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純文 ショートショート集

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純文でつづられたショートショート集。名前のない語り手によるお話。
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記事一覧

「春の夢」The Dreams of Spring #シロクマ文芸部

「春の夢」  最近、春なのに、あまり良い夢を見ることができていない。  一昨日は、過去に…

東西 七都
3週間前
9

【SS】風車 The Windmill #シロクマ文芸部

「風車」  もう少しで、つまずいてしまうのではないかと思うくらい、わたしは速く走った。 …

東西 七都
1か月前
11

【SS】桜色 The Color of Cherry Blossom #シロクマ文芸部

「桜色」 家族で上野公園に桜を見に行ったことがある。 よく晴れた日で、公園内は既にたくさ…

東西 七都
1か月前
4

【SS】クマローの行き先

高校から帰ってくると、わたしは自室のドアを開け、部屋の左手にある学習机を見て驚いた。 そ…

東西 七都
2か月前
2

【SS】しのぶれど思ひそめにし我が恋は

帰りの電車の中で吊革につかまり、俺はそのとき、車窓から見える遠くの光景を眺めていた。 そ…

東西 七都
2か月前
2

【SS】高架下

私はそのとき、平凡な道路と国道にかけられた高架橋へと足を進めていた。 高架橋はそれほど大…

東西 七都
2か月前
3

【SS】夏の花火

夏休みも半ばになり、あたしは家のカレンダーを見て心を躍らせた。 明日の土曜日。 日付には赤丸がされてあり、市の花火大会が開催時間とともに記されている。 既に、母に無理を言って浴衣も準備してある。 紺色の地に、小柄の花や和菓子が描かれた少し子どもっぽいけれども、オーダーメードでつくってもらった初めての浴衣だ。 明日になったら、浴衣に袖を通せるのが待ち遠しい。 あたしは浮かれるような気分で、その日は眠りについた。 翌日のこと。 午後になって日が傾くにつれ、あたしは窓から外を眺め