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#42【東洋思想】一源三岐説について。

一源三岐説って聞いたことありますか?
私は授業で奇経八脈の衝脈について学ぶ際に、ちらっと先生が言っていたのを聞いたくらいです。
気になって調べてみましたので、今回の記事ではこの一源三岐説が何かについて書いていきます。


1.三才理論(さんざい)とは?

鍼灸を始めとした東洋医学には、拠り所とする思想(理論)があります。それが古代中国で発展した陰陽思想(理論)、五行思想(理論)などです。三才理論もその一つになります。

三才理論(さんざいりろん)は、中国の伝統的な思想の一つで、宇宙や自然界が「天(てん)」、「地(ち)」、「人(じん)」の三つの要素で構成されているとする理論です。これらの要素は互いに関連し合っており、宇宙の調和とバランスを保つために重要な役割を果たしています。三才はしばしば「天地人」と表現されます。

:宇宙や天気、自然現象を指し、これが最も高いレベルの力を象徴しています。
:地球や土地、自然環境を指し、生命を育む基盤とされます。
:人間社会や個人を指し、天と地の影響を受けながらも、自らの行動や選択によって環境や社会に影響を与える存在です。

三才理論は、風水や医学、占星術など様々な分野に応用され、物事のバランスや調和を重視する生活哲学としても影響を与えています。この理論に基づいて、人々は自然と調和しながら生きることの重要性を認識し、環境や他の人々との関係を大切にすることが奨励されています。

chatGPT/prompt「三才理論について教えてください。」

余談ですが、東洋医学が非科学的であるというのは間違いです。
三才理論もそうですが、陰陽理論や五行理論は当時の最先端の考え方であり、この宇宙の森羅万象を抽象的に捉えるために発展した理論体系です。
世の中を切り取り抽象化するという営みは、科学のそれと全く同じアプローチですので、東洋医学は実はかなり科学的な医学だと言えるのです。

2.一源三岐説とは?

一源三岐説は、「督脈・任脈・衝脈の3つの経脈が胞宮から派生される」という説です。一つの源(胞宮)から3つの経脈が分岐するので、「一源三岐」説です。
胞宮は一般的には「子宮」を指しますが、これは男性にも言えることなので、生殖器全般を指すという理解が良いでしょう。
生殖器全般からこの3脈は出ていますので、これらの経脈は生殖機能に最も影響を及ぼす経脈であると考えられています。

ではこの一源三岐説による3つの経脈を三才理論でどのように捉えれば良いでしょうか。
三才理論は「の気との気が交わりの気が生じる」としています。ですので、督脈・任脈・衝脈がそれぞれ天・地・人に対応することになります。

督脈は「陽脈の海」と呼ばれています。天は陽の性質ですので、督脈は天脈として良いでしょう。同じ理屈で、任脈は地脈となります。任脈は「陰脈の海」だからです。

そして、残された衝脈が人脈ということになります。天と地の間に人がいることから、人脈は天脈と地脈を結ぶものであるということが言えます。どのように結んでいるのかについては次に説明していきます。

要するに、「一源三岐説」は天地人の「三才理論」の視点から導き出された説だということです。

3.衝脈はなぜ「人脈」なのか。流注に「人脈」の特徴がある。

督脈が天脈、任脈が地脈であるというのは特に疑問を挟む余地は無いでしょう。では衝脈が人脈であるというのはどう解釈すれば良いでしょうか。
「人脈は天脈と地脈をつなぐものである」と先ほど言いました。その様子は流注によく現れています。

現在の鍼灸の教科書では、衝脈は胃経の気衝から起こり、腹部で腎経を上っていくとされています。そして衝脈の八脈交会穴は脾経の公孫とされています。

八脈交会穴が脾経の公孫に設定されているのがミソです。公孫だけポツンと孤立しているのは経脈としてはおかしいので、これらは繋がっていると考えるのが自然です。また気衝だけ胃経のツボでそこから腎経のツボにすぐ乗り換えてしまうというのも違和感があります。

実は古典においては、衝脈が胃経や脾経にも繋がっているとされているようです。胃経では上下の巨虚まで、脾経は公孫までです。ですので、衝脈は上半身の腎経と下半身の脾胃を繋いでいると言えます。

上半身(天)と下半身(地)にまたがっているという点で、天と地を繋いでいると解釈することができます。そして生理作用においては腹部の腎経は先天の精を主っており、下肢の脾経は後天の精を主っています。衝脈は先天の精である腎気と後天の精である脾気を混ぜ合わせる唯一の経脈であるとも言えます。

さらに衝脈の別脈は脊柱の前面を上り、膀胱経の大杼まで伸びていると言われています。督脈と非常に近いところを上っており、督脈にも繋がっているというように解釈ができます。
任脈においても腎経は任脈の五分隣を走行していますので繋がっているというように解釈できるでしょう。
流注においても督脈と任脈をつなぐように走行していることから、天と地をつなぐ「人脈」として理解することができます。

4.まとめ

まとめますと、まず督脈・任脈・衝脈の一源三岐説というのは、中国東洋思想の三才理論の影響を強く受けている説であることが言えます。
そして、三才理論では宇宙や自然界が天・地・人の3つの要素で構成されていると考えます。

督脈が天、任脈が地、衝脈が人という分類です。
督脈は「陽脈の海」なので天、任脈は「陰脈の海」なので地、天脈と地脈をつなぐ人脈が残った衝脈ということになります。

衝脈が督脈と任脈を繋いでいるというのは、その流注から解釈されます。
実際に流注が督脈と任脈を繋ぐようなかたちになっていること。そして先天の気を流す腎経と後天の気を流す脾経をつなぐ唯一の経脈であることなどがその根拠になります。

参考文献
高野耕造,2022,臨床に役立つ奇経八脈の使い方(第2刷),東洋学術出版社

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