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[読書記録]君のクイズ(小川哲) / 心から排除できる強さ

全世界共通のクイズ大会ってあるのかな。そんなのがあったらとても面白いな。
確かにクイズって、スポーツなのかもしれません。知識の量だけではなくて傾向や対策、コツもあるだろうし、練習やクイズそのものへの慣れと勉強が必要なのだと思います。

面白かったなぁ。ありえない、と思うか、いやありえるのかも、と思うか。人の可能性ってゼロではないし、だとしたら…という気持ちでずっと読み進めることができました。

信じる人、というのは信じることを決めているので、信じないことはもうありえないことだし、信じる人と信じない人には大きな隔たりがあると思っています。信じる人に信じるな、と言っても無駄だし、信じない人に信じさせることも無駄だろうな。
だから争いは起きるのだろうし、もうそれは棲み分けをするしかないのではないかな、と思いながら。

感情が乱れたとき、僕はデスクの引き出しから早押しボタンを取りだす。大学のクイ研で使っていたもので、早稲田式に買い換えるとき、旧型のボタンを一つもらってきた。僕はボタンの上に指を這わせて、表面を撫でた。僕の心が落ち着きを取り戻す。

「君のクイズ」小川哲より

心が乱れたとき、落ち着きを取り戻すのに具体的な物があるのはとてもいいな、と思います。理論で生きていればいるほど、そういう具体的な形が必要にも見えてとても面白い。

一方で、この物語の主題と思われる、「分からないことを証明する」ということはとても難しいな、と思いました。一つ一つの事柄について理解を深めて、可能性を潰して行く。言葉の正確さや読み取る能力、膨大な知識の海の中から一つの言葉を掬い上げること。クイズの成り立ちと、「本庄絆」がしたことへの確信を掴むことへのステップはとても似ていて、同じ土俵に立つ主人公の三島くんにしかその確信は成し得ないことなのかもしれません。
それを一つ一つ、もつれて硬く絡まった糸をほぐすみたいに解いていく。すごい。


ここから完全なネタバレです。




復讐、そしてそれを超えたチャンスにして別の世界へ行く人、というのがどこにでもいるのかもしれないな、と思いました。例えばお笑いをやっていたと思ったら、その時の自分のファンを取り込んで別のビジネスを始める人。
そういう人と対峙する純粋な研究者。私の個人的な気持ちは、こういった類いの話は、後者に軍配が上がって欲しい、と常に願っています。
主人公三島くんは、結局、「本庄絆」を頭から排除します。それがとても心地良く、純粋さの勝利なのかもしれない、と思いました。

どこかとてもスッキリした私です。

それにしても、「あんな、カレーにな、」には肩を震わせて笑いました。三島くんの真剣さ、とても好きです。ずっと肯定されていてほしい。

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