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シュペルターと歩む15年記 #30

INかOUTか?


2017年の夏休み自由研究で経験した十二単作りで、
裁縫の基本哲学は”地をにして縫い、にひっくり返すこと”
であると学びました。

すなわち"Inside is out ,and Outside is in"ということですね。 

もう一つ服でInOutに関わる大切なことといえば・・・

そう!
シャツのインするか、アウトに出すかということです。
斯くいう私は子供の頃は断然イン派であったという記憶あり。

しかしながら1980年代になると
シャツの裾インオタク
という概念が出現し、
当時中学生の私としてはオタク踏み絵としてシャツの裾を出すべきなのか?
あるいは、本当の自分を貫くべきなのか?
と悩むことになるのである。

それ以降の自分の服装をアルバムで振り返ってみると
大学生になっても就職しても、はっぱりイン派を貫いていたようである。
まぁ類は友を呼ぶというか、
写真に写っている周りの人もみんなインが基本なので
違和感はないのですが。

ところがパラパラとアルバム(というかデジカメデータ)をめくっていると
イン派からアウト派への転機が!

ちょうどゼニファーとのお付き合いを初めた頃からです。
これは、身を固める前にして、やっと色気づいたということではなく
ダニエル・クレミューなどのアウト着用が似合う服を買うようになった
ということなのだと思うのです。(同じことか!)

そうなると、心の窓が開けたというか
これまで見えなかった景色が見えるようになり、
やっぱり今の世の中、アウトが普通なのかなぁと思うようになりました。

おおよそ20世紀はイン21世紀はアウトとでも
言っておけばよいのだろうか?

しかしファッショントレンドというのは一筋縄ではいかぬもの。
ある日、LEONを見ていると
モテるオヤジはシャツもイン!」なる記事が!

なになに?
記憶によるとこんな内容でした。
”今敢えてシャツをインで着るのがモテるオヤジの着こなし。
ただし、ただインすれば良いものではない。
ダブついたシャツはやっぱりダサい。
ムチピタでセクシーに着こなすのがオススメ。”

1980年代のインと2010年代のイン

う~ん、なかなか難しいものだ。
トトムはダイエットしなければ当面インはむずかしそう。

やはりイン―アウト問題は一筋縄ではいかない。

すでのシャツのイン‐アウト問題は、一説には”着る人次第”という結論が出ているらしい

TPOにもよっても変わり、
ファッション専門家でも悩むという微妙なる問題らしい。

しかしシュペルターにおいては旗色を鮮明にせねばなるまい!
一体何の旗色か?

もちろんイン―アウト問題ですよ。

シュペルターというかモーターヘッドのって何?そんなのある?
と思われるでしょうが、あるんです

割と目立つわりには、詳しい設定を見た事がない!という、
あの腹部の『蛇腹装甲』!
その下端の処理のことです。

見た目”イン”に見えるのですが、あれは腰周りの装甲に隠されているだけ!
いわば、腰にカーディガンを巻いたファッショニスタ
果たしてシャツの裾をパンツにインしているのかどうか?
という謎が残る訳です。そう、残っちまうんです。

じ~、左からイン? アウト? ?? アウト イン?


 
さてこの謎を解くためには、この蛇腹装甲というやつは
一体どういう機構なのかを考える必要がありますが、
実はこの蛇腹装甲自体に包まれています。
まさに謎が謎呼ぶ殺人事件。

いろいろと文書をあたってみても、
腕や足関節、背骨となる竜骨
内蔵されるイレイザーエンジンコクピット
など様々な詳細設定画があるなかで
腹部の装甲だけが見当たりません。

あの有名な2003年のサイレン内部構造図でも腹部装甲は描かれておらず、
竜骨には腹部の蛇腹装甲をセットするためのビルジキールという
ロックパーツが付いている』こと
そして
『胴体部は基本的に竜骨が支え動きのほとんどを行っているが…
(中略)これはスッカラカンの胴体部を補強する目的もかねている』
という説明文だけ書かれています。

