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梯子の降り方

「おーい、いつまで遊んでんだあ」

「遊んでんじゃないよー、探検してんだって、宝さがしだってば」



「そんな高いところに昇ってばかりじゃ、しまいにお天道様おてんとさまに届いちゃうぞー」

「だって下の世界ちっとも面白くないからさー」


「んなこと言ったって、みんな下で我慢してやってんだぞー」

「やーだね、下に宝もんなんてないの知ってんだから」


「そんなもん探してた日にゃー日が暮れちゃうから、みんな目先のガラス玉で満足してんだぞ」

「だって、そんなもんすぐ壊れたり、取られたりしちゃうじゃないか」


「だからみんな気を付けて宝箱にしまってるんだぞー」

「ガラス玉なんてちっとも興味ないや」


「おーい、飯だぞー、飯、早いとこ降りてきな~」

「おいよ~、いま降りっから」

みんな子供のころから

高いところに登ったり

宝探しが

大好きだ

でも、いつの日か

そうしたことが

ばかばかしくなって

だれもその梯子はしごを昇ったり

さがしたりしなくなる


でも、

怪我けがしたり落っこちたりしながら

宝探しをする人が

わずかにいる

彼らは

こんどは

昇ったっきり

降りてこなくなる


昇ることは楽でも

降りることは怖い

しまいに

降りてくることを忘れる

果たして彼が宝物を手に入れたのか

それとも、なにも手に入らなかったのか

だれも知らない

彼は二度と梯子から降りてこなかったから


「おーい、飯だぞー、飯、早いとこ降りてきな~」

「おいよ~、いま降りっから」



東洋哲学に触れて40余年。すべては同じという価値観で、関心の対象が多岐にわたるため「なんだかよくわからない」人。だから「どこにものアナグラムMonikodo」です。現在、いかなる団体にも所属しない「独立個人」の爺さんです。ユーモアとアイロニーは現実とあの世の虹の架け橋。よろしく。