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塩、砂糖に続く白い粉末調味料〜酸粉末を使いこなす〜

今回の21世紀料理教室のテーマは「酸」。ちなみに何度か説明していますが、21世紀料理教室は一般家庭で役に立つノウハウではなく、きわめてギーク的な内容であることを先に述べておきます。白い粉末といっても危ない話ではありません。

キッチンで活躍する調味料といえば塩と砂糖ですが、モダニストキュイジーヌ(現代的料理)ではそこにもうひとつ酸を加えることが提案されています。

日本で一番手に入りやすいのがクエン酸です。クエン酸はレモンやライムなどさまざまなフルーツの酸味で、意外なところでは梨の酸味もクエン酸によるもの。この粉末クエン酸を使えば塩で塩味をつけたり、砂糖で甘味をつけるのと同じ感覚で料理に酸味を加えられます。

「酸味なんか酢やレモン汁があるじゃないか」

という意見もあるでしょう。たしかにそうですが、もう少し説明します。

具体的な使用方法を説明しましょう。ビネグレットソース(ドレッシング)の基本は酢が油が1:3です。一方、昔は酢1:油4の比率が多く使われてきました。もともと日本人は酸味がそれほど好きではなかったからですね。1:4のドレッシングは油のまろやかさがあっておいしいのですが、酸味が弱いのが弱点。かといって酢を増やすと水分が増えるのでやはり油のおいしさが弱まってしまいます。

そこで登場するのがクエン酸です。油4:酢1に対して、少々のクエン酸を加えれば水分を増やさずに酸味だけを加えられる、という訳。これはamerican's test kichenで紹介されていた手法。

たしかに酸味がぐっと引き立ちました。酢の酸味は酢酸ですが、そこにクエン酸という異なる種類の酸味を加えることで味に複雑味も出ます。

クエン酸は入手しやすいのがメリット。こんな風に酢と組み合わせて使うのがわかりやすく、例えばオランデーズソースを作った時「あと少し酸味が欲しいけれど、これ以上酢やレモン汁を入れるとゆるくなるなー」という時はクエン酸を加えればいいわけです。

さて、次はオレンジジュースを200ml準備しました。

オレンジジュースの酸味はクエン酸+リンゴ酸。そこでこの2つの酸味を加えて酸強化オレンジジュースを作ります。

オレンジジュース200mlに対してクエン酸4g、リンゴ酸3gを加えるだけです。クエン酸だけを加えるとマイヤーレモン感がありますが、ここにリンゴ酸を加えるとふっとオレンジの風味が戻ってきます。オレンジジュースの酸味はクエン酸とリンゴ酸なので、その比率に戻るからでしょう。

リンゴ酸はやわらかな酸味があり、ヘストンブルメンタールチームがよく使っている印象。レモン果汁に少しリンゴ酸を足すだけでもおいしい酸味になります。

この強化オレンジジュース。phを下げてあるので、保存期間はぐっと伸びます。こんな風に冷蔵庫に入れておけばカクテルのベースにももちろんなりますし、ライムやレモン汁代わりにも使えます。粉末の酸味は他に酒石酸(卵白の泡立てを安定させる)や乳酸(即席のキムチなどを作るときに使います)などがありますが、とりあえずクエン酸を使ってみる、というはいかがでしょうか?

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!