みんな~、中は空っぽだぞ~

また1993年に描かれたヤクトミラージュの内部構造図では
幸運にも腹部装甲が描かれていますが、非常にラフスケッチであり
『MHはこの蛇腹状の腹部の中には竜骨しかない』と
同じような説明がかかれています。

それ以外には、エンプレスの特殊な腹部装甲を除き
腹部装甲に関する説明は見つけることができませんでした。


でも永野先生ご自身、MHの腹部にはかなり気を遣ってらっしゃるようで
作品発表の年代とともにどんどんデザインが進化していきますし、
モーターヘッドによっても特徴があったりする
こだわりの部分なのですが。

まずはコミックスでの初”腹部”登場シーンは
設定上の星団歴3960年
バッシュ・ザ・ブラックナイト。

5代目黒騎士グラード・シドミアンが操縦するため
ブラックグラードとも呼ばれる、バッシュ最終形態にして
永野氏による初期デザインのMHです。

いやいや、最初に登場するモーターヘッドはL.E.Dミラージュだ!
というファイブスターの方。

正確に言うと最初に搭乗するのは
バッシュに弾き飛ばされたL.E.Dのベイル(盾)

そしてその次にL.E.Dとバッシュは同じコマで同時に登場するのですが
確かにL.E.Dが手前でアップ。背景にバッシュです。
2騎とも『いや~ん』とばかりに腹部を腕で隠している。

肝心なところが見えんぞ!


そしてまたL.E.D!先ほどとほぼ同じカットで腕が邪魔
L.E.Dの頭部のカットを経て
バッシュ。正面から描かれるがいかんせん小さくてラフな絵、
と見開きページの中で目まぐるしくカットが変わり、
とうとうバッシュの腹部が明らかに。

見える!私にも見えるぞ!

だけど、そんなに一生懸命目をこらさなくても設定画がありました。

この時の腹部装甲は『蛇腹』というよりは
小さなパネル状の装甲板を貼り込んでいるという感じ。
腹筋の割れたマッチョなお腹ていうか)

そう、エルガイムのA級ヘビーメタル(HM)
バッシュの腹部を少し進化させたものに見えます。
( ヘビーメタルの略表記(HM)はモーターヘッド(MH)の
逆なんですよね。)

似てる?似てない?

なお機械用語としての『蛇腹』
ないしは板状の部材で作られる山折り谷折りの繰り返し構造"
であって、蛇の腹とは構造が違いますし、
バッシュの腹部は、いずれの『蛇腹』とも似ていません。

帯状の鱗が伸び縮みする膜でつながっているのが、蛇の腹
蛇腹ホースの伸縮は板の折れ曲がり角度の変化によって生じしている

同時に登場するL.E.Dミラージュも『蛇腹』というより、
やはり腹筋タイプです。
こちらはバッシュのように腹直筋だけではなく
腹斜筋まで発達したタイプですが。

もう少しコミックスに沿って登場するMHの腹部変化を見ていきます。
設定上の時代は星団歴2988年に戻り
1巻後半 
主役MH ナイト・オブ・ゴールド(K.O.G)登場! 
腹部はL.E.Dと似た構造に見えます。

2巻前半
ヤクト・ミラージュ ただし装甲は未装着状態
星団歴2957年の回想場面 サイレンF 
コミックスでは見えませんが、設定画ではうろこ状
非常に独特な装甲である。

2巻後半 
本編に戻り星団歴2989年 ブーレイ VS. 前期型ジュノーン
ブーレイは傭兵団の名称であって、
この傭兵団が使用する主力のMHブーレイと呼ばれます。
この時登場するMHブーレイは、後の設定で
T‐232スプートニクというロシアっぽいネーミングがされています。
(ちなみにロシア語のスプートニクは『衛星』という意味らしい。)

腰や胸の装甲に隠れて腹部がほどんど見えないのですが、
蛇腹風のスジがいくつも描かれているもの。

前期型ジュノーンは、エンゲージSR3とも呼ばれますが
後にデザインされるエンゲージSR3設定画
ジュノーンとしてのコミックス初登場時では
腹部装甲は全く違っていますので、ここはコミックスの絵に合わせます。

