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SIGMA愛を語る Xマウント編 後編

Xマウント単焦点レンズの描写

SIGMAから出ているXマウントのレンズは単焦点で16mm F1.4, 23mm F1.4, 30mm F1.4, 56mm F1.4, ズームは18-50mm F2.8の5本。
当初のラインナップが16mm, 30mm, 56mmの3本で、この3本は実際に使っていたので描写などについて語っていければ。

それにしても、APS-C用のレンズはF値が単焦点は全てF1.4でズームはF2.8の通しと、SIGMAはスペック的に「欲しい」と思わせるものを用意したなと思う。実際そこまで明るいものが必要かと言われたら必ずしもそうではない気がするが、APS-C故にボケ量を物足りなく思う人にとってこれらのF値は非常に魅力的だし、「F1.4」と「F2.8通し」という言葉は単純に魔法の言葉として物欲を刺激するものだと思う。

前編で書いた通り、30mmと56mmを使い初めてから特に56mmの描写にやられてすっかりお気に入りとなり、そして最終的に16mmまで揃えてしまったという次第。16mmに関してはXF14mmというこれまたお気に入りレンズがあったので買わなくてもいいか、と思っていたがXマウントを使っていた最後の方がXF14mm、Nokton35mm、SIGMA56mmというセットで持ち歩く事が多くなり「それぞれお気に入りとは言え、流石に描写を揃えるか」と思ってXF14mmを売却しSIGMA16mmを購入して単焦点3本が揃う事となった。
それぞれやはりSIGMAらしいキレのある描写で、色ノリもよくフジフイルムのフィルムシミュレーションとの相性も良かった。

SIGMA 16mm F1.4 DC DN | contemporary

まずは広角レンズの16mmから。
このレンズとは結局一ヶ月ちょっとぐらいしかお付き合いがなかったが、サイズの大きさや16mmのF1.4というスペックから多少の特別感を感じるレンズではあった。

一番左が16mm

手に入れた時期の関係もあって単体での外観写真がないのだが、上の写真を見て頂いたらわかるようにこの3兄弟の中では一番サイズが大きい。F1.4で高い光学性能を実現するにはそれなりのサイズが必要なのは仕方ないが、個人的には広角レンズにそこまで明るさは求めていないのでもう少し暗いレンズでサイズが小さければそちらを選んでいたと思う。
ただ、サイズが大きい分ホールドはし易いので、構えた時の安定感のようなものはあった。そして大きい分掴んだ時にSIGMAの作りの良さを感じる事が出来る。

では写りに関して。とりあえず写真を。


X-Pro3 - F5.6 - SS1/1400 - ISO400
X-Pro3 - F4 - SS1/220 - ISO400
X-Pro3 - F8 - SS1/550 - ISO320


描写に関してはちょっと硬いかな、と思う事もあるが特に不満が出るほどではない。他の2本と比べると艶っぽさが少ないが広角レンズだから仕方ないだろうと思う。
そして絞って撮る事が多い私にとって広角でF1.4はほぼ使う事がなかった。暗くなってからの撮影では活躍してくれただろう。(短い付き合いだったので機会がなかった)
気になるのは、F8ぐらいまで絞っても四隅が甘くなる事が多いという事。あまり絞りすぎても回折が起きてしまうし、うーむと悩む所だった。


X-Pro3 - F5.6 - SS1/210X-Pro3 - F5.6 - SS1/1400 - ISO400 - ISO400

歪曲に関して、写真は基本的にJpegで撮影したものを微調整しているぐらいなので、上の写真もカメラ側で歪曲の補正がかかった状態。ぱっと見で気になるような歪みもなく上手い事処理されていると思う。


X-Pro3 - F4 - SS1/6000 - ISO320 - classic chrome
X-Pro3 - F8 - SS1/600 - ISO320


広い景色を収めるのにも向いているし、狭い空間でいろいろ配置したい時にも向いている。24mmは広角初心者の方が使い易い画角だと思う。

付き合いが短かったのもあるかもしれないが、他の2本と比べるとめちゃくちゃ良い描写か?と言われると「これだけデカい割には…」というのが正直な所。前述の通り四隅の画質の低下がある事やちょっと硬めの描写などを考えると値段通りな気もする。ソツなくいろいろこなしてくれそうな気はするが、面白みに少し欠けるという印象。そして個人的には24mmの画角というのがそもそも好みじゃないと、このレンズのお陰で気がつく事が出来た。21mmは偉大だったのだ。

