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まさに贅沢「わさび丼」の作り方

わさびは日本固有の野菜。飛鳥時代から薬として使われ、江戸時代になると栽培が広まります。1892年に開発された畳石式という栽培方法の普及によって、生産量は飛躍的に伸びました。日本固有の野菜というのは非常に数が少なく(他に山菜くらいでしょうか)日本を代表する食材、日本料理には欠かせない食材といっていいでしょう。

とはいえ、現在は「チューブわさび」が主流。最近は少なくなりましたが、昔は粉わさびが多く、本物のわさびを使う機会はほとんどないのでは。

ちょっと気が利いたスーパーであればわさびは野菜コーナーで売られています。ちょっと値段が張りますが、はっきり言ってそれだけの価値はあります。ワサビの種類は大きく分けると2つ。真妻系と実生系です。こちらは分かりづらいですが、全体が緑色なので実生系ですね。実生系はさっぱりとしてみずみずしく、お蕎麦によく使われます。

真妻わさびは高級品で、茎の部分が紫色なのが特徴。すりおろすと粘りがあって、日本料理屋さんでお造りに添えたり、お鮨屋さんが使います。

わさびは上がやわらかく、下が固いので、上からおろすのが基本。

鉛筆を削るように茎を落とします。

皮も薄く削いでおきましょう。

鮫皮のおろし器やおろし金でも目の細かいものを使うのが基本です。のの字を描くようにゆっくりとやさしくおろしましょう。

わさびの辛味成分は根の組織が物理的に傷つくことで、化合物が生じます。具体的にはグルコシノラートという化合物が酵素(ミロシナーゼ)によって分解され、イソチオシアナートとよばれる化合物群をつくるのです。ちなみにイソチオシアナートは100gのわさびに100mg程度含まれています。

「イソチオシアナート? それって大根に入っているやつ?」

そう思われる方もいるでしょう。そうです。大根や辛子の辛みもイソチオシアナート群に由来します。わさびも大根も同じアブラナ科の植物なんですね。ただ大根の辛みはわさびとは違い4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネートに由来します。

わさびの辛味成分はアリルイソチオシアナートによるものです。西洋わさびにもアリルイソチオシアナートが含まれているので、代用として使われたりします。でも、わさびにはその他に6-メチルチオヘキシルイソチオシアナートという辛さを鮮明にする成分が含まれていたり、甘みのもとである7-メチルチオヘプチルイソチオシアナートがあったり、弱い辛みがある8-メチルチオオクチルイソチオシアナートなどが含まれています。このメチルイソチオシアナート群は日本のわさびにしか含まれていない成分なのです。

さて、カタカナばかりで舌を噛み切りそうなので、さっそく食べてみましょう。おろしたてのわさびではないとおいしくつくれないのが「わさび丼」です。炊きたての御飯に鰹節をたっぷり。

そこにわさびをのせます。

しょう油をまわしかければ出来上がり。

今回はぜいたくして海苔ものせてしまいましょう。

どん。山葵丼のできあがりです。食べると鮮烈なわさびの風味があり、ご飯がいくらでも進む味です。イソチオシアナートは揮発性のため、わさびをすりおろしてそのままにしておくと空気中に拡散してしまいます。だから、おろしたてが一番なのです。これがまさにぜいたくな味。わさびを常備しておくとお刺身からステーキまであらゆる場面で楽しめるので、決して損はしません。

わさびを保存するときは乾燥が大敵。濡らしたクッキンペーパーに包んでから、、、、。

ラップで包んで冷蔵庫の野菜室で。水のなかに沈めて保存する人もいます(3日置きに水を替えれば一ヶ月は持ちます)ただ、風味は落ちていくので早く使いたくなりますし、どんどん使ってしまうので、そこまで日持ちさせる必要はないかな、と思います。

ちなみに切り落とした茎の部分はどうしましょうか? そのまま食べてもおいしいのですが、78℃の湯に10秒間通して、瓶に移します。蓋をしてしっかりと振って刺激を与え、冷蔵庫で3時間冷やします。

そうすると茎から辛みが出ているので、しょう油を注ぎます。今回は生醤油ですが、みりんで割ってもかまいません。

こうして作ったわさび風味のしょう油を料理に使ったり色々と使えます。捨てるのはもったいないので活用してくださいね。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!