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とてとて
2024年5月17日 22:12
僕は中学校2年生。僕には毎朝の日課がある。8時15分、いつもの交差点で自転車に乗った彼女を見送ることだ。凛としたショートヘアに、スラリとした手足。グリーンのブレザーに身を包んだ彼女は、まるで風を切って走るかのように颯爽と自転車を漕いでいく。白樺学園高校1年の浅川美咲さん。僕の住む団地の隣に住む、幼馴染だ。小学校の頃は学年が離れていても、駄菓子屋に行ったり公園で遊んだりとよく
2024年5月16日 23:31
夜の闇が街を包み込むと、彼は現れる。どんな扉も、どんな錠前も、彼の前では無力だ。彼の名はアリオス。魔法の力を巧みに操り、宝物を盗み出す彼は、誰もが恐れる存在だった。アリオスは静かに屋根から屋根へと移動し、街の中心にある大邸宅に目を向けた。その屋敷には、伝説の魔法の宝石「ルミナリエ」が隠されていると噂されていた。アリオスはその宝石を手に入れるために、何週間も準備を重ねていた。屋敷の前に立つと
2024年5月15日 20:32
会社帰りの男が、突然の雨に傘もなく途方に暮れていた。人通りの少ない通りを歩きながら、濡れたスーツを気にする。そこへ、1本の傘が差しかけられた。「よかったら、どうぞ」振り向くと、そこには1人の女性が立っていた。「ありがとうございます。でも、そちらが濡れてしまいますよ」「いいんです。私、もうすぐ家なので。こんな雨の日は、助け合わないとね」そう言って、女性は微笑んだ。「「私、
2024年5月14日 23:13
俺には、微妙な関係の女性の友達がいる。大学の友人たちからは仲が良い二人だと言われている。人によっては付き合っていると誤解している。実際、二人は特に付き合っているわけではない。そういう雰囲気になったこともない。しかし、LINEはほとんど毎日やり取りをしているし、LINEでは姓ではなく名前で呼び合っている。おはようとおやすみのLINEを欠かしたことがない。ただ、毎回、最初にLINEを送るのは俺
2024年5月10日 22:13
真夏かと思うような気温になったかと思えば、一気に寒くなる。おかしな天気が続く中、今日は春らしい一日になった。湿度もなく気温もちょうど良い。心地良い風が吹き抜ける公園のベンチに座る一人の女性がいた。彼女の名前は理恵、28歳の会社員だ。理恵は目を閉じ、春の香りを深く吸い込んだ。ふと、理恵は、隣に誰かが座ったことに気づいた。理恵は目を開けた。そこには懐かしい顔があった。「隼人・・・。どう
2024年5月3日 17:27
男子高校生(良太):ねえ、さっき先生が5月3日は憲法記念日だから休みだって言ってたけど、憲法記念日ってなんの日だっけ?女子高校生(裕子):んー、よくわかんないけど、たぶん憲法に関係ある日じゃない?良太:憲法かぁ・・・。難しくてよくわかんないんだよなぁ。裕子:私もあんまり知らないんだよねー。でも、休みになるならいいんじゃない?良太:まあね。ただ、憲法っていわれてもなんかピンとこなくて
2024年4月23日 23:21
「ナー」猫の鳴き声が聞こえる。部屋のドアの外だ。アパートの廊下に迷い込んだのかもしれない。「カリカリカリ」今度は、爪で引っ掻くような音がする。部屋のドアで爪研ぎしているのか。「ニャーニャー」また猫の鳴き声だ。声が大きくなった。目立つのは困る。追い払うしかないか。私は、部屋のドアを開けた。猫はいない。靴を履いて廊下に出てみたが、どこにもいない。逃げたのだろうか。私は部屋の中に
2024年4月22日 21:49
健司と理恵子の夫婦は、結婚5年目を迎え、まさに幸せな日々を送っていた。少なくとも周りは、人も羨む夫婦だと噂していた。夫婦とも一流会社に勤め、30代の夫婦が住むとは思えない豪邸に暮らしている。子供にも恵まれ、家族が一緒に出かける様子はテレビドラマを見ているようだった。ある日、健司は自宅の書斎でテレワークをしていた。ヘッドセットを使わずに同僚女性とWeb会議をしていたため声が少し大きくなっていた。
2024年4月10日 23:04
目が覚めた。目の前にいつもと違う景色が広がっていた。見慣れない天井、窓から差し込む優しい朝日。そして枕元に置かれた1通の手紙。「お目覚めですか。これから24時間、あなたには特別な時間をお送りします。どうぞ、思う存分お楽しみください」何の冗談だろうか。私は、部屋にあった洋服を着て、外に出た。驚いた。街は昔懐かしい光景に変わっていた。レトロな佇まいの商店街、行き交う人々の服装、全てが数
2024年4月9日 23:47
僕は4月からこの会社で働くことになった。まだ2週目に入ったばかりだ。中途採用の僕は、なんとか会社に馴染もうと、毎朝、他の職員よりも早く出社している。と言っても、僕が一番早いわけではない。必ず僕よりも早く出勤している女性がいるからだ。今日も、その女性は、早く出勤していた。「おはようございます」その女性は、いつも事務所の机を拭きながら、事務室に入ってきた僕に挨拶してくれる。「お
2024年4月7日 16:55
妻が亡くなった。夕食を食べていると妻が突然苦しみ出した。椅子から立ち上がり、そのまま倒れた。私が倒れた妻に寄り添った時は、もう妻の息は止まっていた。僕は警察を呼び、捜査が始まった。警察が司法解剖までしたが、事件性はなく、結果的に心臓発作ということになった。葬儀も済ませた。親族だけの葬儀だった。僕は、今日、忌引きで会社を休んでいる。リビングルームでテーブルの椅子に座っている。家には誰もい
2024年4月5日 23:48
金曜日の夜。風呂からあがった私は、テレビを見ながらビールを飲んでいた。とても疲れた一週間だったが、がんばったおかげで、仕事でかなりの利益が出た。満足だ。儲けさせてもらった顧客のことを考えると笑いが止まらない。ぼんやりと儲かった金額を考えていた時、スマフォのバイブが振動した。見慣れない電話番号からの着電だ。私はスマフォを取り画面をタップした。「もしもし?」私は警戒しながら電話に出
2024年4月4日 22:44
忙しい。新年度から配属された事務所の仕事があまりに膨大でクラクラする。朝からかなりの事務を処理しているが、処理するよりも多くの仕事がメールでやってくる。「すみません。ちょっと相談したいのですが・・・」同僚の若い新採2年目の職員が話しかけてくる。「うん。いいよ。なに?」「着任早々、申し訳ないのですが、私、明日から入院することになって、休みたいとおもってるんです・・・。」「え・
2024年4月2日 21:22
「綾、あれ見て」美雪が赤い花弁の花を指差した。「あれは、もしかして」「そう。チューリップじゃない?」そう言って美雪はたった1輪だけ咲いている花に駆け寄って行った。「久しぶりに見たわ。よく、咲いたわね」美雪は屈み込んで花を間近で見ていた。「もう、何年もこの時期に咲いているのを見てなかったよな」美雪の後をゆっくり歩いてきた綾も、美雪を正面して屈み込み、ひび割れた土に咲い