コミックス版では1巻で出たバッシュやL.E.Dの腹部デザインが
踏襲されていますが、
L.E.Dの腹部側面にある機械チックなディティールがなくなり、
全面シンプルな装甲板になっているため、
デザインとしてはより洗練されて見えます。

3巻
後期型ジュノーン 
こちらも設定画よりもコミックスのほうがしっかり描き込みされている
変則パターンですので、やはりコミックスの絵を参照します。
前期側よりもより細かく分割された装甲板が重なり、
いわゆる”蛇腹装甲”の原点になっているように見えます。

蛇腹とは言い得て妙

モーターヘッド腹部装甲の可動する機構はわかりませんが、
なるほど外観上、こういうのが”蛇腹装甲”といわれるタイプなのだろう。

移り行くストーリーにおいて、
この時はジュノーンを旗騎とするコーラス王朝の同盟軍として登場する
L.E.Dバッシュ
設定上の時代(星団歴)はコミックス初登場より遡りますが、
逆にデザインは”より新しい”蛇腹装甲”に近づいている。

考察が迷走する前に、今一度ゴールを明確にしておこう。

”モーターヘッドのシャツたる腹部蛇腹装甲
裾の処理がどうなっているか?を考察する
でした。

なんとかしてベールに包まれた蛇腹装甲の機構を想定することが、
そのための第一歩です。
そういう認識を持ちつつ更に考察を進めていきます。


   
3巻に登場するその他のMH
ナイトオブゴールド 2988年に引き続き登場、でも腹部は見えず
サイレンFも2巻での回想シーンから12年も経っての再登場。

腹部は前面付近の一部のみ描写されていますが、
ボークスのガレージキットはこの描写をもとにして、
並みいるMHの中でも異彩を放つ腹部デザインで造形されています。

A-TOLL登場 腹部見えず

4巻以降はいちいち腹部のコメントはせず、
登場する主要MHの名前を挙げ、あとでデータ整理してみましょう。
4巻 我らがシュペルター登場
   アシュラテンプル登場
5巻 破裂の人形バング
7巻 オージェアルスキュル(時は星団歴2992年)
8巻 テロルミラージュ
   ルン搭乗版のシュペルター
   ヤクトミラージュ
    星団歴4100年の未来にて
     パトラクシェミラージュVS.エンゲージSR4
     クラウド・スカッツ
9巻 AD8383年(星団歴の前の超帝国時代です) 
   マシンメサイア イェンシング
   星団歴2997年 A-TOLLスクリティ&エンプレス
   
(エンプレスは星団歴2499製造の国宝級MH)
10巻 星団歴2998年 サイレンE
   星団歴3007年AKD壮栄祭 
       L.E.DミラージュV3、K.O.G V3
   それを見て対抗心を燃やすエンゲージSR1
    
(こちらは星団歴2479~2722年製造のコーラス家家宝)
   星団歴3010年 マシンメース アウゲ
  
  (星団歴980年より以前に作られたと思われる超帝国遺産) 
11巻 冒頭のシーンは、時間を少しばかりすっ飛ばして星団歴3075年
    マイティα暁姫ファントムエンプレス
   11巻のメインは星団歴3030年 魔導大戦
   たくさんのMHが入り乱れちゃいます。    
   ハスハ連合共和国 A-TOLL
       V.S.
   バッハトマ魔法帝国 バッシュ・ザ・ブラックナイトアウェケン
 
   フィルモア帝国 プロミネンスネプチューン
           サイレンEサイレンAサイレンR
      V.S.
    メヨーヨ朝廷 フランベルジュテンプルアシュラテンプル

    その他群雄割拠
    カーグ・ジャスタカーク連合 グルーンシャクター
    ブーレイ傭兵騎士団 ブーレイ T-233ボストーク
    コーラス王朝 エンゲージSR1
  永野先生お疲れさまでした。

12巻 星団歴3031年 ガスト・テンプル 
    エンゲージSR1 V.S.アウゲ
    エンゲージSR1アルル王女とSR3セイレイ王女の舌戦
    A-TOLLスクリティが交戦するロッゾ帝国の
    懐かしのマグロウや
    ずいぶんとスリムになったヘルマイネ達
    それを助太刀するファントム慧那騎
   3030年?突如登場 K.A.N(カナルコード・エリア・ナイン)
    しーんぱーいないからね♪
   最後を飾るのは、ルミナスミラージュ!

