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水で料理は変わるか〜豆腐編〜

水で料理は変わるかを検証するシリーズ。

水と料理の関係を考察するのは今にはじまったことではなく、雑誌のバックナンバーを漁っていると専門料理1996年の11月号の特集「水について考える」に検証「水は料理の味を変えるのか」という記事を見つけました。なかで水のテイスティングや出汁の検証を行っているので、気になったのは「豆腐を水につけて味の変化を調べる」というもの。

興味深いのは水につけることで豆腐の味が変わった、という記述です。なかでも

こっちの豆腐はどうかな。……すごいですよ、B。胡麻豆腐の味になっている。化学変化したっていうか、乳化したというか。(中略)味だけではなくて、柔らかくするのも不思議ですよね。

そんなに変わるとしらたら、これは面白い。早速試してみました。

専門料理ではミネラルウォーターの銘柄は記されていませんが、カルシウムやマグネシウムの含有量は記載されており、豆腐の味が変わる水はヴィッテルと推察できます。

3時間、ヴィッテルに浸けます。仮説としては豆腐は塩化マグネシウムで固めているわけですが、マグネシウムやカルシウム分の多いミネラルウォーターにつけることでなんらかの変化があるのでは……というもの。

せっかくなのでさらにマグネシウム量の多いコントレックスと温泉水も比較してみます。

温泉水を選んだのはこちらの製品のphが9.5だったから。御存知の通り豆腐は大豆のタンパク質を酸で凝固させ、固めたもの。アルカリ性につければゆるむのでは、と思ったからです。紙面でおこなわれたとおり、3時間水に浸け、その後、新しい水に入れ替えました。

 

楽しみに試食です……あれ? 食感にはなんの変化もありません。紙面とは違う検証結果になりました。味の違いはあるのでしょうか? はじめはたしかに違う、と思ったのですが、それは外側の水を一緒に口に含んでいるからで、外側を削ってしまうと味はまったく変化なし。化学変化というよりも水の味、そのものの影響のほうが大きいと思いました。ちなみに水に浸けていないものと比較すると、水に浸けたものはややすっきりした味になっていますが、風味がやや抜けた印象もあります。

この一回の結果だけではなんとも言えないところですが、温泉湯豆腐のように加熱すればPhによる反応は進むことはたしか。ただ、水に浸けただけでは固める段階でタンパク質は凝固してしまっているので、マグネシウムやカルシウムによる影響は少ないかもしれません。ちょっと継続的に検討が必要な事項でした。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!