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林檎嬢と人殺し

 14の時から椎名林檎を聴いている。

 早朝のFMラジオから流れてきた「歌舞伎町の女王」に魅了され(15に成った私を置いて女王は消えた、だと?!当時14歳としては衝撃の歌詞だった)…1stアルバム『無罪モラトリアム』が1999年2月だから、少なくともそれ以来、2020年を迎えたいま、20年以上聴き続けていることになる。

 彼女の生み出す世界観が好きだ。椎名林檎の中の人がどんな人かは知らないしあまり興味を持ったこともないのが実情だが、彼女が「椎名林檎」として纏い、演じ、踊り、歌う世界にドンピシャリと感性がハマるときの快感といったら。

 私の学生時代はYoutubeも存在せず、ただただCDを聞くか、テレビの音楽番組のランキングでサビの部分だけPV(プロモーションビデオ、プロモと当時は言っていた)を垣間見るだけで、目で見られる世界があまりなかった。カラオケで「本人映像」が流れるものがあるとめちゃくちゃラッキーで、それ見たさに曲を入れたりした。じっくり見ようと思えばミュージックビデオ集やライブDVDを買えばよいのだが、それほどの経済力もなかった。

 Youtubeで公式が高画質のMVを競うように出し始めたのは、私にはごく最近のことのように思える。昔の曲を遡って調べて、「この曲ってこんなMVあったんや」と驚くこともあり、それがまた意外な感じだったりして楽しいものだ。

 今回は、私が見た中から、椎名林檎が「殺し」に関係しているMVをまとめてご紹介しようと思う。エロティック&バイオレンスはドラマの王道であり、椎名林檎にはその舞台がよく似合う。先日公開されたEP『ニュース』のライナーノーツでも、劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』のタイアップに寄せて、東京事変が「暗躍モノこそ十八番」と、そして林檎自身が「頼まれてもいないのに(中略)しつこく裏社会を描いてきた」と答えたことが明かされている。裏社会、暗躍、謎の組織とくれば殺しであろう。これぞ椎名林檎の、東京事変の王道と言ってももはや過言ではない、のかもしれない、きっと、たぶん。

2001.03.28 椎名林檎「真夜中は純潔」

 このMV見たさによくカラオケで入れた曲。歌詞はちょっと歌うのが憚られましたが…。スリルとサスペンス、黒猫とスパイ、謎の秘密結社、秘密兵器とダイナマイト。これでもかと詰め込んだレトロ仕立てのアニメーションが最高。

2012.01.18 東京事変「今夜はから騒ぎ」(アルバム『color bars』収録曲)

 リリース順に並べたら10年以上間が空いてしまいました。ほんまかな。この間にもう何本か殺しがあるかもしれません(笑)あったら教えてください。東京事変のメンバーが様々に扮するのが愉しい一品。並行世界の歴史のどこかで「事変」起こってる感。から騒ぎどころじゃないです。

2013.6.26 SOIL&"PIMP" SESSIONSと椎名林檎「殺し屋危機一髪」

 こちらは文字通り、殺し屋。危険でえっちな玄人!そう、殺し屋は玄人なのです。船上で繰り広げられる玄人同士の殺し合いの果ては。チェスの駒に顔写真を貼るのが映画『裏切りのサーカス(2011)』みたいで格好良いですね(ameblo「三角絞めでつかまえて」様にその画像がございましたのでリンク貼っときます↓)

2014.11.13 椎名林檎と中田ヤスタカ「熱愛発覚中」(アルバム『浮き名』収録曲)

今回公開されたPVでは、椎名が傍若無人なパパラッチに命を奪われた相棒の仇を討つために戦う女性を本格的な殺陣も交えながら熱演しており、イデビアン・クルーとのダンスも披露している。
https://www.cinra.net/news/2013/11/09/120818

 とのことで設定もさることながら、黒革ミニスカ絶対領域そしてその乳はどうやって留めてあるんですかと聞きたい衣装での殺陣は何度も繰り返し見てしまう。

2015.08.05 椎名林檎「長く短い祭」

 少なからず玄人の殺し屋を演じてきた林檎嬢でありましたが、そこには常に一片のコミカルさがあり、銃口が火を吹き血糊がべったり流れても、「大人のつくりごと」「大人のお愉しみ」という合意がばーんとありました。しかし、ここへきて様相が一変。涼やかに艶やかに夏を歌い上げる林檎嬢は背景画面の中だけにあり、それが流れる中で「あること」が行われている…という、「殺し屋」とはまた異なる側面でエロティック&バイオレンスを貫いてきた逸品。

 以上、私自身の「好き」だけで林檎と殺しについてまとめてみた5本でした。たのしい。懲りずにまた別の観点からもやってみたいと思います。

[追記]続き物(?)でいくつかnoteを書きました。


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