モーターヘッド12巻にて”一巻の終わり”!
13巻からはGTMに変わります。

さて、もう少し情報を整理しなければ
『で、目指すゴールに辿り着いたの?』
批判を受けそうです。
モーターヘッドの腹をどう料理してくれようか。

まずは各MH(の腹)がお話に登場した時の年代順に並べる。
というのもコミックスはほぼ年代順なのですが、
時々過去に戻ったり、急に未来に飛んだりと大変自由なので
叙述トリックに騙されないように可視化する必要があるのです。

時間の流れに沿った話を”本編”として、
本編に対応するコミックス巻数を記載。
更にコミックスの各エピソードがニュータイプ誌にて発表された年代
(当然西暦・・・現実のグレゴリウス暦です。)を
”そのモーターヘッドが永野先生によりデザインされた年代”
と仮定して年表に併記します。

時間が前後する挿入話部分は巻数に( )を付けて区別し、
設定年代とコミックス登場年代が食い違っていることを示しています。

また永野先生はデザイン画を作成し、かなりの期間寝かせた後に
コミックスに登場させる場合がありますので、
実際のデザイン時期は、永野護作品集『DESIGNS』で確認します。

なおこのように、登場年代順に並べるのは、
モーターヘッド・マイト&マイスターにより(永野先生ではなく!)
設計・製造されたモーターヘッド腹部装甲デザインの
ストーリーに沿った変遷を考察するためです。

勿論モーターヘッドの登場年代の順番が、
そのままモーターヘッドが設計・製造された順番
というわけではないのですが
モーターヘッドの外装というのは、
時代用法、あるいは偽装のために頻繁に変えられるため、
むしろ不明確なMH本体の製造年よりも
ストーリでの登場年のほうが確かなのだろうと思います。

ただし例外もあります。
AD世紀のマシンメサイヤや存在自体が伝説的なモーターヘッドは
製造時の外装を維持していると考えられることから、
アウゲエンプレス
剣聖のシュペルター(ルンが乗る時に外装変えちゃったけど)等は
調べられる限りMH製造年を調べてその情報も加味します。
(一番右の欄へ記載)

さて腹フェチの極みのようなこの年表から何がわかったのでしょうか?

やはり永野先生によるデザイン時期の影響が一番顕著であることです。

連載開始当初の1986年(くどいようですが西暦です)
ピンクで色付けした範囲ですが、この時期にデザインされたが
設定上はずっと後の時代に登場するものは、
赤色の線で引き出して示しています。

このごく初期の1年間にデザインされたものは、
最終デザインとは大きく異なり
またモーターヘッドによる差も大きいことがわかります。

・1987年~1989年
黄緑で色付けした範囲
この時期に多様なモーターヘッド腹部の一つとして
蛇腹デザインが生まれます。
(これより後の時期に登場したものは緑の線で引っ張り出しています。
以下も同様に色で区別して示している。)

・1990年以降
サイレンFやエンプレスなど特殊なものを除き
細かく分かれたプレート状装甲が連結された蛇腹装甲
主流になります。
水色で色付けした時期はその前期
蛇腹状ですが、一枚一枚の装甲板の形状や配列に
まだバリエーションがあることが伺えます。

デザイン時期欄の色を塗っていないところが後期
設定上は魔導大戦の開戦以降となりますが、
デザインの観点では、やはり1999年L.E.DミラージュV3登場が
エポックメイキングになっています。
これ以降の腹部装甲は、
装甲板一枚一枚の形状が洗練されたうえでほぼ統一され、
また装甲板の重なりを意識したものになっています。

言ってしまえば
『描きながら、デザインを練り上げていきましたね?永野サン。』
ということなのですが、それでは考察にならない。

あえて無理矢理にでも、モーターヘッドの腹部装甲に関して
設定的な説明を加えるとしたら次のようにしてはどうだろうか?

