見出し画像

2023夏の読書おすすめ3冊目


ゲーム制作のお作法を理屈込みで細かく教えてくれる稀有な本

この本は、ビデオゲーム制作で生まれたさまざまなノウハウは、ゲーム以外の産業でも役に立つよ、という立ち位置の本です。ゲーム業界以外なら関係ないじゃんっていうことはないんです。ゲームに詳しくないレベルのひとにも十分理解してもらうために、具体的に細かく書かれているので、ゲーム制作志望の学生にとても役に立つ本だ、と判断して学生のみなさんへ紹介しています。

この本のメリット

網羅的で細かいことです。これでもかというくらい事例がたくさん出てきます。しかもただ結論があるのではなく、歴史的背景や成立した背景や目的など、いざ自分が考えるときのヒントとなり得る情報がギッシリ書き込まれています。まさに労作という言葉に値します。元仕事仲間の故岩田社長からも「すごいがんばったね」とねぎらいの言葉があったと聞いても納得の濃さです。
そう、著者のサイトウ先生はもともと岩田さんたちと仲間のゲーム制作者だったんですが、大学でゲームを教える事になりこの本を執筆したそうです。スゴイ仕事量です。私にはちょっとマネできません。

この本のデメリット

遊びやすさ、マニュアル不要を標榜するゲームニクスですが、とても残念なことに、本としては読みにくく結果として初心者にはとっつきにくいかもしれません。字も小さいし組版も不適切。章節や箇条書きの記号や番号の設計もあまり良くありません。正直言って、ブックデザインがダメなのです。著者ではなく編集者やアートディレクションの問題だと思いますが、私は部外者なので詳細はわかりません。(私から見て)ただ内容がむくわれないブックデザイン。悲しいですがそういう本はたまにあります。
本当は前回のUIデザインの教科書のようにそろそろ全面的にリライトしていただいて、すごく見通しの良くなった本をお家にお迎えしたいところですが、引用しているゲームのスクリーンショットが多すぎで、再度掲載許可も難しそう。
だからこのまま買うしかないのです。そういう本です。任天堂のスクショがノンクレジットでこんなにのってるわけがない。いろいろ奇跡の本だと拝んで買いましょう。

ゲームニクス理論5大原則(本編より引用)

  1. 直感的で快適なインタフェース
    入カデバイスの操作性に合わせた画面デザインと操作の約束ごと
    アクセシビリティーの良い操作感
    →画面を見ただけで理解できる構成と演出

  2. マニュアル不用のユーザビリティー
    操作を誘導する画面情報の提示
    マニュアルを製品に組み込みストレスなく提示する方法論
    →必要なときに必要な情報を押しつけでなく提示する

  3. はまる演出
    無意識にはまる効果のゲームテンポとシーンリズムの方法論
    発見する喜びや意欲を持続させる方法論
    →思わず夢中にさせてしまうノウハウ

  4. 段階的な学習効果
    意欲を持続させる目標設定
    押し付けでない学習効果の導入
    →楽しく長時間ゲームをしてもらうためのノウハウ

  5. 仮想世界と現実世界のリンク
    現実(リアル)世界を仮想(バーチャル)世界に取り込むノウハウ
    仮想的なゲーム世界で現実世界の要素を利用するノウハウ
    →実生活とのネットワーク連携で、今までにない利便性と感動を提供


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?