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物語の構造からSPY×FAMILYの最終回を予想する

僕はよく、マンガやアニメの展開を例に出して物語のパターンを話すこともあり、作品の予測を聞かれたらします。
そんな中でこの前偶然SPY×FAMILYの最終回を予想してくれと言われ、急遽話したものが思いの外納得してもらえたので、備忘録がてらここに残しておきたいと思います。

物語にある「こうならなければならない」というルール①ドラえもん

物語にはある程度「こうならなければならない」というルールのようなものが存在します。
例えば毎週放映される『ドラえもん』のような日常ものの作品であれば、「のび太の成長」は絶対にタブーです。
あの作品は「ダメなのび太」と「それをなんとかすることが目的で送り込まれたドラえもん」という設定によって生み出されるドタバタ劇です。
ということは、ドラえもんが野比家にいる意味である「ダメなのび太」を崩してはいけません。
(だってのび太が成長してしまえば、ドラえもんが家にいる設定が消えてしまいますから...)
もちろん、それを逆手に取ったスタンドバイミードラえもんのような映画作品はありますが(これも実は「そうでなければならない結末」ものなので後で説明します)、少なくとも毎週のテレビ放映でのび太が明確な成長をする事はできません。
そうなると、『ドラえもん』という作品は基本的に「のび太が理不尽なトラブルに巻き込まれる」→「ドラえもんに助けを求め未来の道具で解決する」→「のび太が調子に乗ってその動画を欲に沿って乱用する」→「思わぬ別の問題が生じて痛い目を見る」というあらすじになるわけです。

物語にある「こうならなければならない」というルール②暗殺教室

もうひとつ、『暗殺教室』を例に見ていきたいと思います。
暗殺教室は「殺せんせー」とそれを殺すことがミッションになる生徒たちというトリッキーな設定を取っていますが、基本的には「教師もの」です。
学園もので生徒がわちゃわちゃするのならともかく、「先生」にスポットを当てた作品においては、「生徒が先生の手も借りなくてもいい成長して先生のもとを卒業する」しかありません。
そしてこの作品はあくまで「殺し」が卒業と同義になっている。
さらに第一話の扉絵では朝の挨拶の直後に殺せんせーが生徒たちに武器を向けられるシーンとなっています。
と、なるとこの作品の最終回は「教室の生徒たちが成長した上で殺せんせーを手にかけ、主人公の渚が殺せんせーに憧れて教師になり、1話の扉絵のトレースで朝の挨拶で不良生徒に武器を向けられる(なんなら殺せんせーからの「教え」でそのシチュエーションを難なく乗り切る)」あたりだろうと予想が立つわけです。

こんな風に良く出来た作品ほど制約に縛られているものが多く、ある程度展開が予想できたりします。
そういった観点からSPY×FAMILYの結末を予想しようと思います。

SPY×FAMILYにおける設定の制約を整理する

さて、『ドラえもん』と『暗殺教室』を例に設定の物語の展開への影響を話してきましたが、このラインで分類すると、SPY×FAMILYも間違いなくこちら側に分類されます。
SPY×FAMILYの設定は次の通り。

・日常ものの作品である
・家族は擬似関係
・国同士の争いがある設定
・それぞれが明かせない秘密を抱える

これらの要素を織り込みながら、最終話の内容を考えていきたいと思います。

まず、この作品はあくまで「日常もの」という立ち位置であるというところから。
日常ものの作品、また恐らくメインターゲット層も比較的低学年であるだろうことを考慮すると、この作品の最終話にバッドエンドを置くことは考えづらくなります。
したがって、基本的にはハッピーエンドを前提に考えていくのが妥当でしょう。
次にこの作品は互いの素性を隠したもの同士が家族関係を結ぶことがコアになって作られています。
仮にこの作品がスパイものなどであれば、家族の解散と引き換えに自国の勝利というハッピーエンドも考えられますが、あくまで中心は「擬似家族」にあるので、そちらも考えづらくなります。
とすると、何かの犠牲で国を救うという、いわゆる少年漫画的な感じは少し考えにくくなります。