『モーターヘッドの腹部装甲は星団歴において発達したものではなく、
 収斂したものである』という仮説を提唱します!

すなわち初期のモーターヘッド腹部装甲は
AD世紀の超帝国の高度な技術で作られたもの、
あるいはそれを模したものや、
より実用的な構造のものなど様々な技術レベルでつくられた
多様なものが存在します。

アウゲの腹部は蛇腹のように見えて、実はかなり違っていますし、
エンプレスは継ぎ目が見えないほど細かいリンクが
なめらかに繋がっているという設定。
エンゲージSR1は実用上可能な範囲で装甲板を細かくしてつなぎ
エンプレスのようなシルエットを模倣しているようにも見えます。

星団歴2900年以降は資源の確保が困難になったためか
デザインは一部の特殊なモーターヘッドを覗き
徐々に蛇腹装甲に収斂されていきます。

一部の特殊なモーターヘッドとは下記くらいでごく一部。
サイレンFのうろこ状装甲、あるいは波紋状装甲
A-TOLLはなんと表現すれば良いのだろうか?メカっぽい感じ。
それからL.E.Dミラージュの反発性積層腱肉を意識して作ったと思われる
サイレンEは腹部までもが反発性積層腱肉になっているようです。
 

星団歴3030年魔導大戦では非常に多種のモーターヘッドが登場しますが
全てのモーターヘッドが腹部装甲は蛇腹状で、
デザインもほとんど同じです。

普段は様式美の象徴として外装の美しさにもこだわるモーターヘッドですが
魔導大戦においては黒騎士デコース・ワイズメル
モーターヘッド集団戦における乱戦に備えて
バッシュを実戦向きの重装甲に換装しました。

大戦では闘いの勝敗を決める要素は、
一騎の特殊なモーターヘッドではなく
大量投入される量産型のモーターヘッドの生産性です。

これの意味するところは、すなわち
蛇腹状装甲は、特別な素材が不要で大量生産に適した構造である』
ということ。

モーターヘッドは堅牢な竜骨(背骨)で胸と腰が繋がっており、
また竜骨自体が反発性のアクチュエータになっているので、
結局のところ腹部装甲は”大きな破片避け”程度の効果があれば良い
ということなのでしょう。

これをヒントに次は蛇腹装甲の具体的な構造を考えて見ます。
本当の”蛇の腹”のようにプレートが伸縮性の優れた膜で繋がっている
というのは無いだろう。
生体材料というのも気持ち悪いし、クラウドスカッツのように
電磁波によるモーフィング変形するというのは高価すぎる。

きっと、そこそこ強度のある金属のプレート
何らかの機構で連結されて、そのアソビの範囲で
お互い自由に動くようになっているはず。

そう、言ってみればモーターヘッドが着る鎖帷子(くさりかたびら)
のようなものです。
はい!ここで衣服的なものに繋がった!

ちなみに帷子というのは、前に付く””という硬いイメージと
かたびら”という読み方から、キャタピラみたいに板を連結したものかな?
と思っていたのですが、調べてみると
裏地のない単衣(ひとえ)の着物=下着と言う意味なのですね。

鎖帷子というのは金属のリングを縦横に連結した防具の一種なのですが
”帷子=下着”が表すとおりに服の下に着用するだけでなく、
西洋の騎士は服の上に着用していたようです。

良く分かる鎖帷子の構造

特に有名な鎖帷子をつけたキャラクターといえば
アーノルドシュワルツェネッガーの『コマンド―』に出てきた
ベネット大尉

マトリックスのサイファー系キャラクターは貴重な存在です。


鎖帷子といえばベネット大尉一択です。
なるほど、この方は思いっきりアウト派ですな。

鎖帷子のようにこんなに小さいリングが、
隙間を開けてたくさん繋がっているのであれば
体の動きに沿って柔軟に変形するのもわかりますが
モーターヘッドの蛇腹帷子装甲はそうはいかない。