だが、先述の通り初めての広角に、というには非常に良い一本だと思う。
コントロールし易い画角、F1.4、簡易防塵防滴、純正より安い、という冷静に考えれば非常に魅力的なスペックではある。それこそとりあえず最初にF1.4のレンズを手に入れる事が出来れば、星景写真にチャレンジしてみようという時にも使えるし、クローズアップでボカした写真を撮るなどしてこれまでとは違った表現も出来ると思う。


SIGMA 30mm F1.4 DC DN | contemporary

続いて30mm。
こちらは換算で45mm相当の標準画角となる。APS-Cの標準レンズで一般的なのは35mm(52mm)か33mm(50mm)で、それらよりも少し広いのが特徴だ。23mmと35mmの中間ぐらいの感覚かな?と思ったが割と35mmに近い感じでしっかり「標準画角」。思ったよりも使い易く、万能な画角だと感じる。
そしてこちらもF1.4。30mmという焦点距離でもF1.4のお陰で十分なボケを得られる。

デザインについて、X-Pro3がクラシカルなデザインなので割と現代的でソリッドなデザインのこれらのレンズは合わないか?と思っていたが、落ち着いた色合いだったり、ビルドクオリティの良さからそこまでの違和感は感じなかった。ただ、フードをつけるとバランスが崩れていまいちな感じになるので、仕事の時や天候が悪くない限りは基本フード無しで運用していた。フードなしだと不思議とマッチしているように感じる。


フードなしだとX-Pro3にぴったり


では写真を。
SIGMAのレンズは基本的にシャープでコントラストも高く現代的な写りだと思う。そして30mmと56mmに関しては艶のようなものも感じられるので、ただただ硬いだけでなく「良い」写りだと感じる。


X-Pro3 - F8 - SS1/1400 - ISO160 - classic Neg.
X-Pro3 - F4 - SS1/450 - ISO320
X-Pro3 - F8 - SS1/640 - ISO400
X-Pro3 - F8 - SS1/240 - ISO320


45mmの画角はスナップにおいて意外と使い易く、52mmの画角だとちょっと「狭いな」と感じる方には丁度良い画角になると思う。逆に52mmの画角でジャストだった人はもう一歩踏み込まないといけないかもしれない。


X-Pro3 - F8 - SS1/640 - ISO320

上の写真は撮って出しの状態。トタンの線をしっかり描写してくれている。この日は大気の状況が良かったのもあるが、非常にシャープで気持ちいい。


これまでの写真は割と絞っていたので、ここからは絞りを明け気味の写真を。


X-Pro3 - F2 - SS1/1250 - ISO400
X-Pro3 - F2 - SS1/180 - ISO400
X-Pro3 - F1.4 - SS1/100 - ISO1200
X-Pro3 - F1.4 - SS1/2200 - ISO800


絞り開放でもピント面はシャープで画も破綻せずやはり現代のレンズらしい描写。ボケの綺麗さに関してはまずまずだと思うが、私の使い方では全く気にならなかった。そこに関してはXF35mmF1.4に軍配が上がると思う。
個人的にはF2辺りを使う事が多かった。というのもF2ぐらいが描写も安定してボケ方も好みだったからだ。
ちなみにご存知の通りボケの量はF値とレンズの焦点距離によって変わってくる。なので35mmと30mmでは35mmの方がボケ量は大きくなるのだが、上の写真を見て頂いたらわかるように30mmでもF1.4で撮れば被写体との距離が多少あってもボケてくれる。しかも標準レンズの画角だったら背景をボカして使う事は私の使い方ではあまりなく、むしろ適度に情報が残ってくれるので好ましく感じた。
※ちなみに35mm F2と比べると30mm F1.4の方がボケは大きくなる。口径比で考えればいい。→35÷2=17.5  30÷1.4=21.4
XF35mm F2はレンズとしてのポジションが確立されている気がするので比べるのも違うかもしれないが、参考までに。


X-Pro3 - F2 - SS1/300 - ISO3200
X-Pro3 - F1.4 - SS1/60 - ISO1250


クラシックネガとの色の相性が抜群だと思う。ローキーで撮った時、ハイキーで撮った時でキャラクターが変わるクラシックネガの特徴をしっかり再現出来る。(クラシックネガに関してはXF33mmよりもSIGMAやXF35mmの方な適度な甘さのあるレンズの方が合うと思う)


