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100日連続投稿の背後にいた人

99番目の夜

昔むかしあるところにそんなタイトルの曲があった気がする。ペニシリン・・・そう、ビジュアル系バンドだ!
そんな事を思いながら昨夜、99日目の投稿を終わらせた。
今、100日目の朝を迎えて、開放感に腕を高く上げて歓喜の声をあげるわけでも、今日までの長い道のりを振り返るわけでも、寂しさに酔いしれているわけでもない。

怖いくらい淡々としている。
自分にとって、100日連続投稿はただの通過点で、痛くも痒くもない苦しみも痛みもない事で、ただただ毎日が楽しかった。



わたしの10年来の友人で、一緒にインドに連れていってくれるアーユルヴェーダサロンのオーナーが、ある日教えてくれたインドの格言がある。

『人は人生の中で3人、重要な人に出会う』

漫画のONE PIECEのルフィで言うところの「シャンクス」「エース」「レイリー」だろうか。
人生の分岐点に現れて導いてくれる存在、みたいなニュアンスだと思う。

私はそれに当てはめて考えると、すでに2人に出会っている。

1人は私の「相棒」
何にもカテゴライズされず、他のなんでもない唯一無二の男。学歴も身長も生息地も真逆の2人だが、私たちが揃うと無敵になる。

そしてもう1人が、がるるさんだ。

ぼく、とがるるさん

彼女、とはもう現存していない文字書きアプリで知り合ったのだが、あの空間はとても特殊だったように思う。
写真を貼れない、文字のみのコミニケーションアプリで、TwitterやInstagramが主流になってきていた世の中からプカリと浮いたプラットホームだった。
世代じゃないから、この表現があっているか分からないが「ひょっこりひょうたん島」みたいにプカプカ浮いて、ちょっと世間からずれている。
そこに出来た小さなコミュニティ。
たまに漂流者が流れ着く、みたいな。

私もそこでブログを書き出したが、最初の2ヶ月は全く相手にされなかった。
noteを書く上でも同じだが、文字のコミニケーションは“とっかかり“が難しい。

「どうせ誰も読んでないんだし」

ヘコむ、悩む、という言葉を雲の上に置いて生まれてきた私は開き直って、書き方を変えた。
当時は片思いの胸中を書いた恋愛ブログだったので、客観視するためにも一人称を「ぼく」に変えて抽象的な文体の、小説風ブログにしたのだ。
すると、突然コメントがきた。

アカウント名は“がるる“さん

彼女は年上の奥さんで、お料理と人の話を聞くことと、誠実な態度が輝く人気ブロガーだった。
泣き言を書いたブログのコメントで、一言も「がんばれ」や「君ならできる」「きっとうまく行く」などの常套句を使わず、誠実な本音で「ぼく」に対峙してくれた。

しばらくは2人相撲だった「ぼく」のブログは、瞬く間にたくさんのフォロワーがつき、コメントが溢れるようになった。
返信が追いつかない時期もあったくらいだ。
がるるさんの到来で、ひょうたん島の中のコミュニティに「ぼく」は無事に仲間入り出来たのだ。

「あなたの書く文章を、漫画やアニメで見てみたい。いつかドラマ化すれば良いのに」

人からそんな風に言ってもらえたのは初めてで「ぼく」の物語は伸びていった。
日常の中で起きた、考えさせられた事や、コントみたいに笑えた事を1ヶ月に2本くらい書いていたと思う。
「ぼく」らは本当によくやっていた。
小さな島の中だから苦労や喧嘩もあったけど、みんなで励まし合っていつもいつも、真剣で良い関係だった。

4年ほど漂流し、アプリの閉鎖というなんとも現実的な理由で、突然に別れの時がきた。

みんな各々の引越し先を伝えたり、行く先を案じている中で「ぼく」は筆を折る事を決意し、その旨を最後のブログに書いた。
文字で生きていきたい気持ちは、みんなといると膨れたが、現実はそうもいかないだろう。
「ぼく」はこれからこの島を出て「わたし」に上陸しないといけない。
自分のアイデンティティとの折り合いもあった。

「わたし」は生物学的には女だが、子宮がない。
幼い頃、父に「男の子だったらよかったのに」と繰り返し言われて育ったせいもあり、自分の性が混乱したまま大人になった。
だから何かあったわけでもないが、この4年間「ぼく」と「わたし」を両立させて思った。
思う存分「ぼく」をこの世で楽しませたから、ちゃんと終わらせて「わたし」に統合しよう。

全く個人的な理由だが、周りは知る由もないので、アプリ閉鎖の混乱に乗じてさらっと卒業して去ろうとしたのだ。
漠然と逃げたい気持ちもあったかもしれない。

最後のブログのがるるさんのコメント

「あなたの人生を止めることは出来ないし、これからも応援しています。
ただ、文を書くことをやめないでください。
これからもどこかで書き続けて、いつか本を出してください。
そしてどんな形でもいいですから、私に分かるヒントを必ず本のどこかに載せてください。
私は絶対に手に取りますから。どんな片隅にあっても、必ずあなたを見つけ出します」

全文

花が咲く音を聞いたことがあるだろうか?
カサブランカみたいな、大きな花のつぼみが我慢しきれず、ぽんっとはじける音を。

そんな音が、彼女のコメントから聞こえて「わたし」の中の「ぼく」がよろこんだ。

なんて優しい呪いの言葉。
そんなこと言われたら「ぼく」たちあなたから逃げられないじゃない!

「わたし」たちは笑ってしまった。


あれから遠くにきたもんだ。
コロナだなんだと色々あったりしたけど、私は人生を一旦止めて、もう一度文字と向き合うことにした。
それが、今回の100日連続投稿だ。
書き続けて嫌になったり、ネタ切れを起こして腐したりしたら、やっぱり自分にとっての文はそこまでと言うことだろう。

でも、何もなかった。
むしろずっとずっと楽しかった。
お友達も出来た!(一度関われば全員友達です)

今後の身の振り方に見当もつかないが、今は結構簡単に出版も出来る世の中だし。
これからは「彼女に見つけてもらう」旅をしていこう。
探す、のではなく、見つけてもらう。

いつか会えたら謝りたい「ぼく」でなく「わたし」の姿で。
気づいている気もするけどね。

オープニングテーマはMr.Childrenの「終わりなき旅」でお願いします。


きっと、がるるさんはこうなる事を知っていたんだろうなぁ、もう本当にかなわないよぼくは。
100日目のnoteを、ぼくのがるるさんに贈る。

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