じゃばらかたびら”ならぬ"あぶらかだぶら
呪文を唱える必要がありそうです。

ここまで延々と考察してきて、導出された結論は次の2点のみ。
特別な素材を使わない
大量生産に適した構造

いや~、ほぼ選択肢無限大だな。
 
では構造からではなく、
まずは蛇腹装甲がどのように可動すべきか考えてみます。
 
人間と同じように胴体の曲げ(主に前屈方向)とねじり
考えれば良い訳なのですが、
モーターヘッドの場合には背骨のS字型の湾曲
人体よりもかなり極端であることを前提に図を描いてみます。

このくらいペッコリできれば、神事にも参加できます。


 前屈した場合には
背中側の装甲が伸びて、お腹側が縮むという
伸縮機構
が必要かと思っていたのですが、
幸いモーターヘッドのお腹の中は竜骨と補助アクチュエータ以外は
スッカラカンらしいので、
前面の蛇腹装甲が大きく凹むことで竜骨の曲げに追随できそうです。
 

これぞ、蛇腹装甲可動の白眉


体のひねりは蛇腹装甲が左右(体幹の周方向)にスイングする
ことで可能になります。
また図のように胸、腰に取り付けられる最上部および最下部の装甲板は
傾く必要がないこともわかります。
 
正確に言うと装甲の縦の列が斜めになる分、
胸と腰の上下方向の間隔が変わらないと(背骨が縮まないと)
装甲板列の胸取付部から腰取付部への経路上の距離が
長くなる(装甲板の連結が伸びる)ことが必要だと思われますが
装甲のくびれが減少することで、やはり装甲板間の伸縮は不要なのです。
 
以上の動きに対する考察を踏まえ、これを可能にする
出来るだけシンプルな構造を考えれば良い訳です。

蛇腹装甲の装甲板の縦方向の連結に関して次の事が言えます。
胸および腹に取り付けられる最上部最下部装甲板
倒れる方向にのみ可動し、傾く必要はない。
2つ程度ヒンジ強固に取り付けられている。
 
一方で中間の装甲板はそれぞれ上下一か所ずつボールジョイント
隣接する装甲板と結合されており、折り曲げスイングと自在に可動する。
 
さてさて、これだけで済めば良いのですが
この装甲板の縦の列何列にも分割されており、
ぞれぞれの列が上述のような連結構造になっていることでしょう。
シュペルターは13列、うち4列は初期のパネル装甲のようですが。
そして現在製作中のルミナスミラージュなら11列)

ただ問題は隣り合う列同士は結合されているのか?
結合されているのならばどのように?ということです。

当然装甲板の列間で隙間ができてしまうと防御上問題があるので、
何らかの機構で連結されているはずです。
ただこの機構はなかなか厄介なのです。
 
前屈の時の前面の列と側面の列の曲率の違いや
捻りの時の装甲板の傾きなど隣り合う列の装甲板との相対的な動き
かなり多彩かつ規則性のないものであり、
量産に適したシンプルな連結機構を考案するのはかなり難しそうです。
 
う~ん、困った。
実は考えること数日

この考察における蛇腹装甲のアイデアの原点(?)に返ってみよう、
鎖帷子、帷子、単衣の織物、繊維
そうだ!思いついた。
 
装甲板と装甲板を繊維ワイヤー)で縫うようにすればよいのです。

さすがにExcelでは無理なので、手描きです


 図のように隣り合う列の装甲板を裏側から見た時に、
縦方向にワイヤーが通り、
隣同士の装甲板を緩やかに縫い付けた構造です。
 
各々の装甲板中心ではボールジョイントで連結し自在には動くが、
装甲板間の伸縮はしないと言いましたが、
ワイヤーが通る装甲板の端部では、
装甲板の可動状態により長さに多少の変化が生じますので
ワイヤーは片端でバネによるテンションを掛けて支持します。

このテンションは全体的には胴部のくびれが緩和する方向に働きますが、
各装甲板のワイヤー穴は長穴になっており、
装甲板の重なりが大きくなる(胴がくびれる)方向に
やはりバネによってワイヤを押し付けています。

このワイヤ全体のテンションと各装甲板のワイヤを押さえるバネ力が
常にバランスして、装甲板をがたつきの無い状態に保つ
という機能も付加されているわけです。
 
がたつきがあると、がたつき音も不快ですし
その部分に摩耗が発生しますので、
それを抑制するシンプル実用的な構造の出来上がりです。
我ながらなかなかナイスアイデア
星団歴に備えて特許でも出願しておくか!
 
