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冷たいビールに最高に合う! ナスのやみつき山椒揚げ

今回のテーマは、ナスの唐揚げです。片栗粉をまぶしたナスを高温の油でさっと揚げて、ジューシーで香ばしい仕上がりになります。切ったナスは水に浸けてアク抜きするのが定石ですが、この説明は誤りだそう。水に浸ける本当の理由についても紹介しています。

ナスは夏から秋にかけてが旬。様々な料理に使えますが、やっぱり定番は揚げ物。今回は薄く衣をまぶしてから揚げ、香り油と花椒塩で味付けしました。冷たいビールと最高の相性です。

ナスはトマトやきゅうりと同じ果菜類。94%が水分ですが、果汁が出にくいという特徴があり、加熱してはじめてジューシーさが出てきます。この唐揚げは高温短時間の加熱で水分を内側に留めるのがおいしさのポイント。

ナスの山椒揚げ

材料
ナス…2本(300g)
片栗粉…50g
サラダ油…大さじ1
にんにく…1片(みじん切り)
赤唐辛子…5本(ヘタを切り落として、種をとりのぞく)
花椒…小さじ1
塩…小さじ1/3

1.ナスは皮を剥き、食べやすい大きさに切る。片栗粉をまぶしてから、190℃の油(分量外)で表面が薄く色づくまで1分30秒ほど揚げる。取り出してザルなどで油を切る。

2.フライパンにサラダ油、にんにくのみじんぎり、赤唐辛子を入れて、中火にかける。薄く色づいてきたら1のナスを入れて、火を止める。花椒と塩で味付けし、全体を軽く混ぜ合わせ、皿に盛り付ける。

ナスを水に漬ける本当の理由

ナスのおいしさの鍵を握るのはグアニル酸といううま味成分。グアニル酸は少量あるだけで野菜のうま味であるグルタミン酸の味を強くしてくれるのですが、ナスのグアニル酸は80℃で加熱すると最も増えるという報告があり、これが蒸しナスの美味しさの根拠となっています(堀江秀樹『野菜の加熱にともなうグアニル酸の生成』)。

表面を衣で覆う唐揚げであれば内側がナス自身の水分で蒸された形になるので、素揚げよりも甘さを感じると思います。味付けには先日、紹介した汁なし担々麺に使用した花椒を再び使いました。塩と花椒を混ぜ合わせた山椒塩は揚げ物には鉄板の調味料。スパイスの風味は古くなると落ちていくので、こんな風にして早めに使い切っていきましょう。

ナスは油と相性がいい、というのは昔から言われていること。ナスにはポリフェノールに由来する独特の渋みがあるのですが、油を加えることでそれが感じにくくなるからです

ナスは「切ったらアクを抜くために水に浸ける」と料理書には書かれています。しかし、ナスのポリフェノールは水に溶けないため、この説明は誤りです。ナスを水に浸ける本当の理由はそのまま放置すると色が変わってしまうから。

ナスを切って放置すると茶色く変色してしまう現象はナスに含まれるポリフェノールオキシダーゼという酵素が酸素と反応することで起きます。だから、水につける=空気に触れないようにすることで色が変わるのを防げるのです。逆に考えると切ってすぐに揚げるのであれば、水に浸ける必要はとくにありません。

ただ、水につける工程が無駄というわけではありません。ナスを水にさらすと食用油で調理した際にナスの表面に付着した油にポリフェノールが移行しやすい、という報告(黒澤祝子『食用油調理におけるナスの全ポリプェノールとクロロゲン酸について』)があり、当該の論文の筆者は「ナスは水にさらしたほうがよい」と結論づけています。渋みの強いナスを調理する際には参考になる意見でしょう。しかし、現在のナスは渋みのない品種がほとんど。この論文の筆者の意見とは異なりますが、個人的にはやはりナスを水にさらす意味は薄いように思います。

さて、揚げたてのナスはカリッとしていますが、時間が経つとしんなりとしてしまいます。内側の水分が外側に移行するからです。そういう意味で、この料理はできたてを食べるのがベスト。今回は皮を剥きましたが、もちろん皮付きでもおいしくできます。「どちらがいいか」ではなく、好みの問題です。好みといえば辛党の方は赤唐辛子を刻むとパンチの利いた辛さが出ます。夏にぴったりの味です。

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