公認会計士 MBA 長坂 敏史

BCGで戦略コンサルティングに従事後、PW、C&L、ACにおいて経営に携わりな…

公認会計士 MBA 長坂 敏史

BCGで戦略コンサルティングに従事後、PW、C&L、ACにおいて経営に携わりながら、戦略を中心に多様な領域のコンサルティングを行う。C&Lカナダ事務所では、日本企業の北米進出を支援。元慶應義塾大学三田オープンカレッジ 講師。真のビジネスマンとしての知識・教養・心構えを共有します。

最近の記事

自動車メーカーの不正から見えてくる「『経営者の役割』放棄」

ダイハツだけかと思っていたら、日産を除く主要なメーカー5社、トヨタ、マツダ、ヤマハ、ホンダ、スズキでも、車の性能試験で不正が行われていた。 一部のメーカーでは国の基準よりも厳しい条件の検査を行っていたとのことだが、それでも不正は不正である。 日本のほとんどすべてのメーカーが不正を行っているとなると、皆が守れないような試験を課していた管轄官庁である国土交通省も大問題である。 一方、日産は日産で、下請けいじめが問題となっている。 日本の経済をけん引してきた自動車産業で、か

    • ROIC経営でも「混沌」を生かせ!

      荘子の「混沌の徳」の話である。 南海の帝王を「儵(しゅく)」と言い、北海の帝王を「忽(こつ)」と言い、中央の帝王を「混沌(こんとん)」と言いった。 儵と忽とがある時、混沌の地で出会った。 混沌は両者を手厚くもてなした。 そこで儵と忽は混沌の徳(恩)に報いようと、相談して言いった。 「人は皆七つの穴(目2つ、鼻2つ、耳2つ、口1つ)が備わっていて、これらをもって、見たり、聞いたり、食べたり、呼吸をしている。しかし、混沌には7つの穴がない。混沌に、穴を開けてあげようでは

      • 自民党の財政猿蟹(サルカニ)合戦

        6月中に政府は、2024年度の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を策定する。 骨太の方針(ほねぶとのほうしん)は、経済財政運営と改革の基本方針(Basic Policies for Economic and Fiscal Management and Reform)と呼ばれており、経済財政諮問会議にて決議する政策の基本骨格のことである。 財政政策に関しては、現在、自民党には対極的な二つの本部が併存しており、6月7日に岸田首相に対して、それぞれが真反対の提言を行

        • 鈍重JTCにも必要な「アジャイル経営」

          JTCとはJapan Traditional Companyの略語であり、伝統的な重厚長大の日本企業を指す。 JTCは、動きが遅くITC時代には遅れ気味で最近はさえないが、かつてはモノづくりで世界を席巻した。 アジャイル(agile)とは、「敏捷」「素早い」という意味であり、「アジャイル経営」とは、変化に迅速かつ柔軟に対応できる経営スタイルのことである。 ITC時代には変化のスピードが速く、また、将来の予測が難しい。 このような時代は、、Volatility(変動性)

        自動車メーカーの不正から見えてくる「『経営者の役割』放棄」

          「財務的経営目標」最重視のワナ

          日経が、鉱山・建設機械市場でトップの米国キャタピラーと第2位のコマツのPBRを比較して、PBRを構成する一つの要素であるROEを高めるよう、コマツを煽っている。 記事は、まず、キャタピラーのPBRが9.6倍に対して、コマツが1.6倍であることを示す。 そして、PBRをPBR=ROE×PERと分解し、ROEもPERもコマツはキャタピラーに劣っていると説明する。 ROEに関しては、キャタピラーが58.5%であるのに対しコマツは14.1%である。 RERに関しては、キャタピ

          「財務的経営目標」最重視のワナ

          「サステナブル経営」-利益は経営の手段か目的か?

          米国社会では限りなく個人の欲望を追求しており、社会は強欲資本主義に支配されている。 「アメリカン・ドリーム」もその延長線上にある。 個人的欲望を追求した結果、米国社会ではごく限られた富裕層が富のほとんどを所有することになり、この40年~50年で中産階級が消滅して一般人が貧困生活へと陥っている。 米国では、富はますます富裕者に集まり、持てる者と持たざる者との社会分断が進行しでいる。 米国主導によるグローバリズムと新資本主義の推進によって、米国の強欲資本主義が世界に波及し

          「サステナブル経営」-利益は経営の手段か目的か?

          自分のKPIを見つけよう!

          最近、ビジネスの世界ではKPIがはやり言葉である。 KPIは英語のKey Performance Indicator略であり、日本語に訳すと「重要業績評価事項」となる。 KPIは、企業や組織が目標を達成するために、目標達成の進捗プロセスの状況を、定量的に認識し、かつ、評価・分析するための指標である。 企業や組織では、目標達成のためにKPIを管理ツールとして利用する。 最もわかりやすい営業業務を例にとって、KPI管理について説明する。 目標売上を達成するためのプロセス

          自分のKPIを見つけよう!

