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スピッツにみる、音楽不況を生き抜いた90年代モンスターバンドの気概

最近のマイブームは音楽です!

スピッツが私の音楽有史以来ずっと好きで、邦楽リスナー視点とバンドマン視点で特にいいなと思っている。メロディーや楽曲の聴き心地の良さと相対する歌詞やサウンドのマニアックさの二律背反要素の共存という点が特に好きだ。中でもリーダーのベースに、フレーズでもプレイングでもあとベース本体でも特に興味関心があり、スピッツがテレビに出ると「また変なベース使いだすぞ!」という気持ちでかじりついている。そしてキャッキャする。リズムを無視した動きをステージでしていいんだと思わせてくれるし、身長がほぼ同じなので、色んな面で救いである。それがスピッツのリーダー、田村。ベースコレクションをまとめてくれるファンがいるものの、いつかオフィシャルでコレクション本を出版してほしい。

スピッツはライト層もさることながら質の悪いファンが特に多く、ヲタク的切り口でスピッツが評価されるとゲロを吐いてしまう。特に2010年代以降、少しでもスピッツがなんか動きを見せるとtwitterにキモい書き込みが多くなってそれでトレンドに入ってしまったりする。ありがたいことにyoutubeに曲がめっちゃアップされているがコメント欄は地獄の様相を呈しており、この前は「『好き』という言葉を使っていないのに愛の歌になっていてすごい!」という陳腐な言説が「『好き』という言葉を使っている曲」に投稿されていて、冒涜?と思った。スピッツは歌詞に対して何か感想を言うのが非常に容易いバンドだ。国語の点数が30点だった人でも何かを感じることができる。某軽音楽部の、インプットが極端に弱い後輩もスピッツが好きだ。社会福祉的に感想文を生ませることができる、まさにモンスターバンドである。事実、小6で父親から「フェイクファー」のCDをもらったときもガキなりに感想を得た。2010年代以降もスピッツが一定の支持を得ているのは、こういったネット民との親和性の高さによるところだとも思うし、その支持のおかげで2010年代は質の高いアルバムがリリースされ続けている。

2010年代に作品をリリースするには当たり前だが2000年代を生き抜かなければならない。この2000年代、ガキの俺でもわかるほどの音楽不況でCDなどのソフトが売れなくなり始めたが、かといって音楽が今のように別の形態で消費されていたわけでもなく、ただただ市場から良質な音楽が消え、そうして人々が購買をやめた10年だった。98年をピークとした(と思っている)CDバブル、バンドバブルは急速に萎み、2000年前半までに色んなバンドが解散していった。2004年はシングル売り上げ年間1位のCDが1990年以降初めて100万枚を切った年である。2002年は浜崎あゆみの「H」が疑惑の101万枚。バンド音楽がメジャーで買われる文化は薄れていった。

そんな中、スピッツは生き残った。ほかにもミスチルも、売れた時期は後ろにずれるがGLAYもL'Arc~en~cielも生き残った。急にメジャーで陳腐な話をします。彼らに共通した点として、「2000年以降で突き詰めたアルバムをリリースした」ということを私は提唱したい。

スピッツでいえば「ハヤブサ」「三日月ロック」がそれにあたる。今までの休日午後の陽光のような雰囲気は薄れ、一気にロック色を見せる。プロデューサーとして悪名高き亀田誠治が入ったこともあるが、特にベースとドラムの音が硬質になりボトムから変化を示してくる。ハヤブサはどちらかというと上物が宇宙的、三日月ロックは上物も硬派になり、それぞれ1つの期間としてくくられるがこの2作品でも差はある。ここでしっかりマニアックなファンを獲得すること、またスピッツを"売れ線"として敬遠していた人々をグッと引き込ませることに成功し、その後を生き抜く地力を得た。

同じことがミスチルだと「Q」と「IT'S A WONDERFUL WORLD」、GLAYだと「One Love」と「THE FRUSTRATED」、L'Arc~en~cielだと「REAL」にいえる。バカ売れした後にしっかり自分たちのやりたいこと、特にV系だとロック的な、そういうの体現したアルバム、またファンから名盤だと称されるアルバムを出したことで地位を確かなものにしている。ミスチルに関しては畏れ多くもライトファンではあるが、それぞれのバンドで好きなアルバム3枚上げろと言われたら上記のものはすべてランクインする。

この時期にリリースされた曲は特にPVが良く、汚い金髪などのファッションや、その前髪の下から覗く攻撃的な目から2000年代初頭の虚無感を得られる。燃え尽きたけど、絶望したけど、それでもやるしかないという魂の底力を感じる。そういうゾクゾクするバチバチの姿勢が好き。特にラルクのREALは音から既にメンバーの仲の悪さが出ており、それがしっかり音楽になっていることの作品性の高さに感動する。今から陳腐を言います。まさにREAL。

趣旨とはずれるが2000年代初頭で解散してしまったバンドのこの時期の作品も最高で、特にJUDY AND MARYの「WARP」とLUNA SEAの「LUNACY」、この二つのラストアルバムはギャッリギャリに攻撃しあっている。バトルアルバム。バンドって楽しいことばかりじゃないよね、でもその衝突から生まれる音もまたリアルで最高だよね、うんうんと頷きながら聴く。

つまり2000年前後のアルバムは大体最高です。昨日ラルクのtetsuのムック本を今さらAmazonで買って半分ぐらい読んで、熱が高まっているのです。HEAVEN'S DRIVEのレコーディングでVOXのベースを使った話で「曲から得られる印象で使うベースを変えるが、それは見た目も込みだ、見た目も重要な要素の一部でしょ?」というtetsuの名言があった。特にV系リスナーに多く見られる90年代邦楽最高!とだけ言っているダサいファッションの連中と俺は違うというところを見せたい。彼らはうわべのメロディーを掬い取っているだけだ。2000年代にこそ真価が発揮されるのだ。俺は邦楽リスナーだ。ポップだ。ポップジャムだ。

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