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何者でもない者

12年もジムを経営していると、所属選手も増え毎月、誰かの試合があってサポートをしている。
それが仕事かと聞かれるとビジネス的には全く儲からないし、労働的にもメンタル的にも、そこから得れる報酬は合っていないと思う。
選手の試合に関しては自分自身の試合よりプレッシャーがかかるし試合を定期的に組んでいかなければいけない事自体、大きなストレスにもなる。

そんな状況なので練習に来ない奴とか最低限の練習量も熟せずプロになりたいとか試合に出たいと思う人は他所のジムに行って欲しい。
選手育成を本格的にやっているところからフィットネスジムメインでプロ選手を趣味程度で扱っているジムまで、幅広くジムはある訳なので自分の目的に合ったジムをチョイスするべきだ。

何故割に合わない事を続けるのは自分の通って来た道を、自分だけで完結せずに世代を超えて伝えていきたいと思い、死んだ時に後悔なく、人生を深いものにしたいからやり続けてる。
現在、ピラニアと呼ばれた男を更新しているが格闘技をやるには回り道をし過ぎた現役時代だった。
今、TRIBEに集う選手達には無駄にそんな経験はして欲しくないし練習に関しても合理的で無駄の無い練習をして欲しいと思っている。
無駄だったりする事に、実は意味や必要性があったりするので文章にすると難しいところでもあるのだが…
あと根本的には格闘技が好きなのでいろいろな理由を言ってもそれが根本にあるから続けてるのだと思う。
業界や競技を好きじゃ無くなれば今みたいなスタンスではやっていないだろう。

TRIBEの選手たち

そんな温度で練習環境を作っている訳なので本部ジム内では時間的にも広さ的にもギリギリで回している。
テナントの決まりで22時には閉めないといけないので混雑する曜日と時間帯によっては無駄な休憩や私語は禁止にしている。

混雑するTRIBE本部


東京は世界的にも人口密度が高く異質な土地なのでスペースにも限界があり、やむを得ない状況でそうしている。
ジムオープン当初は、選手から会員さんまで幅広く楽しめるジムを作りたいと心掛けていたのだが、選手を勝たせるのはそんなに甘いものじゃ無いとここ数年実感している。
趣味やダイエットで格闘技を楽しめるようにノース支部と言うのも数年前に作ったので、そちらでは引き続き格闘技で楽しんで頂きたいとは思っている。

そんな中でも本部の入会は多く毎年地方から多くの若者達が訪れる。
もう俺は今年で48歳なので息子や娘を指導しているような感覚だ。会員数は12年でずっと上昇している。
その環境と倍率から育つ選手達なので勝率は国内の中では良い方だと思う。
多少難しいオファーが来ても選手達と乗り越えていける。
国内で勝ち続ければ大きなイベントから声がかかる。今まで出てたイベントよりギャラが倍も違えばそちらを選択する。
選手達を国内タイトル争いに留まらせていないのだがそれが一番の理由である。

将来的に何かのチャンピオンにはなっていた方が名刺代わりにはなる。
俺が元DEEPの2回級王者だったのも少しは指導者として説得力は生まれているはずだ。

しかし現状で若手選手が国内タイトル戦線にしがみつくのはあまり得とは思えないのだ。
チャンピオンと言えど国内であれば修斗、パンクラス、DEEPの3団体に加えてグラディエーター、グラチャン、ネクサスも同じ階級にチャンピオンを抱えている。
それぞれの団体を主戦場にしている選手がいる訳なので日本の選手人口は非常に多いと思う。
ただ多くなったせいで広く浅い状態になり1つ1つの価値や強さが弱まっている状況だ。
ファイトマネーもチャンピオンであってもそれほど良いものではない。

25年も前、俺の現役時代は国内のMMA団体では圧倒的に修斗に力があって強さも競争率もずば抜けていた。
DEEPは足元にも及ばない状態だったからDEEPの主力選手と俺はして負けないように戦い続けていたのだが、今やDEEPはRIZIN効果で国内で最も選手が集まる舞台へと変わっている。
時代の流れとは本当に急で何もが数年後にどうなっているか解らない。
だからチャンスがあれば留まったりせずに選手達に勝負をしてもらうようにしている。
佐藤天はUFCに若松佑弥、三浦彩佳はONE、工藤諒司はPFL、後藤丈治はRIZINと戦える場所を探り勝負させたいといつも思っている。

前途したように所属選手達の国内戦での勝率は高くこれからも勝てば大きい舞台への挑戦は続いていくだろう。
まだ俺が体が動くし教える事はまだまだあるので前線で一緒に戦っているがあと何年体が持つかは解らない。
ひょっとすると今抱えている若手達が俺が一緒に勝負する最後のメンバーなのかも知れない。
まだ解らないけどぼんやりそんな気もする。

若手勝利後の控え室

選手達の価値と後藤丈治

昨年RIZINに出場した後藤丈治はツイスターで2連勝を挙げ、国内の格闘技ファンにも認知されるようになった。※別記事超えてきた者(有料)

大晦日にオファーが来るかと期待したのだが、それは無く、代わりに素人みたいなのが試合をしていた。
それは俺達がやっているものと違うし、イベント側がそちらの方が価値があると判断すればそれは正しいと思う。ただ本人もそうだけど悔しかった。
Youtubeの再生数やSNSのフォロワーが多かったところで世界に出ればその価値は何も無いに等しい。
日本だけで戦っているのなら国内のファンを増やしスポンサーを集い(大抵の企業がWin winではなくタニマチか税金対策)お金を稼ぐのをビジネスにするのは間違いでは無いだろう。

ただプロスポーツ選手であればファイトマネー有りきで実力に見合った報酬を受け取り、スポンサーであっても相互利益になるような優良な会社がサポートしてくれるのが他のプロスポーツと並べる条件であると俺は思う。
格闘技と言うジャンルでいってもボクシングにMMAは圧倒的に負けている状況である。

後藤に関しては年明けからも何度も試合の交渉を繰り返したのだが、当てはまる枠は無かった。
後藤が勝っている選手がRIZINに出ていたし、実は後藤はRTUにエントリーしたりもした。
連絡の行き違いもあったかなんだかんだかでそれは結局流れたのだがONE Friday nightが良い条件を出してくれたのでそちらに出場する事に決めた。
※発表が直前なのでスクランブルと思われがちだが3月中旬にはオファーを受けてRIZINにも了承済み。


3月に東京でチャトリ代表とミーティングしていたのだが後藤の話になると「誰だそれは?」と言った感じでプロフィールを見せても戦歴的にピンとこないし興味無さそうだった。
俺にしてみれば「見てろこのヤロー」と火が点くのだが海外の関係者は後藤を知る訳がなくRIZINの2連続々ツイスターもふ〜んと言った感じになって当然である。

厳しい選択だと思う。前戦から半年以上空いてしまった。しかしポジティブに前を向く。
決戦は明日、万全で勝負できるタイミングだ。
試合に関して本人の心境はこちら

ONEFridayFights61 でイリアス・エジエフ(ペルラージ共和国)と激突
U-NEXTでライブ配信をお見逃しなく
5月3日 午後9時30分 第1試合

勝負

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