ひとりだち

起きてきた息子が「寒い」と言っていた。

なので「スリーパーを着たら?」と言った。

彼は暖かいスリーパーを持っているのである。最近見ないけど。どこに置いたか知らないけれど。捨てることはないだろうから、どこかにはあるはずである。

彼自身もどこに置いたか覚えていないようで、少しの間スリーパーの行方を考えているようだった。そして

「どこいったかわかんない」

と言った後

「たぶんスリーパーはひとりだちしたんだよ」

と言った。


6歳らしからぬ言葉に吹き出してしまった。ひとりだち。どこでそんな言葉を覚えたのだ。思わず師匠にひとりだちを許され、修行の旅(?)に出るスリーパーを想像してしまった。

「またいつか帰ってくると思うよ」

そうだね。スリーパーとして一回り器の大きくなった(?)彼は、故郷に帰ってくるのかもしれない。そしてまた息子をあたためてくれるのだろう。


元は息子がきちんと片付けていなかった、という話で、場合によったら喧嘩になる未来もあったと思うのである。「ちゃんと片付けないからこんなことになるのよ」なんて私がブーブー言うことも、まぁ、我が家はそこまで無いんだけど、ゼロってことはない。

だけど「ひとりだち」の言葉ひとつで険悪さとは無縁になってしまった。

言葉ひとつで随分変わってしまうな、何事も取り方次第だな、と思った話。

何かがなくなった時も「ひとりだちしたんだよ」って考えたら、ちょっと楽しくなれるのかもしれない。



ではまた明日。


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