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海を眺める背は モノクロ手焼きプリント#1

宮島行きフェリーにて Leica M2 + voigtlander NOKTON vintage line 50mm F1.5


以前から、新しいレンズや機材を買うと宮島を訪れている。
雑踏、自然、自社仏閣、海といった様々な被写体がそこにはあるので、試し撮りにはもってこいの場所だからだ。

LEICA M2を手にしてからも例に漏れずまずは宮島を訪れた。平日は特に海外の方が非常に多い。西洋の方もアジアの方も沢山。とりあえず皆さん身長が高い。人々がフェリー乗り場で楽しそうに話しているのを横目に、身体の横にM2をぶら下げた私は一人フェリーが入港するのを待っている。

フェリーの中ではいつもは大体鳥居が見える側にいて、鳥居を見る人々をスナップするなどして過ごすのだが今回は何となく反対側で海を眺める。
手すりにもたれて、冷たい風を全身に受ける。天気も良く遠くの景色がよく見えて気持ちがいい。
向こうでは本土行きのフェリーが航行し、眼下では波が絶えず形を変えていく。
そんな景色をずっと眺めていた。

ふと後ろを振り返ると鳥居を眺める人々とフェリーの中で過ごす人々、そしてリフレクションする私と海、という景色が広がっている。反対側にいる人達の背中が並んでいて面白い。
「お」と思いカメラに手を伸ばす。予め光が当たる場所と日陰での露出は測っていたが、まだ露出についての知識や経験が浅い私には少し難しい状況だ。中間ぐらいの値でいけるかと予測を立てて絞りとシャッタースピードを設定し、シャッターを切る。チャッと軽快なシャッター音が鳴り、目の前の景色はフィルムに焼き付いた。そして再び元の位置に戻って海を眺める。

これまでリフレクションを利用した写真をあまり撮らなかったし、ライカというカメラの性質上どう写るかが正確にはわからない。その上この場合の露出の正解もわからないという状況。だが妙に潔く仕上がりを楽しみにする自分がいる。このシーンを撮ったのはこの一枚だけで、今思えば露出を変えてもう数枚撮れば良かったが何故だかその時はそう思わなかった。
正確な露出こそフィルム写真においては非常に大事だ。だが撮り終わった後に一喜一憂していても仕方がないので、撮った後はすぐに忘れてしまうのが丁度いいのかもしれない。

幸い目の前には見ていて飽きない海が広がっている。
ライカを持って宮島に訪れるのは楽しみだ。
モノクロフィルムで撮るとなると自分の心持ちも今日は違うのだろうか。

そんな事を考えながらフェリーの残りの時間を過ごした。

フィルム写真の文化の一助になるよう活動を続けたいと思います。フィルムや印画紙、薬品の購入などに使わせて頂きたいと思うので、応援の程よろしくお願い致します!