、仲良くなってから後々に言われることもしばしばです。

そもそもわたしがWebディレクターとして新卒入社したWeb制作会社の選考でも、(うわあああめっちゃ嫌だ、早く帰りたい、助けてええ)と面接をブッチするかしないかの瀬戸際で、命からがら受けに行き、気のない返事をそれなりにしていたら、なぜか内定をしたというエピソードがあります。

これくらい挙げれば、わたしコミュ障なんですって理解はしてもらえるでしょうか?

先日、bosyu社代表の石倉秀明さんの著書『コミュ力なんていらない』で、わたし含めたbosyuユーザーと感想や"コミュ障あるある"を話していたのですが(はじめに申し上げておくと、このnoteはこちらの書籍のステマです)、「よくディレクターなんてやってるなぁ…笑」と石倉さんに言われたのですが、まことにそのとおり、よくやってるなぁ…、と自分でも思います。

石倉秀明さんの著書の『コミュ力なんていらない』は決して、仕事において必要なコミュニケーション自体を否定しているわけではなく、「コミュ力」という便利に使われている魔法の言葉をきっちり因数分解して、その正体を見極めようという本なのです。

冒頭で書いたとおり、同じくWebディレクターも「最も必要な能力はコミュ力!」とフワッと言われがちな仕事です。コミュ力がないまま、うっかりWeb制作会社に新卒入社して、「それなりのWebディレクター」になれた、わたしがこれまでのキャリアで身につけたことを考えながら、Webディレクターに必要な「コミュ力」の正体について考えてみたいと思います。

Web制作基礎知識はインターネットで身につけられる

まずはWeb制作の仕事に取り組む上で、この仕事の「共通言語(=基礎知識)」と呼ばれるものを理解しなければなりません。

わたしが入社した会社の研修では、「3日でできるHTML&CSS」みたいな本と「SEO対策のキホン」みたいな本をぽいっと渡されて、読まされました。座学研修はこれだけでした。

Web制作については、わたしが所属するLIGブログを筆頭にWeb上にありとあらゆる解説・ノウハウ記事が公開されているので、都度グーグル検索で補っていきます。あとはGoogleが公示してる、 検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイド - Search Console ヘルプなど公式のリファレンスも読んでおいたほうがよいでしょう。

例えばあなたが1年目の新人Webディレクターであれば、この世で必要とされているようなベーシックなWebサイト制作の知識であれば、8割方は本を読むかググるかで、クライアントや社内の制作メンバーと会話できるレベルの十分な知識を、コミュニケーションなしに身につけられるわけです。これに加えて、社内で質問しやすいデザイナーやエンジニアの先輩を見つけておけばしばらくは安泰です。これに加えて、社内で質問しやすいデザイナーやエンジニアの先輩を見つけておけばしばらくは安泰です。

以下は余談ですが、ディレクション知識はもちろん直属の上司やチームの先輩などから、その会社のお作法や、経験則などをある程度教えてもらうことはできると思います。ですが、会社の中で学べることには天井があり、それを超えた知見はインターネットや他のコミュニティをあたった方が手に入れやすいと思います。

会社の中にすべての答えがあるわけではないということを知り、貪欲に答えの在り処を思考し、会社の外にでも探しに行くようなマインドの方が大事だと思っています。

ヒアリングは事前準備で90%終わらせられる

「クライアントの本質的な課題を引き出すヒアリング」とよく言われ、コンサルタントのように相手を唸らせることを言ったりしなければならない気がしてしまいますが、そこまで難しいことはできなくてもいいと思います。

まず第一にできるようになるべきことは、会社のこと、費用のこと、納期のことなど、あたりまえのことをキチンと説明できるようになることです。実はクライアントが一番気にしているのは、お金のことや、納期のこと、あとは会社がちゃんとしてそうかなので、そこで安心してもらえて、やっとWebサイトの話に入れるからです。

研修のうちは先輩のヒアリングに同行させられるので、先輩の説明をよく聞いておいてパクってしゃべるだけです。とくにコミュ力は必要ありません。自分でも練習してみて、喋りづらいなと思ったところは、アレンジしつつ、スラスラ喋れるようにしておくといいと思います。あとは同じ業界の実績や、近い業界の実績などがあれば、説明できるように準備しておくといいでしょう。

あとは会社に帰ったときに、提案書を作れるだけの情報収集ができていればOKです。

最初のうちはヒアリングシートにそって情報を聞いてこれればOKと言われました。その上で真っ白な状態のものを送ってもだいたいの人は埋めてくれないので、こちらでヒアリングシートを埋めてしまい、分からないところや自信のないところだけ赤字を入れておくなどしておければいいのだと思います。こちらを打ち合わせ前に送りましょう。