X-Pro3 - F4 - SS1/300 - ISO400


そして悪天候でもノントラブルだったのが嬉しかった。上の写真は広島では珍しかった豪雪の日。二日程雪が降り頻る中持ち歩いたが、X-Pro3と共にしっかりと働いてくれた。あくまで簡易防塵防滴なのでシーリングはマウント部のみなのだが、作りの良さが発揮されたと言う事だろうか。(ただし自己責任です)


SIGMA 56mm F1.4 DC DN | contemporary

そして最後はお気に入りだった56mm。
中望遠レンズは過去にXF56mm F1.2 RとXF50mm F2 R WR、そしてオールドレンズのOM zuiko 50mm F1.8を使っていた。
XF56mmは評判通り非常に良い写りだったのだが、いまいち面白味に欠けた事もあり比較的短いお付き合いだった。
XF50mmはコンパクトながら写りも良くしかも防塵防滴、ルックスも好みでお気に入りだった。
が、レンタルでSIGMA 56mmを使った所その写りの良さ、そして「中望遠はボケも欲しい」という考えに至りXF50mmを売却しSIGMA 56mmを正式に迎える事となった。

このレンズの特徴と言えばやはりコンパクトさだろう。今回紹介している3本の中で一番小さいのだ。しかし写りはシャープで艶もあり非常に良い画を出してくれる。個人的に完璧なレンズだと思う。



では写真を。
56mmは画角で言うと85mmとなり、俗に言う「ポートレートレンズ」の画角。だが、実焦点距離が56mmという事は本来の85mmより圧縮効果が少ないという事。なので自然な遠近感のまま見せたい所だけ切り取る事が出来るので、慣れれば非常に有能な焦点距離だと思う。


X-Pro3 - F2 - SS1/3800 - ISO800
X-Pro3 - F2 - SS1/500 - ISO320
X-Pro3 - F2.8 - SS1/350 - ISO320


ピント面はかなりシャープ。30mmよりも収差は少ない印象。コントラストも良くて気持ちがいい。


X-Pro3 - F3.6 - SS1/1600 - ISO400

風景は広角で撮るのも良いが、中望遠で一部分を切り取るのも良い。極寒の中30mmと共に頑張ってくれた。


X-Pro3 - F2 - SS1/450 - ISO320
X-Pro3 - F2 - SS1/1800 - ISO640


ボケも非常に綺麗で滑らか。玉ボケ自体にはそこまで興味はないのだが、こう見ると綺麗だと思う。
しかもこのレンズの素晴らしい所は寄れるという事!
XF56mm F1.2は70cmぐらいまでしか寄れなかったのだが、このレンズは50cmまで寄れる。85mmの画角で50cmまで寄ると結構なクローズアップになるので撮影にかなり余裕が出るのでありがたい。(ちなみにXF56mm F1.2 R WRの方は50cmに改善されている)


X-Pro3 - F2 - SS1/320 - ISO3200
X-Pro3 - F1.8 - SS1/170 - ISO3200

ライブ撮影でも大活躍。大きい箱でない限りは十分な画角。


X-Pro3 - F2.8 - SS1/180 - ISO1600
X-Pro3 - F2.8 - SS1/1800 - ISO1600


前ボケもしっかりしている上、画面整理もしやすいので主題を奥に置いても成立する。しかも56mmなので自然な遠近感で切り取りが出来るのでスナップにおいても非常に有能なレンズ。

この56mmは本当にお気に入りで、魅力的な花やオブジェクトと出会った時や特徴的な光を見つけた時など、いざと言う時に使う事が多くそしていずれも良い結果を残してくれた。この価格でこれだけの写りをしてくれるのだから、本当にSIGMAは価格設定が狂っていると思う。(いい意味で)


3本に共通するウィークポイント

基本的にSIGMAのレンズを絶賛しているが、一応ウィークポイントとして感じている部分もあったので触れておく。ただ個人的には写りが好みだったら多少の事は目は潰れるし、画面の隅から隅まで見て画質を評価するような事もしないのでどうでも良い部分でもある。

