「言葉を、みすてないで ~文学部部員の推理~」 #01
プロローグ
学校の廊下を歩き、つきあたりの部屋の扉、一歩手前。
そこで、あたし——和渡部愛唯は立ち止まった。
図書室のそばにある小さな部屋。
ここは、市立善理高校文学部の部室で、部として定員数をやっとそろえたぐらいの文学部にはふさわしい、活動の場所だ。
あたしは、扉に二回、こぶしを軽くぶつけてノックをする。返事はない。
扉には中をのぞく窓があるものの、すりガラスが、ぼんやりとしか中の様子を見せてくれない。
あたしは意を決し、そうっと扉を押し開けた。