クライアントのこと、競合のこと、商材のこと、ターゲットのことは、ネットで調べればだいたい想像がつくはずです。ヒアリングでは、当日までに90%を調べ尽くし、仮説を立てて置く準備が重要なのです。

ヒアリングの当日は、きちんとした身なりで、会社や制作のことをきちんと説明して、あとは事前準備の答え合わせをしたり、分からないことを質問したり、あとはオマケでお客さんの期待してることとか、好みとか要望とかも聞いておければいいのかな、と思います。

そうしているうちに既存の参考サイト集などで、ロールモデルになりそうなものが思い当たったりすると思うので、見せてみると「あ〜これこれ〜」とか、「う〜ん、なんかちがうなぁ」とか、より一歩近づいた反応をもらえたりします。

慣れないうちはコンサルのようになろうとせずに、素直に聞いてみる姿勢でいたほうがやりやすいと思います。こうしてみると事前に準備したことをやるだけなので、そこまで難しいことではないと思いませんか?

提案資料は音読するだけで伝わるように作る

わたしは基本的に人前で饒舌にしゃべったり、いわゆる「プレゼンテーション」というものが全く得意ではありません。そのため提案資料はそのまま書いてあることを音読するようにしています。そのため逆算的に、資料も音読するだけで伝わるような内容=「口頭しない説明を書面でする」または「書面にない説明を口頭でする」が必要ないように作っています。

実はこの音読するだけで伝わるように資料を作ることは、より分かりやすい資料を作る上で、よい資料をつくるためのポイントにもなっています。

例えば、「口頭しない説明を書面でする」のは、資料が詳細すぎる可能性があります。資料を作るのに一生懸命な人ほど、すべてを詳細に図解化し、1枚の中に内容を詰め込もうとする傾向にあるように思います。

またプレゼンを受けるクライアントからすると、視覚的に複雑なものはそれを理解することに体力を使うので、気が散ります。そして、集中が切れて、傾聴が途切れやすくなってしまいます。

当たり前のことや、論旨からずれた詳細すぎる内容は思い切ってカットしたほうが、伝えたいことが映えると思います。

「書面にない説明を口頭でする」のは、クライアントの傾聴力にすべてを委ねてしまうため、あなたにプレゼン力がない限り危険です。特に専門的な補足や詳細な説明を念の為にとしゃべりたくなったのなら、まず止めておいたほうが無難です。これもプレゼンを受けるクライアントからすると、耳から伝わる情報だけで理解しなくてはいけないので、疲れる行為なのです。そして、集中が切れて、傾聴が途切れやすくなってしまいます。

コミュ力がなくても、聞いていて気持ちがよくフムフムと納得ができるプレゼンをできるようにするためには、最初から音読するだけでいいように資料を作っておくか、カンペに話す内容をすべて書いておくといいでしょう(これは石倉さん流です 笑)。

進行を円滑にするのコツは「コミュ力」に甘えないこと

社内の制作進行において起こるトラブルは大きく「提出に間に合わない」「品質を担保できない」の2つだと思います。品質については最悪、いかようにでも挽回の余地があるのですが、前者の「提出に間に合わない」は社会において最も信用を地に落とす行為とされているので、ここだけは押さえたいところです。

提出に間に合わないことについて、ディレクターの責任範囲においては伝えるべきことを伝えられていなかったということが多いように思います。

以前noteで、デザイナーが当然やるべきと思っていたことをしてくれない、というお悩みに対するアンサー記事を書きました。

こういった、依頼内容の中にどういった作業が含まれているのかが伝わっていなくて一部の作業が未完了というのは、しばしば提出が遅れる原因になります。

また期限までの品質担保のラインの認識がズレている、というのもよくあるトラブルです。ディレクターはクライアントに提出しようと思っていたが、デザイナーは社内レビューの提出だと思っていた、というような提出に至るまでの過程を伝えられていなかった事例です。

「何」を「どのような過程」で「いつまで」にを明文化するだけで、「提出に間に合わない」のリスクは格段に減らすことができます。当然のことのように思いますが、実はわたしがこれらを抜け目なくできるようになったのは最近でした。

LIGでは一部の案件でオフショア開発の行っており、主にフロントエンド開発を依頼することが多いです。もちろん彼らは日本語ができるわけではないので、英語でやりとりを行います。

ある時、依頼したけれど「あれ、全然再現度が低いし未完成…?どういうこと〜!??」という状況になったわけです。現地の日本人ディレクターに仲介してもらいながら、話を聞いてみると、