  1. 絞りリングがない
    まぁこれはもう購入前からわかってはいた。が、案外慣れる事は出来た。ただF2ぐらいからF5.6ぐらいまで変えたい時にジャコジャコいっぱいダイヤルを回さないといけないのは地味に面倒だった。SIGMA曰くXマウント発売にあたって絞りリング付けるか?というのはあったらしいが、結局そのまま発売となった。そりゃ製造ラインも別で作らないといけないし価格だって変わっちゃうし会社としてはそうですよねとは思う。

  2. 防塵防滴ではない
    あくまで簡易なので、豪雪の時持ち出した時などは結構「壊れるかもしれないけど仕方ない!行くぞ!」というぐらいの勢いだった。結局ノントラブルだったので結果オーライだが、メーカーとしてちゃんと防塵防滴を謳われている製品の方が安心感がある。ちなみに個人的には防塵防滴となっていなくても案外カメラ機材は耐えてくれると感じる。XF23mm F1.4 Rもびしょびしょになりながら使った事が(何度も)あるが一度も壊れなかった。(自己責任です)

  3. フリンジなど色収差が処理し切れてはいない
    SIGMAのミラーレス向け製品は「高画質とコンパクトの両立」の為にカメラ内での補正を前提とした設計をされている。レンズ構成の方で解像度などに直接関わる球面収差や軸上色収差などを補正し、象面湾曲や歪曲収差、倍率色収差などはカメラ内のプロセッサーで補正してもらおう、という事。だが、特に設計の古い30mmはフリンジが結構目立ってしまう。価格など考えると仕方ないかとは思う。フジのカメラでサードパーティレンズを使うとどれでもフリンジが目立つという意見もあるので、ひょっとするとX-Transセンサーが気難しいのか?と思ったり。とは言えそういった収差は写真全体として見ればそこまで気になるものではないし、モノクロで撮る事が多かった身としては逆に良い滲みとなってくれていた。

  4. フジの最新のレンズ程のシャープさはない
    SIGMAのレンズは非常にキレがあって良いと感じるが、解像度と言う点だけで言えばやはりフジの最新世代のレンズには及ばないと感じる。XF33mm F1.4 R LM WRで撮った写真と比べてみると、拡大した時の解像感はどうしても劣る。なのでバキバキに解像しているレンズが好きな方はお金を積んで最新のレンズを買った方が幸せになれると思う。が、そういった楽しみ方をしない人にとってはSIGMAのレンズで十分幸せになれると思う。


まとめ

画質や造りなど諸々個人的に大満足のレンズだった。
絞りリングがあれば嬉しかったがそれも結局は慣れだと思うし、何より撮れる画が好みだったのもありそちらの喜びが上回っていた。

現在はメインをLマウントに移行した為、フジのカメラもレンズもほとんど売ってしまったのだが、実は最終的に使用していたのはこのSIGMAの3本とvoigtlanderのNOKTON 35mm F1.2 Xmountというサードパーティのレンズのみだった。コンパクトプライムは写りがあまり好きじゃないし、かと言って第二世代大口径プライムは写りもデザインも「魅力」が足りない気がする…といった感じでFUJIFILMから段々と離れていった私。
最終的に写りや操作性、デザインなど結局他社に移ってしまった。そしてそれもあって「それなら今好きなブランドを使おう」となってSIGMAがフルに使えるLマウントに移行をした。

だが一つ思ったのは、FUJIFILMの目指す画作りを生み出す為には純正レンズを買った方がいいな〜という事。要はJpeg撮って出しで完璧な画質を求めるなら純正レンズの方が良いという事。(これについてはまた機会があれば詳しく書こうと思っている)
勿論SIGMAのレンズでも撮って出しで十分なクオリティにはなるのであまり気にしなくてもいいとは思う。

純正のレンズよりもリーズナブルで、しかし画質も造りもクオリティは高い。SIGMA自身も謳っているMade In Japanクオリティは確かなものだと私も感じる。

キットレンズ以外で単焦点を買ってみたいというビギナーの方には勿論、コンパクトなF1.4が欲しいという方(16mmはデカいが)、純正レンズの描写に飽きたという方には非常におすすめのレンズだ。
56mmに関しては非常に非常におすすめ。
是非とも一度は使ってみて欲しい。


X-Pro3 + SIGMA 56mm F1.4 DC DN | contemporary

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