調理テクニック紹介〈Spherification〉
見出し画像

調理テクニック紹介〈Spherification〉

分子料理っぽいテクニックを紹介するシリーズ。英語でSpecificationと呼ばれるこのテクニックを日本語に訳すると『球状化』になるでしょうか。身近なところでは人工イクラなどの製造に使われている技術で、エルブジが料理に応用したことで世界に広まりました。定着した日本語の訳語がまだないので、ここでは〈スフィア〉と呼んでいきます。

簡単に説明するとアルギン酸ナトリウムとカルシウムを反応させて、液体をゲル状の膜で覆う、というもの。今日はごく基本的な原理が理解できる『ヨーグルトのスフィア』をつくります。

材料
ヨーグルト 250cc
シロップ 大さじ2 (同量の水と砂糖を沸かし溶かし、冷ましたもの。もしくは市販のガムシ ロップ)
アルギン酸 2g
水 500cc

まずは基本原理を理解しましょう。アルギン酸はカルシウムと反応することでゲル化(ゼ リー状に固まる)する性質があります。先ほど人工イクラの例を出しましたが、人工イクラのような小さな粒々は『カルシウム水溶液にアルギン酸水溶液を落として』作ります。

今回は『アルギン酸水溶液』に『ヨーグルト(カルシウム)』を落としてカプセルをつくります。この方法は通常のSpecidication(アルギン酸水溶液にカルシウム水溶液 を反応させる方法)とは逆なので、Reverse Specidication(逆球上化)と呼ばれています。

ヨーグルトにはすでにカルシウムが含まれていますので、シロップで甘みと濃度を調整するだけでOK。その前にアルギン酸水溶液を準備します。

アルギン酸ナトリウムは食品グレードのものを使用してください。Amazonで 『アルギン酸ナトリウム』と打ち込めば簡単に購入することができます。(例 amazon アルギン酸検索)50gで1000円以下でした。

水500ccにアルギン酸2gを溶かします。アルギン酸は水に溶けづらいですが、冷蔵庫に入れるなどして時間をかければ、やがて水和します。

泡立て器で混ぜて溶かし・・・・・・

冷蔵庫で一晩置くか、真空包装機にかけて空気を抜きます。

アルギン酸水溶液にヨーグルトを静かに落としていきます。ちなみに無印良品製の計量スプーンの大さじが使いやすいです。

カルシウムが反応して、丸く固まります。

とりだすとこんな感じ。

水につけて表面のアルギン酸水溶液を洗い流します。

こんな感じ。食べるラッシーです。表面はゲル(ゼリー状)で噛むと中から液体のヨーグルトがあふれ出てきます。

このテクニック。どのように応用していけばいいのでしょう。例えばアジアベストレストランランキングの常連、バンコクのガガンではアミューズとしてラッシーのスフィアを提供しています。インド出身のシェフらしい演出ですが、忘れてはいけないのはテクニックは所詮、テクニックであるということ。料理に組み入れるのはそれなりの文脈が必要で、面白いからといって料理に組み込むのは考えものです。ガガンの場合はインドの食文化という文脈があるので提供する意味があるわけです。

エルブジの料理にエスプーマにかけたバニラ風味のマッシュポテトがあります。これもオリジナルのジョエル・ロブションによるじゃがいものピュレを知っていないと面白くない料理です。エルブジの料理を食べて「おいしくない」と怒る人がいましたが、それはちょっと間違った感想かな、と。
歴史とコンテクストを知っていないと楽しめない点は現代料理は現代美術とちょっと似てます。いずれにせよ、テクニックだけを表層的に真似して、、、例えば味噌汁を球状にしてもなんの意味もないということ。新しいテクニックは慎重に使いましょう。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
樋口直哉(TravelingFoodLab.)

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!

ありがとうございます。料理のリクエストがあればコメントに是非
樋口直哉 作家・料理家 主な著作として小説『スープの国のお姫様』(小学館)ノンフィクション『おいしいものには理由がある』(角川書店)料理本『最高のおにぎりの作り方』(KADOKAWA)など。