①フロントエンド開発(必要な要素と機能・動作を再現した状態)
②コードレビュー(レビュアーにコード上の不備がないか確認してもらう)
③ピクセルパーフェクト(1px単位で見た目を再現する作業)

日本人側のメンバーは①〜③を「フロントエンド開発」と言って依頼していましたが、セブのエンジニアは①だけと受け取っていたとうわけです。

(そうだったのか〜誰か教えてくれよ〜)と膝から崩れ落ちたものの、わたしがエンジニアの作業内容について無知であったことに落ち度もありました。いつもは日本人のプロジェクトメンバーに見えないところで「よしなに」やってもらっていたのだと、3年目の終わりにもなり、初めて気づいたのです。

日本人は「よしなにやる/やってくれる」という働き方が良くも悪くも染み付いているので、〇〇さんはベテランだから大丈夫だろう!とか、これくらいの依頼内容でも上手いことやってくれるだろうと思い、忙しさから依頼にあたる情報伝達を疎かにして、制作者に甘えてしまいがちです。

こういった「よしなに」のコミュニケーションは制作の現場では厳禁だと思ったほうが失敗しないと思います。ある日、別の人/会社に依頼したときに、間違いなくトラブルにあいます。依頼内容は常に的確かつ詳細に情報として伝えることが、不要なトラブルを回避するために最も重要です。

こういうときにプロジェクト管理ツールでチケット化を徹底するなどのTIPSが役立ってくるわけです。状況に応じて、進行を助けるツールを上手利用することもディレクターの大切なスキルです。

プロジェクトを前進させるのは、メンバーからいかに情報をキャッチアップするか

以前、社内でWebディレクターに求められる役割やスキルについてインタビューを受けた際に、同僚のともぞーが良いことを言っていたのでその言葉をそのまま借りたいと思います。

すべてのスキルを完璧に身につけるって誰にもできないですよね。だからこそ、「プロジェクトを前進させるために足りない部分をどう補うのか」を考えることがなにより大切です。仲間であるエンジニアやデザイナーから情報をキャッチアップして、チームとして精度の高い成果物を出すことがWebディレクターに求められることだと思います。
引用:https://liginc.co.jp/510977

Webディレクターは立場上、プロジェクトの責任者となりリーダーのような役割を担うことになりますが、「卓越したコミュ力」のようなもので強力なリーダーシップを振りかざし、ワンマン経営で物ごとを決めながら、プロジェクト進行をするわけではありません。

チームで補い合うからこそ、自分が持っているスキル以上の成果を出すことができるのが、制作会社でWeb制作を行う楽しさでありメリットです。より戦略的な言い方をすれば、会社が持つ、デザイナーやエンジニアという資源を最大限有効に活用することで、それを武器としてより精度の高い成果物を出すことができるのです。

わたしは冒頭で、Webディレクターの業務内容を、「必要な情報を、しかるべき人から仕入れ、しかるべき人に、しかるべき方法で伝達し、プロジェクトの課題を解決しながら進行させること」と表現しましたが、すべての関係者ーときにクライアントも巻き込んで、この情報の仕入れと伝達をひたすら繰り返し、チームの思考を深めていくていくことに尽きると考えています。

まとめ:「特殊能力」じゃなくて「技術」です

わたしがこれまでのキャリアで身につけたノウハウや考え方を振り返り、Webディレクターに必要な「コミュ力」の正体について考えてみました。これらひとつひとつは、その課題やタスクに真剣に向き合うことで磨かれる「情報を仕入れ・伝える技術」であり、「コミュ力」のような一部の人間しか身につけることはできない謎のパワーではないと感じています。

結論としては、わたしは「コミュ力」なんてなくてもいいと思うんです。だって、わたし、ないだもん。今でも、ミーティングのときに空気の読めないことを言ってクライアントにお叱りをいただくことがあります(本当にごめんなさい)。

もちろんある一定以上の費用感とか規模感になると、「コミュ力」とか「経験値」とか、もう「威厳」みたいなものまで必要になってきますが、とりあえず、「それなりのWebディレクター」になるには、まずはなくてもいいかな、と。

欠けているところをみんなで補い合って、最終的にプロジェクトがまあるい形をしていれば、それでいいじゃない。後々で、少しずつ磨いていけば、それでいいのよ。だって、人間だもの。


ということで、自分が登壇したあとの懇親会のはずなのに誰とも名刺交換できずにぼっちになっているほどコミュ障のキャスター社の取締役COOやbosyu社代表をやっている石倉秀明さんのお仕事本はこちらからどうぞ!↓↓↓



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