さて、さてここまで9600文字余りを費やして、
蛇腹装甲の考察をしてきたのですが、
これでやっと『ガレージキット製作の部』に移る事ができます。

製作期間は2015年10月~2017年10月
 
まぁ、装甲板のボールジョイントもワイヤーによるテンション機構
蛇腹装甲内部に隠れているので再現はできず、
模型として表現できるのは最下段装甲板の取り付けヒンジだけなのですが!

さらにぶっちゃけると、そもそも製作時には
蛇腹装甲下端が寂しかったので、
フィーリングでヒンジを取り付けただけで、
蛇腹装甲の構造推定は『シュペルターと歩む15年記』のための
完全なる後付け
 
 
さてそれでは早速(”早速”という単語の意味!)ガレキづくりに入ります。
まずは、腰部の全体構造を最終的に構築するところから始めます。

腰に関する前回の説明、シュペルターと歩む15年記#21では
関節”というテーマで、腰基幹部股関節を取り付けたところまで
ご紹介しましたが、腰部構造体はこれだけではありません。

スカート装甲基部および腰前面装甲(いわゆるフンドシ)基部
取り付けた状態で腰の基本構造が完成となるのです。

過去のおさらい


スカート装甲基部というのは、内側外側に分かれており、
内側はもともとの腰本体複製品から削り出して、
腰基幹部に取り付け、
キットのスカート装甲のカバー部品にディティールを加えて
スカート装甲基部外側とすることは、
シュペルターと歩む15年記#14で紹介していました。

このスカート装甲基部内側は、腰基幹部に直結された
かなり頑丈な構造体であり蛇腹装甲のヒンジ
主にこの部分に取り付けます。

シュペルターヘル・アナトミア

 
また腰前面重層的な構造となっています。

もはやお馴染み設定画

まずは腰フレームの先端の“かえし”状になっている部分を
別パーツとして作り接着、
設定上の構造としては、そのフレームの先端に
腰前面装甲(ガンプラで言うフンドシ装甲)のセッティングブロック
取り付けられ、
一番外側に腰前面装甲を取り付けることになります。

腰前面装甲はキットでは一塊のブロックですので、
その裏面をえぐり込んで、内部セッティングブロック組み込
といったほうが、実態に有った表現なのですが。

腰前面装甲の内幕

このように設定上は三重(フレーム+セッティングブロック+前部装甲)、模型としては四重(フレーム+フレーム先端+セッティングブロック+前部装甲)になるわけですが、
蛇腹装甲の正面の装甲板列の取り付けヒンジフレーム先端に、
その両脇に位置する装甲板列の取り付けヒンジセッティングブロックに取り付けます。

設定画にあるディティールを巧みに取り入れている自作セッティングブロック


 
写真ではこのヒンジを取り付けたスカート装甲基部内側
腰前部装甲セッティングブロックまでが
腰本体に取り付けられている状態の写真がほとんどないのですが、
その理由は?
 
スカート装甲基部の内側と外側はスカート装甲の取り付け軸を
ピッタリと挟み込んで、可動させる目的で
合わせ面にエポパテを充填しており、
パカッと開いた様子があまりに見栄えが悪いためです。

資料としては良いが、あちこち非塗装部(接着面)が露出した途中状態の見栄えは最悪

また腰前部装甲セッティングブロックは前述のとおり
腰フレーム(下部)に取り付けられる腰前面装甲の内部に
仕込まれているため、
腰フレーム先端セッティングブロック
直接接合する位置決め部が無いのです。
 
ということでいきなりこういう絵ずらが出来上がるわけです。

既に股関節のアクチュエータまで取り付けられていることに注目!