次に「家族は擬似関係」というところに注目して、そうていされるハッピーエンドを考えます。
擬似家族の3人が救われるハッピーエンドには、①3人がそれぞれの生き方を見つけて別の方向に進む(解散)と、②3人が本当の家族になるといったあたりでしょうか。
①は2002年にテレビドラマで放映された「人にやさしく」のパターンと考えてもらうと直感的に伝わるとおもうのですが、個人的にはこちらの結末はSPY×FAMILYには合わないかなと考えています。

3つ目の要因でもある「国同士の争いという設定」にも関わることなのですが、仮に3人が別の生き方を見つけて別の道にいくのであれば、国同士の争いという全体を通した世界観が意味を失ってしまいます。
これだけ緻密に作られた設定である以上、何かしら設定そのものが関わってくるように思うのです。
そしてもう一つ、アーニャの好物がピーナッツであることです。
ピーナッツの花言葉は「仲良し」ですが、これは2国間が平和になるということとともに3人が仲良しということが込められているように思うのです。
というわけで僕は②の3人が本当の家族になるという最終回を予想しています。

では、3人が本当の家族になるために必要な条件は何か?
そう考えた時に出てくるのが4つ目の「それぞれが明かさない秘密を持っている」という制約です。
「本物」の家族になるために必要なのは3人の秘密の開示しかありません。
仮に3人の隠し事を「呪い」と呼ぶのであれば、物語の終盤は「3人の呪いからの解放」が大きな方針になるように思います。
この辺、鬼になった妹を救出する『鬼滅の刃』や、自身に取り憑いた悪霊や親友伏黒の姉、そしてトリックスター的存在の悟条先生の親友についた悪霊を祓おうとする『呪術廻戦』も同じカテゴリーだと思っています。(そしてこれは10年代後半のジャンプ作品の特徴とも)

物語の後半を具体的に予想する

さて、これでは「予測」というには漠然としすぎているので、もうすこし具体的に考えていきたいと思います。
それぞれの「秘密の打ち明け」を呪いからの解放と捉える場合、それぞれがそれを打ち明けられる自然な環境を整えなければなりません。
ここで登場するのがもう1人「打ち明けなければならない秘密」を持つ存在である「ユーリ」です。
この作品が本当の意味でのハッピーエンドを迎えるならばユーリも秘密を打ち明けなければなりません。
さらに、ハッピーエンドを迎えるとしたらもう一つ、アーニャの出生の謎も明らかになることが不可欠でしょう。
つまりこの作品において3人が本当の、家族になるというラストを迎えるためには、①ロイドがスパイであることを打ち明ける、②ヨルが殺し屋であることを打ち明ける、③アーニャが超能力者であることを打ち明ける、④ユーリが秘密警察であることを打ち明ける、⑤アーニャの出生の謎が明らかになる、⑥スパイと秘密警察の敵対関係が解消されるというシチュエーションが自然に生じ得るクライマックスを用意しなければいけないわけです。

つぎにこれらを満たす展開を絞り込みます。
全部が同時に発生することは不可能なので、僕は大きく次の3構成かと思っています。

a.ロイドとユーリが正体を明かして和(①④⑥)
b.アーニャの出生の秘密が明らかに(⑤)
c.3人が秘密を明かして家族になる(①②③)

以上のことを踏まえて、クライマックスの展開としてあるんじゃ無いかなという僕の予想が次のようなものです。

・ヨルに疑いがかかり絶体絶命(正体がバレたわけではないorユーリにはヨルの正体がバレるがロイドにはバレていない)→ユーリが秘密警察を裏切って姉を救おうと動くも大ピンチ
・ロイドがユーリに素性を明かしてユーリを救う→姉には伝えない約束で秘密警察だったこととスパイであることを共有
・ひょんなことからアーニャの親の情報が入る→アーニャの親探し
・アーニャ親と会う→傷つく→2人を選ぶも3人揃って大ピンチに
・ショックと2人を守るために超能力を使いすぎ力を失う(アーニャの能力がバレる)
・人がアーニャを救うために全力になる→素性明かす(3人の秘密の解消)
・ロイドもヨルも仕事を辞める→アーニャの母国で3人幸せに暮らす

ざっとこんな展開が僕の予想です。
おそらく的外れになることは分かっているのですが、その上で思考実験としてクライマックスの予想をしてみました。
答え合わせは何年後になるかわかりませんが、またSPY× FAMILYが佳境を迎えるあたりで振り返ってみたいと思います。

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