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【課題解決】中小製造業の技術経営 顧客価値 イノベータのジレンマ

中小製造業の商品開発を伴走・支援 TECH-TOSHIです。

今回は、東京理科大学 MOT(技術経営)における 経営戦略とマーケティングに関連する講義から、『顧客価値 イノベータのジレンマ』について、ご紹介します。


1.ポイント

内容は、

持続的イノベーションの積み重ねによって、市場を支配することもある

でした。

イノベータのジレンマ
 水平的差別化に成功しても、限られた顧客の支持しか得られず「ニッチャー」のポジションに甘んじている事例は多い。

 水平的差別化を橋頭堡にして、市場全体に影響を及ぼしていくプロセスを議論しているのがクリステンセン(1997)である。

 それまでにない新しい製品属性で新たな価値を提供しているものの、従来からの属性評価基準では価値を減じてしまうような技術革新が「分断的イノベーション」である。

 その後、「持続的イノベーション」と呼ばれる斬新的な改良効果の積み重ねによって、コストを低下させる、既存ユーザーの要望に忠実に邁進したが、この努力は、ユーザーが要望する水準の上限を越えてしまい、ユーザーに評価されなくなっていた。

 主要顧客の意見に忠実に従えば従うほど、分断的イノベーションがもたらす技術の世代交代には適応しにくくなる。

 つまり、技術的イノベーションによる垂直的差別化に力を注げば注ぐほど、他の価値ネットワークへと転換することが難しくなり、競合による水平的差別化への対応力が低下してしまう。こうした現象が「イノベーションのジレンマ」と呼ばれる。

 イノベータのジレンマは、高品質を追求する垂直的差別化には重大な「落とし穴」が隠されていることを指摘している。

 しかし、立場を変えてみると、イノベータのジレンマは、水平的な差別化によって獲得した顧客が限られていても、 持続的イノベーションを積み重ねていくことで、市場の大部分を支配することもありうることを示唆している。

出所)網倉、新宅、『経営戦略入門』、P216-220

<補足> 
 1)3種のイノベーション
  ⚫︎持続的イノベーション:
    顧客がそれまで重視してきた特性において、既存製品に加えられる改良

  ⚫︎ローエンド型イノベーション:
    製品・サービスが「性能過剰」で高価になり過ぎた時、
    単純な製品を低価格で提供して既存市場を大きく変える

  ⚫︎新市場型破壊的イノベーション:
   高度な専門知識か豊富な資金がないとできなかったことを、
   簡単に出来るようにすることで新市場を生み出す

 2)変化のシグナルを探す
   ①無消費者:製品を消費していない顧客や製品を不便な環境で
         消費している顧客 
   ②満たされない顧客:ニーズが満たされていない顧客

   ③過剰満足の顧客:ニーズが必要以上に満たされている顧客

出所)C.クリステンセン、『イノベーションの最終解』、翔泳社、2014

2.講義からの気づき

 講義から気づいたことは、

顧客からの要望は顕在化しているニーズであり、顧客の意見に忠実に従うほど競合への対応が疎かになる』 

です。

自社が顕在化しているニーズに対応する持続的イノベーションを行なっている間に、競合が潜在ニーズに対応した新技術・新商品による破壊的イノベーションを市場に仕掛けてくるということがあるということです。



3.現状

一旦、決まってしまったビジネスのやり方を変えることは、なかなかできないのが現状のようです。

例えば、既存の商品から新たな商品バージョンアップするとか、長年やってきたビジネスシステムを変えるとか、

つまり、現状を変えること自体、時には自社のやり方を否定することにつながることもありますので、結局、変えることができないのが現状と思われます。

なので、さらに高品質を追求し続けて「落とし穴」にはまってしまい、競合からの新たなイノベーションに対応することができなくなるのではないでしょうか。

これは、行動経済学における、いわゆる「現状維持バイアス」に関連することかもしれません。

4.解決策

高品質を追求し続けるも、顧客の要望に対して過剰品質になっていないかどうか、また、必要以上の機能を付加していないかの見直しが常に必要です。

<ご参考>

 

また、イノベーションは技術のイノベーションだけではありません。

サプライチェーンや物流などにもイノベーションは起こっていることからも、バリューチェーン全体においてイノベーションは起こりうるということには注意が必要です。

5.今後の課題

MOTの同級生の間でも話題になりましたが、規模が大きな企業ほど、現状維持バイアスにかかっていることが多そうです。

それも、「自社は現状維持バイアスに陥っている」 という自覚がほとんどないのが怖いところです。

顧客の要望、競合の動向、自社のビジネスシステム、自社商品の機能・品質 などがマッチしているかどうか、これらに定期的な見直しをかけることができるのか が課題と思われます。

 今回は、東京理科大学 MOTにおける 経営戦略とマーケティングに関連する講義から、『顧客価値 イノベータのジレンマ』について、TECH-TOSHIよりご紹介しました。

尚、その他にも、この分野においての実践的なノウハウを投稿しています。


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