【ショート・ショート】禁断の木の実
麻衣子は、物理室のドアを開けた。
放課後の学校。生徒も少なくなった。物理室には教師の光井しかない。
「先生」
「おう。どうした、何か質問か?」
「違います」
そう言った後、一呼吸置き、意を決したかのように言葉を続けた。
「光井先生。好きです。前からずっと思ってました!」
「え・・・?えっと、まあ、嬉しいけどその気持ちを受け入れることは無理だよ」
「なぜですか?」
「教師が生徒に手を出したらだめだろ」
「じゃあ、私が卒業したらいいですか?」
「え?まあ卒業したら教師と生徒じゃなくなるのは事実だが・・・」
「じゃあ、そうします。卒業したら結婚してください」
「え?いやいやいや。どれだけ年齢が離れていると思う?君とは10歳離れてるぞ」
「年齢?そんなこと先生がいうなんて。関係ないですよね」
「いやいやいや。釣り合いというのがあるでしょ」
「釣り合い?」
「ああ」
「先生と私のお母さんは10歳以上離れてますよね。なのに付き合ってるじゃないですか」
「え?な、何を・・・」
「先週の土曜日の午後、私、見たんですよ。ラブホから先生とお母さんが出てきたところ」
「・・・」
「教師と生徒はだめでも、不倫はいいんですか?」
「いや、それはだな」
「お母さんと別れてください。このままだとうちの家族も壊れちゃいます」
「ああ、うん。申し訳なかった・・・」
「あ、私が先生のこと好きなのは嘘じゃないですよ」
「だから、それは・・・」
「あ、ちなみに私、お母さんの高校生時代に瓜二つみたいです」
「・・・。それならいいな」
(終わり)
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