 
腹部の蛇腹装甲自体もキットのままでは使いません。

仮組時に撮っておいた写真


もともとのキットは”腰部”の塊状パーツの上部平面部に
これまた平面の”腹部”部品下部がストンと乗っかっており、
蛇腹装甲も最下部は横一線で、スパンと切り落とされたように
なっています。これはいけません。

いくらスカート装甲基部で隠れてほとんど見えないといっても
これではINでもOUTでもなく、
ON(のっかっている)状態ではないですか?

核心に近づくの図


 
現在の腰部品はすでに塊であったころの面影はなく、
最低限の肉付きというか、骨盤のようになっているので
むしろ蛇腹装甲は腰部のちっちゃな上面から
はみ出したような状態になっています。

さらにスパッと一直線で切られていた蛇腹装甲下端を
エポパテで延長して1枚1枚の装甲板の形を再現します。
 
結果的に腰部に対して蛇腹装甲
覆いかぶさったような状態になりましたね。

やはりデザインコンシャスなモーターヘッドはアウト派なのか?

疑問を残しつつヒンジ自体の説明をせねばなるまい。
 
ヒンジプラバンによって再現します。
設定上機構完全再現したいところですが自ずと限界があり、
ある程度の妥協が必要です。
あぁ”妥協”と言う言葉を使ってしまった。
この言葉だけは絶対に使いたくなかったのに~

ヒンジが一匹、ヒンジが二匹…

だって、1セットのヒンジが3枚のプレートで構成されるとすると、
装甲板1列の下端側のみヒンジを再現するとしても、
1列2セットのヒンジがあり、装甲板が14列あるわけだから…
3枚×2セット×14列=84枚の極小プレートが必要!

これを蛇腹装甲側腰部構造物側の相対する位置に
溝を各々28か所56か所刻み、
その溝にプレートを正しく差し込んで接着し、
軸用通し穴28か所開けて、
28本の軸を差し込ななければならない訳です。

腰部構造体に取り付けたヒンジ
蛇腹装甲下端に取り付けたヒンジ

時には差し込んだプレートの位置が合わずにやり直したり、
あるいはせっかく良い具合に取り付けたプレートなのに、
別のプレートの作業をしている際につい力を入れ過ぎて折ってしまい、
泣く泣くプレートを削り取ってやり直したりと…
 
あぁ”妥協”っていい言葉だなぁ~。
妥協があるから人間は生きていけるんだ🌸


 
さてうまく繋がるかな?腰部腹部蛇腹装甲を取り付けます。

赤破線で囲ったところがヒンジ結合部


 んん~うまく、ヒンジプレートが重なり合って、
それらしい雰囲気に仕上がっています。

すべてのヒンジとはいきませんでしたが、
何ヶ所かは真鍮線で再現した可動軸(可動しないので連結軸か)を
挿入することもできました。
 
がっちりと蛇腹装甲下端腰部固定された感じが、
さながらズボンにしっかりと裾をたくし込んだシャツのようです。
 
それでは、審査員の判定は?
イン、イン、イン!
 
はいインでした~。

最後に写真で、『ここまで進んだ!シュペルターの腰』をご紹介。

この人にこの人生あり、この蛇腹にこのヒンジあり。いずれも見えないものです。

腰前部装甲を接着しましたので、
その上から股関節パワーシリンダー(前)基部
取り付けることができるようになりました。

股関節パワーシリンダー(前・後)も、ここが潮時と
水性の透明接着剤で取り付けています。
はっきりいって接着強度は非常に弱いですが、
強固に接着しても、
そもそもアクチュエータ自体の強度が低いのですから意味がない。
そっとしておけばよいのです。

それよりも煌びやかなバルケッタ・シャンパンゴールド、
アルクラッドⅡ・ポリッシュドアルミの輝きが加わり
精密感マシマシです。

スカート装甲基部外側は、本来スカート装甲を挟み込んで
接着する部品ですので
今はまだ仮組み状態。塗装もまだサフェイサー段階です。

そして、今回の主役である、蛇腹装甲下端のヒンジ

全く見えませんね

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