          「志」無き大企業経営者

          住友グループには「自利利他公私一如」の理念がある。 「住友の事業は住友自身を利するとともに、国家を利しかつ社会を利する事業でなければならない。 営利のみに走ることなく、絶えず公益との調和を図る。」ということが理念の趣旨である。 住友グループにおける企業活動では、国家や社会を利する事業を行い、自己の利益ばかりでなく、常に公益との調和を図ることを重視してきた。 住友グループは非常に立派な理念を持ち、手本にすべき企業の鏡であったが、今は怪しくなっている。 住友化学の代表取締

          「志」無き大企業経営者

          財務省に見る「失敗の研究」

          人は誰しも自分の利益を求めて行動する。 市井の一般人であろうと、政治家であろうと、官僚であろうと、教育者であろうと、例外なくすべてが自己の利益を求める。 自己の利益を求めることが利己であり、他人の利益を求めることが他利(他人利益)である。 利己と他利が対立する時、半分から6割は自己利益を求めるが、5割から4割は他利を求めるような人を、世間では「公正な人」や「立派な人」、あるいは、「倫理観のある人」と呼ぶ。 共同体や組織という集団を動かすリーダーには、「倫理観のある人」

          財務省に見る「失敗の研究」

          均衡財政主義という天動説

          ガリレオ以前の時代、キリスト教の宗教教義に従って、地が動くのではなく天が動いているという、天動説が当たり前であった。 しかし、旧約聖書にも新約聖書にも、どこにも天が動いているとは書かれていない。 天動説は、大きな宗教的権力を持つ者が己の権力を維持強化させるために、人々に受け入れさせていたものである。 しかし、イタリアの自然哲学者、天文学者、数学者であるガリレオは、地動説を唱えた。 彼は宗教裁判にかけられ、有罪となって終身刑を言い渡された。 現実にそぐわない思想(イデ

          均衡財政主義という天動説

          インテリジェンス能力

          例えば、「美術(art)」、「文化(culture)」、「文明(civilization)」、「社会(society)」、「科学(science)」、「空間(space)」、「時間(time)」、「恋愛(love)」などのように、明治時代には、日本は多くの西洋の概念を取り入れ、それに合わせて日本語の新しい言葉が生まれた。 また、福沢諭吉のような啓蒙思想家は、新しい西洋文化の概念を日本語の訳語に置き換えることによって日本の近代化に大きく貢献した。 「演説」という言葉は古から

          経営者のなすべきことはマーケティングとイノベーション

          ドラッカーは企業の目的を「顧客の創造」であるとし、企業の基本的な機能を「マーケティング」と「イノベーション」であるとする。 また、経済学者であるヨーゼフ・アイロス・シュンペーターは、経営者を二つに分け、「イノベーションの実行者である経営者」を『企業者』(アントレプラナー/entrepreneur)と呼び、「一定のルーチンをこなすだけの経営者」を『経営管理者』としている。 狭義のマーケティングとは販売促進活動を意味するが、広義のマーケティングは、消費者/顧客が期待/要望する

          経営者のなすべきことはマーケティングとイノベーション

          メイド・イン・ジャパン・テレビの消滅

          かつて「液晶のシャープ」とはやされた、シャープはテレビ用の大型液晶パネルの国内生産を2024年度中に停止すると発表した。 テレビ向け液晶パネルの国内生産はすでに電機大手各社が撤退している。 国内で唯一テレビ向け液晶パネルの生産を続けていたシャープの生産終了により、日本国内でテレビ向けの大型液晶パネルを生産する企業はなくなる。 一方、東芝やソニー(現ソニーグループ)、日立製作所の液晶パネル事業を統合して発足したジャパンディスプレイ(JDI)は、2024年3月期に10年連続

          メイド・イン・ジャパン・テレビの消滅

          女性が生き生き働く会社をつくろう!

          米国では企業に提出する履歴書には、性別も年齢も不要である。 特に、米国では定年制度はなく、法律上、年齢に基づく差別を禁じる「高齢者雇用保護法」(Age Discrimination in Employment Act, ADEA)により、40歳以上の労働者を年齢理由で解雇したり、雇用条件を不利にしたりすることは原則として禁止されている。 米国では、日本と違って労働力の多様性への取り組みが進んでいる。 日本の労働市場では、団塊の世代の定年制度による退職によって、

          女性が生き生き働く会社をつくろう!

          Z世代に選ばれる会社と捨てられる会社の違いとは?

          「Z世代」とは、1990年代後半〜2010年生まれの人々を指す言葉であり、今の10代から20代前半の若者のことである。 彼らは、他の世代と比較すると、生まれ育った時からもの周りにITが当たり前に存在し、かつ、生きていく上で自らの価値観を非常に大切にしているという特徴がある。 Z世代が若手として会社の一線で働き始め、また、新たな消費者として商品を購買し始めている。 Z世代のビジネス社会への出現によって、今、労働市場を通して、会社にも変革が求められている。

          Z世代に選ばれる会社と捨てられる会社の違いとは?

          PとDだけで会社を回す「ご破算経営者」

          たくさんの人々が参加する会社は、計画によって動かされる。 これが計画統制と呼ばれる。 計画では、あらかじめ、目標、目標を達成するためのやり方、人々の役割や仕事の分担が決められる。 人々は、計画によって、自分が、いつ、何を、どのようにやればよいか知ることがででき、自律的に行動する。 進歩する優れた会社では、計画統制をPDCAで回す。 すなわち、「計画(P)→実行(D)→チェック(C)→アクション(A)」の一連のマネジメント・サイクルによって、会社を動かしている。 こ

          PとDだけで会社を回す「ご破算経営者」