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知りたい怖さを詰めた本

毎年1人で開催し、1人で終えていく「1人肝試し2023」を終えた。

「1人肝試し」には規則がある。

1人肝試し規則第一条「1人肝試し」について口にしてはならない。
1人肝試し規則第二条「1人肝試し」について口にしてはならない。
1人肝試し規則第三条「1人肝試し」について口にしてはならない。

「ファイトクラブ」カッコいいですね

1人でやるから「1人肝試し」なので、他言もクソも無いんやけど。一回これをやってみたかっただけです。

「1人肝試し」とは
毎年、私が私の為に私の推薦恐怖図書を一年かけて選び、お盆の夜に人知れず読む。なぜ、盆なのかは地獄の釜が開くからで、特に深い理由は存在しない。

今年の一冊は「山の怪異大辞典」朝里樹先生の著書だ。

旅行の前にちょっと覗くも良し。

入院したりと何かと準備が上手く進まなかったので、今回は図書館で選んだこの一冊。
前々から本屋で見かける度、気にはなっていたが、立ち読みにとどまっていた。
なんせ買って帰るには重い。大きさはA5サイズ、小さめの女の顔くらいだろうか。厚みは大体2センチはある。
重さや大きさはAmazonで買えば問題ないが「恐ろしさに耐える力を試したい」が私の試みであって、肝試しの本質でもあり、本全国津々浦々の怪異を網羅したい訳ではない。
なので「大辞典」は肝試しとは違う気がする。ランチ何食べる?と聞きながら日本地図を開く様なものだ。

なのに何故、今回これを選んだのか?
これから先の自分が、きっとこの本をヒントに物語を構想する予感がしたからだ。
なので、本来の肝試しは来年に回す。

内容としては広く浅く、都道府県別の有名心霊スポットを網羅している本で、目次は地域ごとに分けてくれている。
ピンポイントで知りたい地域でも読めるし、欲しい県の情報だけを選んで読むことも出来る。神社仏閣の怪異だけで知りたい!などの我儘にも答えてくれる。
更に怪異の五十音検索もついている。例えば「大阪の巨人」について調べたいのであれば、インデックスの「お」から調べられる。因みにこれはオール阪神・巨人師匠のことではない。

情報は広く浅いが、歴史的な場所や神話や民話が重なる場所には、端的にその内容が書かれていて「ふぅむ」と顎が沈む。怖い社会の教科書と言ったところか。
「山の怪異」と書いているだけあって、狸や狐、貉の話が多く、続いて天狗も多い。
出典に関しても、各話毎に書かれていて、気になる怪異を掘り下げたい時のサポートもしてくれる。

「怖い」と思うのは人それぞれだが、私の印象としては

怪異はおばあちゃんに厳しい

ジェットババァ、ジャンピングババァ、ピョンピョンばばぁ、ホッピングばあちゃん、100キロばあちゃん、タタタババァ・・・

他にも山姥を中心に基本的にばあちゃんが多い。
確かに体力的にも虚弱なイメージの強いお婆さんが、マイケル・ジョーダンを彷彿させる跳躍をしたり、大谷翔平の球速を超える速さで猛追されると、当事者の理解を超えるだろう。シルク・ド・ソレイユにヘッドハンティングされる、もしくは世界が奪い合う日もそう遠い未来ではない。
でも、なんか。
敬老の日にはそのスポットに、ルマンドとシルベーヌを供えたい。

怪異は全体を通して女性が多い。
確かに心霊ドラマや映画などでも代表的なのは「貞子」や「伽耶子」など女性だ。「お岩さん」や「お菊さん」もだし、日本の怪異の歴史では不運な女性が活躍し、語るには欠かせない。
それに関して男尊女卑などの歴史を掲げて語るのもいいが、私はそれだけ女性の気持ちは強く、怪異にとっては魅力的なのだ。
男性の彷彿させる恐怖とは質の違う、独特のねたねたずるずると後を引く嫌な恐怖は女性の成せる技で、誇っていい。

そして、女に対して後ろめたい男の哀れさは、一生教訓として怪異になって語り継がれる。

今後この本を手元に置くかはまだ未知数の未来だが、明日返却を忘れないよう、しっかりと女の頭サイズのこれを鞄に入れておこう。

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