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4回泣けます。の一言は強い「コーヒーが冷めないうちに」

入院中の気分転換にサッと読める物語を買っておこうと選んだのが川口俊和さんの「コーヒーが冷めないうちに」だった。

写真下手すぎる可愛いあたし。

国内はおろか、アメリカ、イタリア、ニュージーランド、イギリスでも翻訳されベストセラー、世界中のメディア絶賛!と帯には大きく書かれている。

帯に騙されがちな私は、いつもなら一回手に取り「本当にぃ〜?」と口を曲げてから売り場に置くが、この時は帯の端に書かれていた一言のシンプルさに負けた。

「4回泣けます」

ひつまぶしの美味しい食べ方みたいな事言うやん。
私は常に涙活をしている、感情鉄板女。「泣ける」の一言をみると角砂糖を見つけた蟻の様に躙り寄り、スッと手に取り会計を済ませた。


この本の読みどころは「後悔」だと思う。
主人公は物語の舞台である喫茶店フニクリフニクラに集まる人達。ここにきて決まった席に座り、コーヒーを一杯注文する。
そしてそのコーヒーが冷めるまでの間、戻りたかった過去に戻れる。

4回泣ける、のはここに各々の事情を抱えてやってきた4人のエピソードを読めるからなのか。

「コーヒーが冷めないうちに・・・・」

喫茶店で働く数(従業員)がコーヒーを注ぐたび、彼女達は過去へ戻る。

過去へ戻っても現実は変わらないことを知って、言えなかった言葉を伝え、会いたかった人や会いたかった人に会いに行く。

事実は変わらないが、過去に戻った人達の心の変化で日常が変わるのか、なるほど。

4人の女性を軸に4話の短編になっているが、少しづつ情報量が増えていき、最後のエピソードまでに弾みをつけ、一気に読んでしまえる。
過去や未来だと時間軸をいじった話は、頭の中で整理しにくく苦手に感じる人もいる。
それを危惧して書き込みすぎる事もなく、シンプルな文体でさらさらと書かれていて読みやすい。

きっとこの本に目を止める人は、同じように過去になんらかの思い残しがある人なのかもしれない。

このくらいの不幸なら、私にだってある。
そんな風に、登場人物の誰かの心情が読者の琴線に触れる、優しい本だと思う。


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