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できれば深夜の巨大なスーパーマーケットで静かに働きたい - わたしだけアドベントカレンダー1日目

この記事はわたしがひとりでアドベントカレンダーという名前を借りて、25日連続でnoteを更新することを夢見た記事の1日目です。

「なにかやってみたいこととかないの?」と聞かれることがあるが、やりたいことは特にない。

休職をして3ヶ月も仕事を休んで、何をするでもなく、ただ寝て、起きて、食べて、風呂に入ってまた寝る、そういう生きるためだけの生活を続けていたら、すっかり健康体になって復職するころには、自分の中から「なにかをやりたい」と思う意欲とか、主体性とか、そういうものがぽかんとなくなってしまっていた。

決して悲観的になっているわけではない。ただ、そんなに興味がないなと、ただ思う。

できれば、深夜の巨大なスーパーマーケットで静かに働いてみたいと思う。

自転車で会社から浅草の自宅までの道のりを、毎日ひとりひたすらに帰っていくうちに、寒さを身に感じるようになり、明かりを灯しながらもどこか静けさとだんだんとまして、季節が冬になると『希望の灯り』という映画のシーンが懐かしくなり無性に見たいという気持ちになった。

この映画は旧東ドイツの郊外の大型スーパーマーケットが舞台で、主人公は在庫管理係で働くことになった、とにかく無口で不器用な感じの男だ。本当になにもしゃべらない。ただそこにいて、言われた通り手を動かしてみる。

ブルーノという上司に仕事の仕方やフォークリフトのやり方や様々なことを教わりながら、倉庫管理という職場や同僚たち、その世界観に馴染んでいく。そして、棚越しに働いている女性(彼女は人妻なのだが)に恋をする。

コンクリートの巨大な倉庫をフォークリフトで縦横無尽に動き回ってみたい。

深夜帯で働く人たちは不思議な孤独を身にまとっていると思う。わたしも孤独を身にまとったまま、慎ましく働いてみたい。

近くなく、かといってまったく遠いわけではない、同僚とのささやかな心のふれあいを感じてみたい。

明け方のひとびとが動き出すまえの時間に家に帰って、静かに眠りにつきたい。

深夜の巨大なスーパーマーケットというコンクリートの巨大な箱と膨大なモノの宇宙をわたしは夢に描く。


実はこの日記を書いてからクリスマス映画でもあることに気が付きました。深夜におすすめの映画です。

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